イギリスかけ足観光、30分で周る「クレアモント庭園」

公開日 : 2022年04月15日
最終更新 :

わが家恒例のナショナル・トラスト会員(National Trust)、フル活用術。最終入館時間16:30に滑り込み、チャイムが鳴る17:00までの間に超特急でかけ足見学をした「クレアモント庭園(Claremont Landscape Garden)」を紹介します。

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時間が足りない観光プランの、参考にしていただければ幸いです。

王族子息、子女たちの遊び場、シャーロット王女が眠る丘

私にとってのナショナル・トラストといえば、たいていは城跡(関連記事)か広大な庭つきのどこぞの貴族か有力者のお屋敷(関連記事)、といったイメージですが、庭園などの自然がメインの施設があることも、一応は知っていました。

それでも今回のような、施設名からして「ガーデン」とハッキリ謳っているところは初めて訪れました。場所はロンドン南部郊外の町、イーシャー(Esher)。受付で「もう閉まるけどいいのね?ちゃんと時間内に戻るのよ」と念押しされ、大急ぎで入ったクレアモント庭園でまず目にしたのは無数の鳥が飛び交う湖。

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いつもならカモや白鳥と戯れる子供を急かして、湖を背に丘を登ります。てっぺんまで登り切ると、なにやら人口的な四角い石が。彫られた文字を読んで驚きました。「僕のシャーロットはもういない」とあり、ということは...?と思いもう1文を読むと、なんとどなたか知りませんでしたが、享年わずか21。

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帰り際、受付付近にあった関連人物の看板を見て判明しましたが、シャーロットとはジョージ4世のひとり娘で、死産の息子とともに命を落とさなければ、のちにイギリスの女王になっていたほど重要な人物でした。

現女王のエリザベス2世の高祖母で、歴代イギリス国王のなかではエリザベス2世に次いで、2番目の長さの在位を誇るヴィクトリア女王は、シャーロット王女の夫でザクセン=コーブルク家のレオポルド王子の姪で、この庭園に来てはよく遊んでいたそうです。

きっと、ほかの親戚の王族子供たちにも大人気だったのでしょう。クレアモント庭園の看板には、「かつての王族の遊び場」と書かれています。現在でも、子供向けの遊具施設が豊富に取り揃えられているようで、わが子には遊ばせる時間がなく、悪いことをしました。

シャーロット王女亡きあとも生涯にわたり庭園を維持したレオポルド王子は、1830年に初代ベルギー王にまでなりましたが、1年半というシャーロットとの短い結婚生活がよほど恋しかったのか、その後も毎年この庭園に足を運びました。

彼女のために建てた墓石は、この屋外円形劇場の頂上にあり、眼下にはさきほどの大きな湖と木々が広がる、とても風光明媚な場所で、レオポルドのシャーロットへの愛を感じます。

ロンドンまで見渡せるベルヴェデーレ塔

丘を降りると「これほど気持ちのよい日は私の人生でなかった」と書かれた白いベンチがありました。これは1765年のニューカッスル公爵の言葉ですが、クレアモント庭園の各所に置かれたベンチはどれもかわいく、風避けがついた半ドーム型のものなど、これまで見たことのない独特な形状であったりと、ベンチ探しも楽しみのひとつです。

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さて、この突然出てきたニューカッスル公爵とはいったいなに者?答えはその先一直線に伸びる、草の道の突き当たりにありました。まるでお城のような見かけのベルヴェデーレ塔(The Belvedere)は、1754年から2年間、首相も務めたニューカッスル公爵のために作られました。

そう、クレアモントはシャーロット夫婦の結婚祝いに購入されるまでも、複数の手にわたって所持されてきたのでした。公式ウェブサイトによると、公爵がクレアモントを1714年に買ったのは、まだわずか21歳の頃。社交と政治に忙しかった公爵にとっては、心を落ち着ける憩いの場所でした。

一方でベルヴェデーレ塔は、彼の富と権力を誇示するために丘のてっぺんに建てられ、公爵はそこで手紙を書いたり晩餐会を開き、カードゲームに興じるなど、重宝したようです。

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辞書を引きますと、ベルヴェデーレ(belvedere)とはイタリア語で"美しい(vedere)"と"景色(view)"を意味する言葉を元にした英語なので、通常見晴らしのよい場所に建てられます。クレアモントの塔も晴れた日は、頂上からウインザー城やロンドンでいちばん高いビル、ザ・シャード、ウェンブリー・スタジアムまで見渡せるそうです。

季節によっては周辺の木々を観察したあと、庭園のカフェでスープとドリンクがつく、ツリー散策ツアーが販売されていることもあります。

再び湖に戻る途中、ツバキの段々畑(Camellia Terrace)を通りましたが、バラはよく見かけてもツバキはめずらしい気がして、また、日本を思い起こす花でもあるのでじっくり眺めながら歩きました。

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ちょうど湖まで下りてきたところで、閉園のチャイムが鳴りました。まだ湖の反対側半分が残っていますが、かけ足30分の利用にしては十分満足できました。もちろん、ナショナル・トラスト会員でなく、正規料金を払って訪れる方などにとっては特に、今回のプランはとてもモデルケースになるものとはいえないので、むしろ反面教師として、今後の旅計画に役立てていただきたいです。

◼️クレアモント庭園(Claremont Landscape Garden)・住所: Portsmouth Road, Esher, Surrey, KT10 9JG・アクセス: 電車でロンドンのWaterloo駅からEsher駅まで。715番のバスにて庭園ゲート前下車・開場時間(日ごとに要確認):  庭園、毎日10:00〜17:00、カフェ、毎日10:00〜16:30・入場料(庭園のみの場合) 大人£11、子供£5.5、家族割£27.5・URL: https://www.nationaltrust.org.uk/claremont-landscape-garden

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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