イギリスでアイルランド緑の祭典「聖パトリック・デー」

公開日 : 2022年03月07日
最終更新 :

これまで、イギリス各地の守護神をたたえる聖人の日を紹介してきましたが、2022年の今年は昨年2021年の「聖デービッド・デー(関連記事)」、「聖ジョージ・デー(関連記事)」、「聖アンドリュー・デー(関連記事)」に引き続き、「聖パトリック・デー」を紹介します。

アイルランドとかかわりの深いイギリス

イギリスにはアイルランド共和国(アイルランド)とは別の、北アイルランド連合王国(関連記事)という地域(country)があり、アイルランドももともとはイギリスの一部でした。

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1922年に「アイルランド自由国」として一部がイギリスから独立し、1949年には現在の国名である「アイルランド共和国」が採用されたという歴史があります(参照: "History of Ireland" Rare Irish Stuff 2021.)。そのためイギリスはアイルランドとかかわりが深く、昨年はコロナ禍で中止になりましたが、例年この時期は「聖パトリック・デー」当日の3月17日に近い週末に、ロンドンなどで関連行事が開かれます。2022年の今年は、3月13日の日曜日に行われます。

聖パトリックはイギリス人?

イングランドの守護聖人である聖ジョージは、イギリスとはかかわりのない外国人でしたが、アイルランドの守護聖人である聖パトリックは、今度は逆にイギリス人でした!

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「聖デービッド・デー」が祝われるイギリス西部ウェールズの出身、あるいは「聖アンドリュー・デー」のスコットランドとされ、正確なことは定かではないようですが、両親は聖ジョージと同じくローマ人だとか(参照:Johnson, Ben "St Patrick - The most celebrated Welshman in America?" Historic UK 2021.)。なんだかアベコベで、「地元」と「聖人の出身地」が一致している祭典は唯一「聖デービッド・デー」だけということになります。

さらに驚くことに、アイルランドの史実に特化した情報が得意なウェブサイトRare Irish Stuff によると、パトリックは16歳の時、アイルランドの海賊によって拉致され奴隷として売られてしまったそうです。

テーマカラーは緑、ではなかった!元祖「聖パトリック・ブルー」

以前観光でアイルランドに降り立ったときは、空港内にあるインフォメーションセンターの看板から外のバス停、バス自体、そしてバスのカードまでがすべて緑でとても驚きました。

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緑はアイルランドの国旗のカラーのひとつで、国民の8割近くが信仰しているカトリック教の緑でもあります。聖パトリック・デーでも当日は、アイルランド語で三つ葉のクローバーを意味する「シャムロック(Shamrock)」がついたグッズを身につけたり、緑に着色された食べ物や飲み物(ビールまで!)を手にパレードに参加したりします。

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移民として多くのアイルランド人が渡った北米・カナダやオーストラリアといった国でも盛大に祝われており、これまで紹介したほかのイギリスの聖人の日と比べても、だいぶ国際化が進んでいます。

このように、聖パトリック・デーと緑は切っても切れない必須カラーだと思いきや、わが子が昨年のこの日イギリスの現地小学校から持ち帰ってきた教材に、気になる記述を見つけました。

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懐かしの折り紙「パックン」状になったシートには

Green, Shamrock, Dancing, Parades

と4つの関連したキーワードが印刷されており、中の紙には

The three leaves are said to represent the Holy Trinity (Father, Son and Holy Ghost).

三つ葉の3枚の葉っぱは「父なる神、子イエス・キリスト、聖霊」の三位一体を表している。

などの豆知識やクイズ形式の質問が書かれています。その質問のひとつに

Has green always been the colour associated with Saint Patrick?

緑は常に聖パトリックを連想する色であったか?

というものがあり、その答えが

No. The original colour associated with Saint Patrick is blue.

否。もともとの色は青である。

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とあり、意外でした。それによると、いまでこそ大々的にパレードをするようなアメリカや、近年では日本ですら行われるイベントによってかなり大衆化しましたが、もともとは宗教的な意味合いが強く、アイルランドでは9世紀頃からこの日を厳かに祝っていたそうです。

当時は現在の緑1色ではなく、「聖パトリック・ブルー」とも呼ばれる、青色が象徴的な色として使われていたそうです。これは聖パトリックの名を冠した勲章が、青を正式カラーとして当時から取り入れられていたことが理由のひとつでした。

この興味深いトリビアが満載のパックンには、ダンスもキーワードのひとつとして記載されていましたが、下の子の学年ではこの日「セットダンス(set dance)」といわれるアイルランドの伝統的なステップダンスを踊ったそうです。

ロンドン市内では今週末3月13日に、トラファルガー広場でパレードが盛大に催されます。芸術や文化、食事に音楽と、アイルランドに関するさまざまなものに触れられる、楽しい行事となりそうです。過去の写真を各種ウェブサイトで見ていますと、パレードで行進している人たちは緑ではなく、青をベースにした制服を着ているところに、パックン情報の信憑性を見出しました。

これ以外にも、3月11日から19日まで、そのほかの地域で関連行事が行われます。詳細はすべて以下のウェブサイトに載っているので、興味のある方はぜひ参照してみてください。

◼️London St. Patrick's Day Festival 2022・住所: 

Trafalgar Square, Westminster, London, WC2N 5DN・アクセス: 地下鉄Charing Cross駅より徒歩約2分・開催日時:  2022年3月13日(土)12:00〜18:00・URL: https://www.london.gov.uk/events/2022-03-13/london-st-patricks-day-festival-2022#acc-i-65165

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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