いま、ベルファストがキテる!?北アイルランドの知られざるウイスキー横丁「コマーシャル・コート」

公開日 : 2022年03月01日
最終更新 :

2021年末に行った北アイルランド旅行から戻ると、年明けの1月21日にイギリスでその名も『Belfast(ベルファスト)』という北アイルランドの首府、ベルファストを題材にした映画が封切りされたことを知りました。

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同都市の出身である監督が自身の幼少期を投影した自伝的作品で、日本でもちょうど今月3月25日より公開と、個人的にとてもタイムリーな情報でした。この映画にあるように、そして今回私もほかの北アイルランド記事(関連記事)でも取り上げましたが、北アイルランドには領土問題や宗教間での対立など複雑な過去があり、それらの問題は残念ながら現在進行形です。

そこで日本の皆さんにすこしでも身近に感じてもらえるよう、同地の主要な観光先である、ベルファスト市内の様子をご紹介します。

イングランドとは異なるコロナ対策:繁華街の様子

今回の旅は北アイルランドにUターン移住した友人夫婦が町案内をしてくれたので、ラクができました!待ち合わせは1888年に建てられた町のランドマーク、シティホール(Belfast City Hall)前。淡い緑のドーム型屋根が特徴の、ルネッサンス様式の建築物です。

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このシティホールはヴィクトリア女王時代、女王がベルファストを市として認定したことで建てられたもので、正面には女王の像が建てられています。

市民の出生届や婚姻届の受付などをする市役所のような役割をもち、ホール内部の見学ツアーでは美しい建築や装飾を見ることができます。クリスマス期間にはマーケットが立つようで、訪れたときはあと片づけのために閉鎖されており、トラックなどが出入りしていました。

女王の影響は色濃そうで、町を一望できる展望台があるショッピングセンターの名前は「ヴィクトリア・スクエア(Victoria Square)」。イングランドでも同じですが、コロナ禍の影響か、ここ北アイルランドでもさまざまな施設の営業時間が頻繁に変わるようで、あいにく訪れた日は展望台が閉まっていました。

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旅行前は、せっかく北アイルランドに渡航できても町なかのレストランや商店がほとんどやっていなかったらどうしよう、と心配していたのですが、それはまったくの杞憂で、こちらのショッピングセンターも年末特有の、忙しくもソワソワうきうきした様子の買い物客であふれていました。

とはいえ、行政管理の違いからイギリス本島のイングランドとはコロナ対策も異なる北アイルランド、噂どおりコロナ規制が厳しめなのは本当でした。

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この旅行中、飲食店をはじめ記念館などの屋内観光施設に入るときは、どこでも必ずコロナワクチン接種と身分証明書をセットで提示しなければなりませんでした。これはイングランドではなかったことで、当初は慣れず焦りました。

その後2022年1月19日より、段階的にコロナ規制が解かれていったイングランド同様、北アイルランドでも同月26日よりこういった証明書の提示は、ナイトクラブや500人を超える屋内イベントに参加するときのみとなりました。

それでも3月現在イングランドでは、マスクの着用が必須ではない一方、北アイルランドでは着用をより強く推奨しています。

ひそかな観光メッカ?ウイスキー横丁

「北」がついていますが、アイルランドといえばウイスキー!ギネスビール!ギネス社(関連記事)のロゴはハープですが、これはアイルランドの国章からきており、北アイルランドの公的機関や多くの団体でも使われています。今回ほかの北アイルランドの町でも、バーやパブなどの看板にハープが描かれているのをたびたび目にし不思議に思っていたのですが、こういうわけでした。

ひととおり町なかを歩き回ったあとに友人が案内してくれたのは、やけにひっそりとした路地裏のコマーシャル・コート(Commercial Court)通り。人どおりも少なく道も短いわりには、上方に吊り下げられた傘の電飾や壁にところ狭しと飾られた看板がにぎにぎしく、やけに派手です。

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開店から200年以上の老舗パブ、「デューク・オブ・ヨーク(Duke of York)」などが集まる酒場エリアのようで、イメージとしては東京の新宿にもあちこちにある"〜横丁"といった感じ。

日本語でウェブ検索してもほとんど情報がなく困ったのですが、友人が「観光地として人気だ」と言うとおり確かに、ときおり通りをバックに自撮りしている女子旅風の観光客が現れ、外国人にはよく知られているのかもしれません。そして、酒場なのできっと夕方以降の方がにぎわっていることでしょう。

現地の住民から聞く北アイルランド問題

友人夫婦とはそのあとにランチをしましたが、紛争のことなどすこし繊細な内容についても立ち入って聞いてみたところ、彼の一家は迫害を受け続けてきたカトリック教徒なので、お父さんの世代ぐらいまでは仕事が少ないなど実生活に影響があったそうです。

彼自身は成人後、わが家が知り合ったイングランドに長く住みましたが、上京当初は英語のアイリッシュ訛りがひどく、その意味で職探しに苦労したそうです。「いまは全然、だいぶ上達した」とは本人談ですが、故郷にまた戻ったせいか......?

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その彼曰く北アイルランドの人たちは、日本人が小さな揺れの地震にはあまり驚かないのと似たような感じで、銃声や爆発音などを聞いても「またか」と動じない人が多いそう!?です。実際、今滞在中何度も前を通った写真のホテルは「世界一爆撃を受けたホテル」

(参照:Meredith, Fionola. "Life goes on at the most bombed hotel in the world" The Irish Times January 2017.)だそうですが、現地新聞のオンライン版記事に写るホテル従業員は、満面の笑みです。

ひとつ希望が持てるのは、「いまはだいぶよくなったけどね」と友人が繰り返し言うように、幸い事態は着実に改善している様子であることです。

"リアル"にこだわった老舗バー

このお世話になった友人夫婦とは、最後に別の横丁と1880年代に建てられたヴィクトリア朝時代の華やかなパブ、ザ・クラウン・リカー・サルーン(The Crown)に案内してもらったあと、お別れしました。このパブの建物は1885年の改修以降さらに2度の修繕を経て、現在では歴史的建築物の保護活動をする機関、ナショナル・トラスト(National Trust)が所有するほど価値のあるものだそうです。

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このように、散々本場のアイリッシュバーやらパブを紹介してもらったので、夜は予約なし、かつ子供でも入れてもらえるところを探したところ、ヴィクトリア・スクエア横の便利な場所にザ・キッチンバー(The Kitchen Bar)を見つけました。

「REAL ALE REAL FOOD REAL FRIENDLY」をモットーに掲げる同店は、そのとおりに地元の本格エールビールと、イングランドでは見たことも聞いたこともない郷土料理、そして次々と入ってくる利用客をたくみにさばく気さくで気の利く店員と、うそ偽りないすばらしいバーでした。

ドリンクしかやらないバーも多いなか、食事も提供しているファミリーレストランのような雰囲気も、私たちのような子連れ家族には助かりました。

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創業も、むしろザ・クラウンより古い1859年とかなりの老舗店だったのもうれしい驚きでした。先月より、パーリーメイ自主企画で勝手に北アイルランド特集を組んできましたが、記事によってすこしでも北アイルランドに興味をもち、コロナ収束後に観光という平和な手段で同地を盛りあげてくださる方が現れると、私もうれしいです。

◼️ザ・キッチン・バー(The Kitchen Bar)・住所: 1 Victoria Square, Belfast, N. Ireland, BT1 4QG・アクセス: 電車Great Victoria Street Stationより徒歩14分・営業時間:  月〜水11:30〜23:00、木11:30〜24:00、金11:30〜1:00、土12:00〜1:00、日12:00〜24:00・URL: https://www.thekitchenbar.com/

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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