現在開催中!幻になりかけた未発表作品を一挙大公開!ロンドン「大英博物館の北斎展」

公開日 : 2021年12月01日
最終更新 :

世界でもっとも有名な日本人芸術家のひとりであろう、江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の特別展「Hokusai: The Great Picture Book of Everything」が現在ロンドンの大英博物館で開催中です。

01E3BAEF-4A6A-4F63-994E-7E0B49056043.jpeg

同館では以前より併設のギフト・ショップにて北斎グッズを常設し、これまでも北斎を取り上げた展覧会がありましたが、今年2021年9月より始まったものは、フランスの個人収集家が所有していた未公開作品103点が世界で初めて一般公開されるという、大注目の展覧会となっています。

丹念に見て回る来場者たち

イギリスにあるほかの多くの博物館と同様、大英博物館は無料で利用することができますが、入館後正面すぐにある大きなホール、グレイト・コートの螺旋階段を上階まで昇り(エレベーター有り)、ルーム90(Upper floors, level 4)にて開催中の北斎展は、別途入場券が必要です。

17E004A2-1FCF-4E51-A00D-83EFECB399C8.jpeg

ほかの展示エリア同様、コロナ以降は特にオンラインでの事前予約が望まれます。もはやテーマカラーとも言える、「北斎ブルー(プルシアンブルー)」に塗られた壁に書かれた日本語タイトル、「北斎-万物絵本大全図」を横目に見ながら受付を済ませると、いよいよ入場です。

今回の展示品は、この図鑑のために描かれた版画用の下絵(肉筆画)がメインで、それぞれの作品自体は小ぶりで展示エリアとしては大きくありませんが、数が多いのでじっくり目を凝らして見ているとあっという間に時間が経ってしまいます。

実際、入ってすぐにある北斎と、この図鑑についての紹介パネルの前でさっそくなにやらメモを必死で書いている(丸写ししてそうでした)来場者を見かけました。

イギリスと北斎の繋がり

前回大英博物館が北斎展を開催したのは2017年、北斎と言えば、の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をメインに据えたものでしたが、初めて大規模な展示がなされたのは北斎没後100年を記念した1948年のことでした。

現在ではおよそ800万点に及ぶ収蔵品数を誇る大英博物館ですが、その基となったのがハンス・スローン卿(Sir Hans Sloane)ひとりのコレクションだったように、今回の特別展も含め、そのほかの所蔵品も個人の蒐集物だった、ということが数多くあります。

4D9E2442-0CCA-4135-86F0-6B0312763247.jpeg

© The Trustees of the British Museum

北斎の作品も、1873年に明治政府に招聘された医師のウィリアム・アンダーソンが、日本からの帰国時に持ち帰ってきた2000点以上の日本と中国の絵画のなかに含まれていたのが、イギリスと繋がりを持ったはじまりのようです。

バラエティに富んだ挿絵の数々

前回の展示とは異なり、今回は「万物図鑑」の名が示すとおり、動物や植物といった自然、インドや中国など海外のこと、宗教などあらゆる種類の挿絵が並びます。

これだけジャンルが多岐に渡っていると、北斎が浮世絵だけでなく、いかに万能に絵を描ける画家でもあったことがよくわかります。

FB634A02-AEF4-4FB4-B064-ED5389A00DB7.jpeg

© The Trustees of the British Museum

途中、各所でばれんや彫刻刀といった、版画を作る際に使われる道具を並べたり、映像で制作過程を示したりと、「北斎の版画はどう作られたか」ということが想像できるコーナーもありました。

この万物図鑑は実は未刊行で、展示パネルのひとつには「もしこの図鑑が刊行されていたら、通常下絵は木版画作成時に廃棄されるので、いまここにあるこれら北斎の肉筆画も、すべて存在していなかっただろう」と書かれています。

49E57B44-C1DF-4A1D-B075-1D6D44EE395E.jpeg

© The Trustees of the British Museum

それゆえ、今回の展示品すべてが危うく「幻」になりかけた貴重なものであることが、よくわかりました。感心しているのは同胞の日本人だけでなく、なかには巨大な虫眼鏡を持参し、仲間とあーでもないこーでもないと議論を交わしながら、しきりにガラス越しに小さな挿絵をメガネ越しに覗いている欧米人グループもいました。

シメはもちろんコレ!

「富嶽三十六景」は北斎が70代のときに刊行された、日本各地から見た富士山を描いた版画シリーズですが、なかでも特に有名な「神奈川沖浪裏」は現在、100枚ほど擦られたものが世界に存在します。

大英博物館はこのうちの3枚を所蔵しており、今回も展示エリアなかほどに1枚と、最後出口付近に「進化しつづけるグレート・ウェーブ」と題してもう1枚と、現代木版で刷った複製1枚が、比較のために並んで展示されていました。

5108A689-682D-4A00-882F-0CD7820686A1.jpeg

© The Trustees of the British Museum

1枚1枚手作業で色刷りされていた木版画は、同じ色のものはふたつとない、と言われているように、当時と現代で刷り上げたものとでは、素人目でもパッと見てわかるほどハッキリと色の違いが出ている箇所もありました。

やはりコレを見ずして会場を後にするのは寂しいので、最後に思う存分「グレート・ウェーブ」を眺められて大満足でした。なお、このふたつのウェーブを見比べるところでは、その人気ぶりゆえ多少人だかりができていましたが、こんなところでもイギリス人、絵画の正面ポジションを得るためにはちゃんとしっかり列を作り、順番を待っていました。

来年2022年、1月末まで開催される大英博物館の「北斎-万物絵本大全図」、機会がありましたらぜひ、実物を観に足を運んでみてください。

◼️The British Museum・住所: Great Russell Street, London, WC1B 3DG・最寄駅: 地下鉄Tottenham Court Road駅、Holborn駅、Russell Square駅、Goodge Street駅より、徒歩約5~8分、・開館時間: 毎日10:00~17:00(最終入館時間16:00、金曜のみ20:30まで)、休館日12月24日~26日・入場料: 大人£9(寄付料込み£14)、16~18歳£8・開催期間: 2022年1月30日まで・URL:  https://www.britishmuseum.org/

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。