英ガイ・フォークス・ナイトにまつわる屋敷「コートン・コート」

公開日 : 2021年11月05日
最終更新 :

今日2021年11月5日は、その昔イギリスで起きた「火薬陰謀事件」が未遂に終わったことを祝す、ガイ・フォークス・ナイト(Guy Fawkes Night)が行われる記念日です。

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先月、この事件の首謀者たちの隠れ家となった現存する屋敷、「コートン・コート(Coughton Court)」を訪れる機会がありました。イングランド中部のウォリックシャー(Warwickshire)にあるこちらは、チューダー様式の「カントリーハウス(貴族や領主の邸宅のひとつで、大きな屋敷と庭園が見どころ)」と呼ばれるものです。

火薬陰謀事件とは

イギリスでは長い間、同じキリスト教でもプロテスタント系とカトリック系の間で争いが繰り返されてきました。

もともとはカトリック教会が主流でしたが、離婚が禁じられていたので16世紀のイングランド国王ヘンリー8世が、自己都合のためにローマ教皇庁から離別し、1534年にカトリックから独立したイングランド国教会を設立したと言われています。

そのため、ほかのプロテスタント諸派のように教義上の問題ではなく、政治的問題(ヘンリー8世の離婚)が原因で、カトリック教会の教義自体は否定せずに分裂しました。結果、典礼的にはカトリック教会との共通点が多いという、はたから見たら紛らわしいことに。

それでも、以降カトリック教徒は半世紀以上にわたり迫害され、それが1605年の火薬陰謀事件(Gunpowder Plot)を引き起こしました。当時の国王ジェームズ1世の暗殺をカトリック教徒たちが企てましたが、失敗に終わりました。

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この一連のテロ計画に参加した人物たちが、一時身を寄せたりとかかわりの深かった場所のひとつが、今回訪れたコートン・コートです。

現役の貴族邸宅

歴史的建築物の保護を目的に設立された英機関、ナショナル・トラスト(National Trust)管理のコートン・コートは、ほかの施設が完全に同機関に引き渡されることが多いなか、いまでも由緒ある家柄のスロックモートン(Throckmorton)一族が住み続けるめずらしいケースです。

火薬陰謀事件首謀者のロバート・ケイツビーは、母親がこちらの貴族の出で、少年期をこの邸宅で過ごし、その力強い性格で人を惹きつけるカリスマ性は、当時から見られたそうです(出典:"The Gunpowder Plot" National Trust.)。

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1412年から一族が代々住み続け、1946年にナショナル・トラストに寄贈されたあとも上の写真、右側の建物にはまだ末裔が住んでいます。それもあってか? 冬季となるちょうど今月11月からは、残念ながら全面閉鎖となり、再開は翌年の4月になるそうです。今回は滑り込みセーフで見学できましたので、以下に館内や庭園の様子を紹介します。

庭より邸宅を最優先に見るべし!

普段より邸宅内の見学は、案内をしてくれるボランティア要員の数によるようで、この日も正面扉は固く閉ざされており、一瞬呆然としました。

つい先ほどまでは、確かに開いているのを目にしていたので安心していましたが、最終入館時間が16時なので、遅すぎたようです。諦めきれずに扉を試しに叩いてみると、幸運なことに親切なスタッフが、ほかの客とともに招き入れてくれました。

こちらに限らず、ほかのナショナル・トラスト管理の施設では、屋敷と庭園のどちらも大いに魅力的ですが、時間的制限が圧倒的に少ないのは庭園の方です。

目の前に広がる美しい景色に心を奪われがちですが、着いたらなにはともあれ、限られた時間しか開放されていない、屋敷などの屋内施設を先に回るのが得策です。

気分は貴族!目を見張る調度品の数々

この日はハロウィン期間中だったため、子供たちには邸宅内に14個置かれているという、コウモリを探すアクティビティがあったり、ダイニング・テーブルにはごていねいにクモの巣がかかった特別仕様だったりと、凝った演出がなされていました。

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一族の肖像画がところ狭しと飾られている壁を眺めながら、寝室などを抜け次に足を踏み入れたのが圧巻のリビング・ルーム。

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経路的に、上から見下ろしながら階段を降りる構造になっているので、気分はまるで長いドレスの裾を持ってしずしずと階段を降りる、貴族のお姫様!

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驚いたのが、こんな豪華で貴重な調度品ばかりなのにもかかわらず、松ぼっくりが置かれていない椅子などには誰でも腰かけることができるのです。写真撮影も、フラッシュさえ焚かなければすべて可なのもうれしいサービスです。ボランティアの方々も皆本当に熱心で、すすんで解説をしてくれ、あちこちで聴き入っている訪問客が見られます。

著名な庭師によって作られたガーデン・エリア

無事、屋敷内見学を終えたあとは、心置きなく広大な庭園を楽しむことができます。もともとは手入れもろくにされておらず、時代遅れ感もあったスタイルの庭だったそうですが、現在も居を構えている一族のマグナス氏の母である、クリスティーナ・ウィリアムズさんが現在の魅力ある姿まで作り替えました。

クリスティーナさんは、イギリス王立園芸協会(RHS)が主催する、イギリスでもっとも有名なガーデン・ショーである、「チェルシー・フラワー・ショー」のデザインを手がけ、受賞歴もある著名なガーデン・デザイナーです。

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季節柄、彩りにあふれる明るい雰囲気は見られませんでしたが、クリスティーナさんがどのようにして、この広大な庭をここまで育て上げたか、インタビューの記事が公式ウェブサイトに掲載されています。

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敷地内には、ほかに裏手に墓地をともなった教会や池、リンゴ園など、ひと気のなさや夕暮れの寂しい時間帯とも相まって、火薬陰謀事件を思い起こさせるかのような、どこか憂いを帯びた光景がありました。

ロンドン、メリルボーン駅から電車で1時間30分の距離にあるコートン・コート、生命力にあふれる花々が咲き乱れる来年、春の旅先候補地として、ぜひリストに入れてみてはいかがでしょう。

◼️コートン・コート(Coughton Court)・住所: Alcester, Warwickshire, B49 5JA・アクセス: 電車Redditch駅よりバスで20分、バス停より徒歩8分・開館時間:  現在2022年3月まで閉館・入館料:  大人£12~13.2、子供£6~6.6、家族割£30~33・URL: https://www.nationaltrust.org.uk/coughton-court

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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