「ロイヤル」の名を賜った、イギリス王家の認定保養地「ロイヤル・タンブリッジ・ウェルズ」

公開日 : 2021年09月01日
最終更新 :

日帰り旅行の帰り道、ロイヤル・タンブリッジ・ウェルズ(Royal Tunbridge Wells)というロンドン南東部、ケント州にある小さな町に寄りました。「ロイヤル」と名のつくとおり、ここはその昔、王侯貴族が休暇に訪れるブルジョワジー(お金もちの資産家階級)な保養地だったとか。

C7B993D7-C806-4C66-8DDA-15E82ECDF50F.jpeg

町には鉱泉があったため、はじめは美容、ヘルスケア目的での滞在をするスパ(Spa)街として栄え、現在では当時の華やかな面影を残した建築物が特徴的な、古風なショッピング・アーケード街としても名を馳せています。

魔法の湧き水?!「カリービーアット」

1606年以来、タンブリッジ・ウェルズ(もともとの町名に「ロイヤル」はなかったんです!)はその頃すでに、オシャレな町として人気でしたが、それにも増して人々が殺到したのは、鉱泉から湧き出る水が体にいいという噂が広まってからのこと。

「カリービーアット(Chalybeate Spring)」という、読み方がいく分難解なこの鉱泉の湧き水は、chalybeateという単語が示すとおり、鉄分をたくさん含んでいます。周りのものをなんでもかんでもオレンジに変色させてしまうというこの鉄味の水は、不妊症から二日酔い、肥満に脳疾患まで「あらゆる病いを治す」という万能の水だということで、全国からこぞって人が押し寄せたそうです。

ことの発端はノース卿が地方の宴で飲み明かしたロンドンへの帰り道、この鉄泉で喉の渇きを癒やしたことでした。酔い覚ましに飲んだところ、2日酔いがきれいサッパリなくなったようで、社交好きな王侯貴族の間でまたたく間にこの話が広まりました(参照:タンブリッジ・ウェルズ公式観光サイト)。

口コミとはすごいもので、その後は1837年に即位したヴィクトリア女王も、滞在時には好んでこの水を飲んでいたそうです。このように王室からの信頼も絶大で、1909年には息子のエドワード7世により、町の名に「ロイヤル」が授けられたほどです(参照:Britannica)。

FA51FDDB-AC59-423B-814E-CB81F6284B60.jpeg

この鉄泉は「パンタイル (The Pantiles) 」にあり、年間を通じて好きなときに見ることができます。湧き水は現在、毎年夏の間に限って£1ほどの少額で飲むことができます。「ディッパー(dipper)」と呼ばれるスタッフが、当時の服装を再現したコスチュームを身にまとい、伝統的なやり方でサーブしてくれます。開催日は不定期なので、確実に飲むためにはタンブリッジ・ウェルズ公式観光サイトへの問い合わせが必要です。

当時の面影が残るクラシック街道

その昔タンブリッジ・ウェルズに滞在中の貴族たちは、カリービーアットの湧き水を毎朝飲んだあとにそのままパンタイルをブラブラし、カフェでお茶をしながらゴシップ話に興じるのが定番だったそうです。

パンタイルとは瓦のことで、当時は瓦が敷き詰められていた遊歩道が名前の由来です。現在ではコンクリート石にとって替わられていますが、商店街を支える柱が当時の栄華を思い起こす特徴ある建築物だったりと、タンブリッジ・ウェルズ公式観光サイトも「有名チェーン店で埋まるショッピング・モールじゃないのよ!」と声高々に主張するほど趣のある通りです。

2016年と2018年には、イギリスのメイン・ストリート大賞(the Great British High Street Awards)の決戦にまで残った実力なんだそうです。

元魚市場のレストランで食べる、新鮮なシーフード料理

そのパンタイル遊歩道の、ちょうど中ほどに位置する「Sankey's The Old Fishmarket」は新鮮な牡蠣と甲殻類がウリのシーフードレストランです。もともとは魚市場だったという建屋は、屋根に「1745年創業」とありました。

メニューは魚介類を中心とした、シンプルな1枚きりのもの。品数が少ないというのは、得意分野に注力していておいしいお店の証、とどこかで聞いたことがあります。

実際、こちらのレストランは星なしですが、昨年に引き続き今年2021年現在でもイギリス版ミシュランガイドに載るほどで、実力のほどがうかがえます。ここは主力の牡蠣を前菜に、ロブスターのスパゲッティを注文しました。

58B4A77B-B4E7-400D-B674-8A4483C37D63.jpeg

シーフードが高いイギリス、上品すぎるほどの牡蠣の量ですが、じっくりと味わいました。スパゲッティのロブスターが想像を超えるゴージャスさで、値段(£29)にも納得できました。イギリスのスパゲッティはゆですぎなことも多いのですが、麺の硬さもほどよく、久しぶりに海の幸を堪能しました。

1D02520A-DB8E-451A-8A85-E11616A5E12E.jpeg

食後はタンブリッジ・ウェルズの駅の方に向かって散策しましたが、夜だったのでお店はすでに閉まっており、今度は明るいうちからじっくり再訪したいな、と思わせるステキな町でした。

◼️Sankey's The Old Fishmarket・住所: 19 The Upper Pantiles Royal Tunbridge Wells Kent TN2 5TN・アクセス: 電車Tunbridge Wells駅徒歩約10分・営業時間:  火~土 12:00~24:00、日・月定休、祝日 12:00~18:00・URL: https://www.sankeys.co.uk/the-old-fishmarket

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。