イギリスの水仙が満開ウェールズの「聖デービッド・デー」

公開日 : 2021年03月02日
最終更新 :

日本では梅や早咲きの桜が見られる季節となりましたが、ここイギリスで春を告げる花と言えば、水仙が代表的です。わが家が暮らすロンドン南部では、2月の中旬からつぼみが膨らみ、下旬の先週からはついにどの庭先でも花を咲かせ、今週は満開となっているお宅も多く見られました。

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今日2021年3月1日(イギリス現地時間)は、この水仙をシンボルとしたウェールズ(Wales)の祭日「聖デービッド・デー(St David's Day)」です。

独自色が強い地域ウェールズ

イギリスという国は、私のように特段思い入れのなかった者にとっては、かなり複雑な構成をした国家です。ウェールズはイギリス(グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国)を構成する4つの地域(country)のうちのひとつです。

そのほか3つの地域はイングランド、スコットランド、北アイルランドですが、ウェールズは「イングランドおよびウェールズの一部」として扱われ、イギリスの国旗にウェールズの国旗だけが含まれていないなど、スコットランドや北アイルランドと比べてもその独自性は際立ちます。

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場所は写真のようにグレートブリテン島の南西に位置し、南にブリストル海峡、東にイングランド、西と北にはアイリッシュ海があります。Llanwrtyd Wellsとは、ウェールズにある小さな町の名前です。

守護聖人デービッド

かつて石炭を代表とする豊富な地下資源を産出し、イギリスの産業革命を支えた歴史をもつウェールズ。自治体のウェブサイトを開くと、見慣れない記号が突然目に飛び込んできて驚きました。

なんと、ウェールズにはアルファベット以外の書体も用いた、独自の言葉までありました! 聖デービッド・デーとは、その名のとおり守護聖人である聖デービッドをたたえるウェールズの記念日ですが、自治体サイトによると、ウェールズ語では「Gŵyl Dewi」と言い、national dayとかなり特別な呼び方をしています。

聖デービッドとは、6世紀にウェールズのケレディジョン州を治める王を祖父として生まれ、その後キリスト教の修道士として教会(修道院)を設置するなど、ウェールズ全体にキリスト教を広めた人物です。

エルサレムへの巡礼を繰り返し、神からの使者である白い鳩が説法中に肩にとまるなど、伝説が尽きないデービッドは589年の3月1日に亡くなり、活動拠点とした聖デービッズ大聖堂(St Davids Cathedral)内に埋葬されました(参照:"Five facts about Saint David" Visit Wales 2021.)。

この地域は現在彼の名にちなんでセント・デービッズと言われ、その後も多くの巡礼者が訪れたため1120年にローマ教皇はデービッドを聖人と認定、ウェールズの守護聖人となることも宣言しました。

聖デービッド・デーの祝い方

家庭学習中のわが子が今日(3月1日)出された課題のひとつは、この聖デービッド・デーについて学ぶことでした。資料として添付されていたビデオによると、この日ウェールズではシンボルである水仙や伝統的な衣装を身につけてパレードし、カウル(Cawl)というスープの味を競う大会なんかもあるそうです。

カウルとは肉と野菜を煮込んだウェールズの伝統的な料理で、ビデオ内では祭りだけでなく、家庭でも父親が手によりをかけて作ったものを、家族全員でおいしそうに食べるシーンがありました。

この日はほかにもバラ・ブリース(Bara Brith)というフルーツケーキやウェルシュ・ケーキ(Welsh Cakes)というレーズン(カランツ)入りのスコーンに似た焼き菓子、チーズ・トーストのウェルシュ・レアビット(Welsh Rarebit)といったウェールズ特有の食べ物が並びます。

消えた長ネギ、大量消費のウェールズ人

聖デービッドは厳格な菜食主義者だったとされ、「水とネギしか摂取しなかった(参照:"St David's Day 2021: Everything you need to know" BBC March 2021.)。」と言われたほどで、これにならい聖デービッド・デーは水仙と並んでネギも象徴となっています。

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ところが、英国内の長ネギ栽培農家でつくる協同組合によると、今年は寒波の影響などで収穫量が少なく、ネギ不足だったとか。これは、新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)により自宅で料理をする機会が増えたウェールズ人が、祭日に関係なくいつも以上に、このカウルやネギとジャガイモのスープといった郷土料理を作ったことにも起因しているそうです。

長ネギ農家組合のスチュワート・アスピノール(Stewart Aspinall)会長によると、長ネギの売り上げは15%も増加しており、供給不足を補填して聖デービッド・デーの需要を賄うためオランダなどから輸入せざるを得なくなったといいます(出典:Taylor, Joanna. "Wales faces leek shortage ahead of St David's Day" Independent March 2021.)。

ネギは私も欠かせず毎週購入していますが、そんな困ったことはなかったよなぁ、と不思議に思いましたが、次のアスピノール氏の言葉でピンときました。アスピノール氏はさらに「長ネギは店頭に並ぶだろうが、英国産は見つからないかもしれない」と語りました。

そういえば、先月2月は長ネギがいつもと形状が違い、白い身の部分がやけに短くて(もはや「長ネギ」ではないほど)青い葉っぱの部分が大半で嫌だな、と思ったことを思い出しました。2月中はいつ行ってもこの形でしたが、この記事で納得しました。

恐るべし、ウェールズ人の長ネギ消費率!

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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