犬も歩けばイギリスの教会にあたる「ロックダウン前と後の違い」

公開日 : 2020年11月04日
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イギリス(イングランド)ではいよいよ明日2020年11月5日より、今年2度目のロックダウン(都市封鎖)が始まります。5日の木曜日とずいぶん中途半端な時期なのが少し不思議ですが、10月31日にボリス・ジョンソン首相からの発表が事前にあったので十分な心がまえができました。

3月にあった第1回目に続き再び「ステイ・ホーム」期間を迎えることになり、ふとこちらに越してきたばかりの2017年当時も家にばかりいたことを思い出しました。

異国の地での生活

イギリスに来た当初、印象深かったことのひとつに「教会の多さ」があげられます。住むことになった町を歩いていると、数メートルごとに違う教会が現れました。越してきたときは6月、当時まだ子供の学校も始まっておらず、知り合いが誰ひとりいないなか数週間のうちに家族以外と話したのは大家さん、学校見学に出向いた先の校長先生と電気修理に来た業者さんのみ、という今年のステイ・ホームを地でいくような引きこもり生活を送っていました。

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外は晴れていても家の中は薄暗くて常に肌寒い、引っ越し荷物が未着なため、満足にいかない料理と慣れない食材。極めつきはバスルームの電気がつかず、夏だったので日が長くだいぶ助かりましたが、それでも毎晩自分が入浴する頃には薄暗くなってしまったこと。暗闇のなか手探りで窓から遠くの景色を眺めながら、なんだか切ない気持ちになっていました。

戸惑う「イギリスの夏」

イギリスの6月といえばもう初夏で、いまですと1年のうちで最高の季節として私も認識できます。初めてイギリスの地を踏み、空港から利用した配車のドライバーに「今日も暑いね、もう夏だから」と言われたのですが、当時日本から来たばかりの私には風の冷たさに震え、いったいどこがどう「暑くて夏」なのか、皆目見当がつきませんでした。

繰り返しますが、いまであれば「イギリスの夏」は晴天続きで青空が広がり、爽やかで美しいと言いきれるのですが、それはあくまでも「全体的な雨の期間の合間のほんの一部」であり実際は、あれだけ晴れていたのが嘘のように翌日にはもう雨、ということも珍しくありません。

年間を通じて天気が悪い日が多いので、少しでも晴れるととてつもなく感謝し気分がアガる、という癖を意識的に身につけた、いわば生活の知恵とでもいうようなものです。

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実際当時の6月も季節的には天気もまだ不安定な時期で(もうしばらく7月にもなると気温も天気もより安定する)、嵐のような風雨に見舞われる日もしばしば。オマケに、この年はテレビをつければロンドン橋でテロが起き、すぐ数日後には貧困層が多く住む高層マンションが未曾有の大火事、という悲惨なニュースが続きました。

迷える子羊へ開かれる扉、イベント尽くしの教会!

ちょっと憂鬱になってきたので、とにもかくにも外に出なければ!と思いたち、町散策に出ました。するとあまりにも教会が多いことに気がつき、フラッと立ち寄ってみるとなにやら掲示板が。

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そこにはなんと、私の大好きなヨガのチラシや、子供向けの習いごとを紹介したポスター、ブックフェアといったイベント告知などがところ狭しと貼られていました。それまでどんなに検索をかけても近くのヨガ教室は見つけられなかったのですが、まさか教会のホールでやっているとは。

ほかにもジムやフィットネスで人気のズンバ教室まで開催されていたりと、教会という場所を借りてさまざまな催しが当時ありました。イメージとしては、日本の公民館的役割を担っている気がします。

お茶会から地元情報まで

ふと脇を見ると、ドアが開かれた一室でなにやら人が集まり談笑していました。チラッと覗くと「カムイン!」と呼ばれ、お言葉に甘えて入ってみました。その場にいた人たちはほとんどが年配の方々で、カウンターにはケーキやクッキーなど、ちょっとしたお菓子が置いてありました。コーヒーか紅茶をすすめられ、悪いので寄付としてお菓子を買いました。新参者を歓迎すべく私の会話相手になってくれたのは、真っ白なシルバーヘアがすてきなおばあちゃま。気を遣って、桜の話や第二次世界大戦の話まで聴かせてくれました。

また、このとき教会で行われる子供向け児童館のようなプレイ・グループ(play group)が毎週開催される(関連記事)、と教えてくれたのもこちらの教会の人でした。地元情報に接したことがよほどうれしかったのか、この日はさらに別の教会にまでハシゴしました。

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そちらでもスタッフの方々に親切にしてもらい、この頃にはすっかりイギリスの教会が好きになっていました。当時はまだカトリック教とプロテスタント教の違いもわかっておらず、さらにイギリスの国教はそのどちらでもない、イギリス国教会という独自の宗教概念だということに気づくのはまだ先のことでしたが、なにより家から一歩外に踏み出すというキッカケを作ってくれたことに感謝しました。

2020年の春にあったロックダウン(都市封鎖)中は新型コロナの感染防止対策で、教会での日曜礼拝やそのほか宗教行事の一切が禁止されました。同年11月現在、来たる2度目のロックダウンでは、葬儀と個人の祈りを除く礼拝所での共同礼拝が再び禁止されます。よって子供向けのプレイ・グループなど、娯楽性のあるものも当面閉鎖のままです。

最近ではおかげさまでイギリス生活にもすっかり慣れ、教会でお世話になる機会もだいぶ減りましたが、毎年行われていた各地でのお祭りやフェアなどは楽しみにしていました。当面の希望としては、まずはこれからひと月続くロックダウンをつつがなく終え、来年あたりにまた以前のような活気を取り戻してもらうことです。

幸い今回のロックダウンではもっとも心配していた学校もスーパーも開いたままですし、2度目ということもあり、週末(10月31日)に行ったスーパーでも前回のような買いだめに走るなどの混乱は見られませんでした。

飲食店など経済全体への影響が懸念されますが、個人的には外食やレジャーを諦める以外は普段とあまり変わらない生活が送れそうです。それでは、5日(木)よりステイ・ホームを再び始めます。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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