イギリス郊外暮らし〜すばらしきかな英国式庭園〜

公開日 : 2020年07月10日
最終更新 :

地方に行けば行くほど自然が豊かになり庭付き一軒家の場合、その庭も自然と広くなるのは日本もイギリスも同じかと思います。祖父母の家にはくだものの木があったので、わたしは子供の頃より、日本で暮らすなら柿や梅、イチジクといった木、かつて住んでいた東南アジアのような南国ではバナナやマンゴーの木が自宅にあれば、と昔から憧れていました。

木の種類は違えど、偶然にも現在イギリスの自宅でその夢がかなえられました。イギリスといえばガーデニングが盛んなことでもよく知られていますが、花だけでなく、くだものまでこんなにもよく育つとは知りませんでした。

季節の移りかわりを告げる花々

感覚的にですが、イギリスの季節は日本のそれよりひと月分ずつ早く到来すると思います。最近の日本では12月はまだまだ秋の延長のような気候で、1月になっていよいよ冬本番という気がしますが、イギリスの寒さのピークは12月。2月にもなればスノードロップという白くて可憐な花が春を告げ、そのあとラッパ水仙にチューリップと4月頃まで春の花が咲き乱れます。

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日本では梅雨のイメージが強いアジサイも、イギリスでは5月頃から8月の夏いっぱいまで咲いています。残念ながらお隣さんのように熱心なガーデナーではないわが家の庭は、花が相対的に少ないです。それでも3月頃には水仙が、5月から8月いっぱいまでがバラ、6月からはイギリスを代表するハーブのラベンダーが小規模ですが、毎年見事に咲き乱れてくれます。

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そのほか雑草ですが、黄色や白い小さな花も無数に咲いており、遠めにはまるで黄色いじゅうたんのようです。わたしは台所からウットリ眺めたりして好きなのですが、これがたくさん生えている=芝刈り(参考記事)をサボっている、という証になってしまうので夫は「ウゲッ(もうこんなに生えてる......)」と嫌そうな顔をします。

他家と比べて花が少ないので木の枝やツル、こういった雑草の小花でもせっせと瓶に生けたりして楽しんでいます。その点バラは華美で花のサイズも大きく、存在感があるので少量でもサマになり、格好もつくので便利です。

くだもの代がうく夏の豊作

花以外に特筆すべきことは、はじめに述べたくだものです。わが家には庭の中央にリンゴの木(関連記事)があり、春先から白い花が咲き、ふと気づいたころには枝のあちらこちらに小さな実が現れます。

初夏の6月になると小さな緑色のブラックベリーの実が目につき始め、ひそかにイチジクも同じように青い実をつけます。これだけでも十分うれしいと思っていたのですが、住んで2年目のある日、イチゴの存在に初めて気づきました。

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イギリスでは明らかに手入れされていない庭の一部や、コンクリート道路脇のわずかな土から生えている、野イチゴらしきものをときおり見かけます。わが家のものは自生なのか、それとも前の住人が植えたのかさだかではありませんが、ツヤツヤと光り輝くまっ赤なものを見つけたときは感動しました。手入れをしていないのでほとんどダンゴムシにくわれ、たった3粒だけの収穫でしたが雨水だけでよくもこんなに甘く立派な姿に育ったものだと感心しました。

2020年の今年は7粒確認しており、実が赤くなったら即座に収穫して食べていたのですが、5粒まで(すでに2粒虫くい)とったところで油断してしまいました。たった1日様子を見なかっただけで、もう何者かにくわれていました。虫くいレベルではなく、丸ごときれいに取りさられていたので、さては庭によく出没するキツネでしょうか。どうりで越してきた初年度は、イチゴの存在に気づかなかったわけです。

そのほか、収穫のピークは8月のなかば、ちょうどお盆のころです。ブラックベリーはその名のとおりつやを帯びた黒色に光る宝石のようで、イギリスでは道ばたでもそこら中に自生しています。ときおりバケツを持ってブラックベリー狩りをしている家族も見かけます。人の庭でなければ勝手に取っていいのです。

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リンゴも毎日ボタボタ落ちてくるので、ある程度の大きさがあり虫くいの少ないものを選んで拾います。これら収穫物は基本的に保存のきくジャムにし、気が向いたらパイやゼリーにもしてみます。

さいごの収穫期

そうこうしているうちにイチジクが完熟し始め、つぶれるほどやわらかいので大急ぎでとっては消費し、この時期は大忙しです。特にイチジクの熟れ具合の見きわめはむずかしく、熟れていないと硬くまったく甘みがありません。もう少しかなと放置しているうちに風が冷たくなってしまい、成長が止まり、さいごには地面に落ちて朽ちてしまいます。

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夏も終わる頃には、前庭のバラがプックリつやつやとした、だ円形の実をつけるようになります。これまたなんだか食べられそう。けれどまさかね、と思っていたら在住3年目にして、それはどうやらかの有名なローズヒップだということに気づきました。いかにもすっぱそうでしたが生でかじってみると、意外にもほんのり甘みを感じました。ローズヒップティーにするには中のタネとわたをとり除き、刻んだ実を乾燥させてからお湯を注げばいいようです。

最後にもうひとつ、同じく3年目の夏に判明した「食べられる実」が裏庭にありました。ずいぶんときれいな紫色だな、と以前より思ってはいましたが、お隣さんに手渡して聞いてみると、なんと、パクッとその場でかじってしまいました。

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一瞬アゼンとしましたが、私もそれにならってやってみると、あ、甘い......! 調べてみると、さだかではありませんがスピノサスモモ?という、スモモの一種のようです。そういわれてみれば、スモモのような味がします。ただしこれにはある程度、注意が必要です。まだ硬くて渋い実にあたるととんでもなく渋いので、入念に手で硬さを確かめてから取らないといけません。また、実は小さいのに皮をむかなければならず、タネもあるので食べにくいです。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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