イギリスの教育制度〜公立と私立の違い〜

公開日 : 2020年07月02日
最終更新 :

イギリスのロックダウン(都市封鎖)による学校閉鎖が、わが子が通う学校では先月6月より段階的に解除され(参考記事)、先週2020年6月22日より全学年児童の登校が短縮授業を条件に許可されました。

わたしは外国の教育制度といえばせいぜいアメリカ方式ぐらいしか知らなかったのですが、イギリスでは同じ英語圏でもありとあらゆることがアメリカ方式と異なります。保護者としてイギリスの教育制度や用語に関して、理解するまでけっこうな時間がかかりました。1番上のお子さんが未就学児の場合、長らくイギリス在住であっても小学校のことに関してはサッパリ、というケースも多そうです。いったいどのような点が他国(おもに日本)と違うのか、以下にいくつか抜粋しました。

日本より1学年早い小学生

まず、学年の区分けが日本とは異なります。義務教育期間が日本より2年多く、日本ではまだ幼稚園年長さんのときからこちらではもう小学生になります。まだ幼さが残るとはいえ、れっきとした1年生なので宿題もあれば(おもに私立校のみ)算数もする、漢字テストに値する単語テストまで毎週あります。1年早く始まる分、小学課程は日本の5年生までで、中等教育は小6から高1までと、日本より1年多くなります。その分高等教育が2年間しかなく、そこでようやく日本の大学生の時期と重なります。

呼び名が異なる

次に戸惑ったことは学年の呼び方や校長、学期、公立といった、学校に関する呼び名がアメリカのそれとはおおいに違う点です。まず、幼稚園のことをイギリスではナーサリー(Nursery)といいます。......ナース? 看護師さん? 病院的な?

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一般的には日本でいう保育園、託児施設をさすようですが、わが子が通う学校では幼稚園の年少組にあたり、1学年しかありません。翌年には小学校への準備期間のようなレセプション(Reception)という小学生寄りの学年(日本の年中組に相当)にあがります。レセプション......受付?レセプションパーティー?のっけからもう、頭の中がハテナだらけでした。次がイヤー・ワン(1)です。もう小学生⁈(日本ではまだ年長組に相当)

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校長先生はヘッドマスター(Headmaster)あるいは女性の場合ヘッドミストレス(Headmistress)と呼びます。

学期はターム(term)といい、きわめつけは公立校のことはステート(state)スクールといいます。私立校はインディペンデント(independent)スクールで、 当初学校めぐりをして校長先生との面談をいくつかしましたが、質問をしようにもいちいち単語が違うので苦労しました。

公立と私立の違い

とくにこの「公立校と私立校の違い」が当時わからず、もんもんとしていました。引っ越し作業の忙しさにかまけて調べようともせず、目に入る違いにだけ目を向けていました。なんとなく気づいたのは、私立校の男子生徒は雪の降る真冬でも、年じゅう半ズボンをはいていること、ブレザーや帽子をかぶっていることでした。逆にいえば違いはそれだけ⁈と、疑問はふくらみました。

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ちなみに公立校の制服は基本的に上はワイシャツではなくポロシャツ、ズボンは長ズボンで上着は私服、帽子はありません。靴も靴下もカバン以外ほとんどのものにおいて、学校のブランド指定がありません。そのためスクールカラーやデザインさえ合えば、大型スーパーで売っているものを自由に買えるので便利そうです。そのうえ授業料、給食費までタダだということで、ますます私立校に通わせる意味がわからなくなりました。

そのあと、生活するにつれ徐々に明らかになってきたことは、私立校ですと1クラスの生徒数が公立の約半分程度(公立はだいたい30人以上)なので、先生の目が全生徒にいきわたりやすい、という点が大きな違い、かつ魅力なようでした。また、すでに述べたように、制服や身なりのしばりが公立の場合はゆるそうで、髪型も個性的なヘアスタイルの子供をたまに見かけます。保護者も自然とファンキーな方がいたりするようで、ママ友情報では、白人のドレッドヘアや、デッカいラジカセをかついで子供のお迎えに来る黒人のお父さんなど、まるで映画の世界のような人が現実世界に! いるそうです。見てみたい......。

宿題と休みが多い私立校

イギリスには日本にはない、学期なか休みのような「ハーフターム」と呼ばれる1週間単位の休みがだいたい1.5 ヵ月ごとにあります。年間の授業時間は足りているのかとつねづね心配になるのですが、私立校の場合このなか休みが公立校よりさらに長い2週間のときもあり、年がら年中休みというイメージです。

それを補うためか、 1日の授業時間と宿題は公立より多いです。ナーサリーからすでに毎日絵本を持ち帰ってきて、読み聞かせ、親のコメントも読書ノートに書かなければなりません。レセプションにもなると、学校指定の薄い教科書(絵本)に変わり、週に1度は算数の宿題が出ます。くり返しますが、日本ならまだ幼稚園の年齢です。

以上、日本や他国との違いをザッと並べてみましたが、制服や宿題の内容などについては、あくまでもわたし個人の体験による情報です。同じイギリス国内の公立、私立校でも学校や地域によって事情はさまざまです。公立でも自治体ベースのものや教会ベースなど、設置した母体によって種類が違ったり、私立においては、ナーサリーは他学年と合わせてプレ・プレップ (pre- prep)と呼ばれたり、そのあとの学年を「イヤー」と呼ばずにプレップス(preps)という学校もあります。そのほか、イギリス人でも「confusingly(まぎらわしい)」というとおり、私立なのにパブリック(Public)スクールと呼ばれるエリート輩出校があったりします。

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パブリック・スクールとは昔と現在では、その意味合いが違います。もともとは600年以上も前に、チャリティー活動の一環として寺子屋形式で生まれました。当時は身分にかかわらず誰もが入れる学校だったことから「パブリック」(公共の)と呼ばれたのですが、現在ではこの学校を起源とする長い歴史と伝統を誇る、おもに寄宿制の男子私立校(自宅からの通学が認められている学校もあり)を指します。(参照:The Good Schools Guide

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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