リンゴの花が満開です〜ロンドン郊外ロックダウン中の癒し〜

公開日 : 2020年04月25日
最終更新 :

イギリスの物理学者、ニュートンが「木から林檎が落ちるのを見て万有引力を思いついた」という逸話は有名ですが、そんな状況を一度たりとも見たことがなかったので、在英前はいまいちピンときませんでした。

ところが、クロイドン(参照記事)というロンドン郊外に住むようになり、初年度の夏にこの逸話を思い出す機会に恵まれました。自宅の庭に生えている木からリンゴが落ちる瞬間を目撃したのです! 一度体験してしまえば何のことはない、珍しくもなんとも感じなくなるほどそのあともたくさんのリンゴがボトボト落ちてきました。

そのリンゴの木が今、満開の花を咲かせています。つぼみから花開くまではあっという間で、その変化に驚き毎日写真を撮ってしまったほどです。2020年の今年のつぼみに気づいたのは4月の10日頃。ちょうど気温がグングン上がってきた時期です。

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私はこちらに来るまで、リンゴの花というものをそれまで見たことがありませんでした。そのため初めて自宅の庭でそれを見たときは、感動というより驚きました。そのあと毎年欠かさず咲いていたはずなのですが、夫もいうように「こんなに咲いていたっけ」と思うほど今年はよく目につきます。それもそのはず。先月から始まったロックダウン(関連記事)の影響で自宅にいる時間が増え、例年より頻繁に庭に目をやる機会が増えたからに違いありません。

リンゴ好きなイギリス人

イギリス人はリンゴ好きな国民のようで、スーパーには1年を通して数種類のリンゴが常時並んでいます。子供のオヤツや大人でも歩きながら丸かじりしている人や、ランチ替わりにする人までいるほど身近な存在です。そのせいか、ロンドン郊外の住宅街では、わが家のように庭にリンゴの木がある家も少なくありません。

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スーパーで買う物が自宅で取り放題?!と興奮したのも束の間、少々厄介なのがリンゴの品種についてです。 わが家の木が実をつけるリンゴはブラムリーという、酸味が非常に強いタイプです。そのため、もいだらそのままかじるという訳にはいかず、大家さん曰く「料理用のリンゴ」だそうです。

収穫したリンゴの使い道

夏も終わる9月頃の晩夏には青くても甘みがあるのですが、実をつけ始める7月から8月まではまだ渋くて生食はできず、加熱調理する必要があります。初年度の夏は品種も不明だったので収穫時期、食べ方などが一切わからず、青いままボタボタ落ちてくるリンゴに手を焼きました。ネットで品種を調べたりお隣さんや大家さんに聞いて、ようやく合点がいきました。

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そこで始めは大量に砂糖やレモンをかけて一晩置き、それから鍋を火にかけていたのですが、翌年からは母の助言に従い電子レンジを使ってみたところ、あっという間に加熱できて大幅な時短になりました。このリンゴは火が通るとみるみる泡状に溶けたようになるのが特徴ですが、レンジですと鍋のように煮ている間に中のリンゴが跳ねて飛び散ることもなくラクチンです。

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そのうち砂糖もどんどん控えて、レモンすら入れず代わりにシナモンとレーズンで甘さを補うようになりました。そうして初年度がジャムだけだったのに対して、翌年はほかにアップルパイ、潰れきれていない果肉ゴロゴロのゼリー、鶏肉のアップルソースがけと、思いつく限りのレパートリーを増やしました。

オーガニックならではの苦労話

このように無農薬、シュガーレスでヘルシーな自家製リンゴ製品を作ることを毎夏楽しみにしているのですが、「オーガニック」ならではの難点がいくつかあります。まずは下処理に関してですが、無農薬がゆえに市販品のように形がきれいに丸く整っておらず、その上青い果実は非常に硬いので、包丁を入れるのに一苦労します。一個一個も小さいので、数ばかりあり疲れます。また、木になってるうちからガンガン虫喰いにあうので傷んだ箇所を取り除く必要があるのですが、穴が空いている実には包丁を入れると白い幼虫が顔を出すことがあります。

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こういう実は虫のせいか芯が真茶色に枯木化しており、幼虫も同じように茶色く死んでいるのならまだいいのですが、下手をすると包丁でそのまま生きた幼虫ごと切ってしまうことも珍しくありません。そういったときには哀れにも幼虫はリンゴと一緒にまっぷたつに、刃にはネチャ〜っとした粘っこい液がついたり......なめくじベイビーがついていることもあります。

ある日などは下処理中に、なにか首筋が「モゾモゾくすぐったい、気のせい?」と思って手で払うと、幼虫が私の首筋をウニョウニョ這っていたこともありました。無農薬ならではのハプニングに最初はアタフタしましたが、年を追うごとに動じなくなりました。

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このリンゴの木はちょうど台所の窓から真正面に見えるので、調理や後片付けをしているときなど、ふと顔を上げると今の時期は満開の花が目に飛び込んできます。夜には暗闇の中、花弁の白さでほのかに光り輝いて見えます。先の見えない外出規制に鬱々となる気分を束の間吹き飛ばし、癒してくれます。これから再び始まる暑い夏には木陰を作ってくれ、秋から冬にかけてはすっかり枯れてしまった姿をさらして寂しくさせたりと、1年中楽しませてくれる愛すべきわが家のリンゴの木です。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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