イギリス学校閉鎖開始〈閉鎖までの経緯と自宅学習の実情〉

公開日 : 2020年04月02日
最終更新 :

日本より遅れること20日あまり。英国でもついに2020年3月23日より、全国の学校閉鎖が始まりました。日本では時間を持て余した子供がついテレビやタブレットといった電子機器に見入ってしまう、という親御さんの嘆きを耳にしました。

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こちらでは他国よりずいぶんと休校を遅らせた分、多少の猶予があったせいか、わが子が通う現地校からは大量の課題が出されて、暇どころではなさそうです。以下、他校の状況は知りませんが、わが子が通う学校での閉鎖までの推移と自宅学習の様子をご報告します。

急変した状況、学校閉鎖にいたるまで

休校までの経緯を辿ると、状況は2020年3月13日を最後に急転直下、それまで平常だったすべてのものに突如として不穏な空気が漂い始めました。日一日状況が変わり、在英大使館情報、外務省渡航情報、学校から、習い事からと次第に日替わりで新情報と方針変更のお知らせが入るようになりました。

学校は政府の方針に従い、基本的に「学校は閉鎖しない」と空元気なような様子で主張していましたが、次第に学校生活にも支障が出始めました。おそらく今後来る休校に備えて先生方が準備に当たられていたのでしょう。毎日あった宿題がこの1週間はまったくのゼロになり、放課後のクラブ活動などありとあらゆる活動が停止になりました。

この間それまで「咳や発熱など体調の変化があった者は7日間の自宅待機」だったものが、「14日間」に変わり、「本人だけでなく、世帯内に1名でも症状が出た場合は世帯全員の自宅隔離が必要」と、正に日替わりで状況が変わり、さらには「数時間単位で状況が変化する可能性もあるのでご留意願います」との一文までありました。

そしてついに、2020年3月18日水曜日の夜ジョンソン首相が3月20日からの全国一斉休校の発表をしました。その瞬間、学校以外の習い事などありとあらゆる活動の自粛、キャンセルがPCメールに届き始めました。その頃には学校側も必死の準備が整い、翌3月19日木曜日は下校時に各自大量の課題が入った分厚いプリント類が配られ、遠隔オンライン授業のセットアップも済まされました。

自宅学習の始まり

この頃には度重なる条件変更のお陰で、自宅隔離に置かれた生徒の数が激増しており、残りの生徒数はすでに激減していました。そのため3月20日金曜日は予備日的な感じで、勉強はあまりせず余裕をもって閉鎖前、最後の日を終えたようです。

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そして迎えた翌週明け3月23日月曜日、いよいよ自宅学習が始まりました。学校でも親である私自身も口を酸っぱくして子供に釘を刺したことが「これは休暇ではない。あくまでも普段の学校と同じように家でも過ごすこと」ということです。実際学校から出された課題は学校の時間割に沿った内容になり、毎日こなすべき課題が2週間分用意されていました。それとは別に、起床時間、学習、休憩、食事、就寝などの1日のスケジュールが時間単位で刻まれた、毎日の予定表を作るお母さんもいました。

のしかかる親への負担

こうしてやっと、自宅学習を始めて2週目を迎えたのですが......思った通り、親への負担がものすごいです。この「予定表付き自宅学習セット」を通常の授業と併行して、急遽1週間足らずで完成させなければならなかった先生方には頭が下がりますが、これを自宅で子供たちに毎日完遂させるのは親の仕事......。

親への甘え、遊びからの誘惑、勉強に適していない環境など、学校と家では多くの違いがあります。そんななかで、本来学校で指導を受けながらするさまざまな学習を家でするということは、子供たちが「学習時間中」に親の時間はほぼなくなるということを意味しています。

長期休みのドリルや単発の自由研究課題などと違い、学校で行うはずだった新分野も含めて家でさせるので、当然独力では解けない問題が多く出現します。そもそも毎日の課題範囲を伝える指示だけでも時間が取られます。

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理科の実験や図工、体育、音楽といったものまで本当に日程に組み込まれているので、学校でなら用意されているはずの材料まで自宅で用意しなければなりません。手作業も多く、子供が小さい場合は終日つきっきり、多少学年が上の子供でもそれはそれで問題が解けずに呼ばれ、結局つきっきりと親にとってもたいへんな労力です。スペイン語なんてものに関しては、私自身かつて学んだ経験は一切なく、まさに子供と頭をくっつけて自分も一緒にお勉強状態です。

臨機応変に一丸となって乗り切るべし

在宅勤務や引き続き通常勤務を続けている保護者も多いので、これらをまともに取り組める家庭は限られているはずです。子供の数が多い場合はさらに監督が行き届かず、ほとんど課題をこなせていない、というのも当然あり得ることです。実際、「もっと遠隔操作を拡大して、クリックひとつで教師から直接授業を受けられるよう、より完璧なオンライン学習を学校は提供すべきだ。学校に明日、メールで直接掛け合ってみる!」と息巻いたお母さんもいました。

ほかのお母さんが代替案を紹介したり、また、後日校長先生より長文のメールで「親も子供も気楽に」と、引き締めは必要だけれど飴と鞭で「大目にみる」ことが一番大事だと説いていました。また、リアルタイムでの授業配信は他校では実施しているところがある一方、当校では各家庭の状況により一律に学校の時間割に親が合わせてスタンバイするのは難しいはずだ、との理由で当面行う予定はないそうです。

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ということで、イースター休みまでの残り1週間足らずも、各家庭で無理なくできる範囲で引き続き勉強させていけばいいのだと思います。こうしている間にも状況は目まぐるしく変わっており、その春休み明けの学校再開も怪しくなってきました。けれどこのような時こそ、保護者たちはSNSの学級グループ・チャットを通じて頻繁に連絡を取り合い、お互いを奮い立たせてこの空前の異常事態を乗り越えようと頑張っています。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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