イギリスの「古き良き」郊外型ご近所付き合い
集合住宅が多いロンドン都心部の暮らしぶりは、東京とよく似ているのでご近所付き合いが少ないようですが、我が家のような戸建てが多い郊外クロイドン(関連記事)ですと、皆さんそれなりに付き合いがあるようです。かくいうわが家も、まるで「古き良き一昔前の日本」のような付き合いをさせてもらっています。
懐しのお裾分け
右隣の夫妻はガーデニングが趣味で、悪天候が多い冬でも雨がほんのひととき上がれば、その一瞬の隙をついてもう早速庭作業をしています。春は色とりどりの花で目を楽しませてくれ、収穫の時期である夏になると下記のような温室栽培の野菜や庭の果実をお裾分けしてくれます。
大きな大きな青菜(名前不詳。ただの green vegetable といわれました。)
イタリアンパセリ
サクランボ
プラム
イチジク
イチジクに至ってはわが家の庭にはみ出して生い茂っている分は、好きなだけ勝手に収穫していいよ、とのこと。日本はもちろん、こちらでもイチジクは店で買うと小さい実がほんのちょっとしか入っていない割にけっこうお値段がはります。それが取り放題だなんて夢のようです。ちなみに隣家のイチジクは、品種のせいか皮が紫にならず黄緑で小形です。けれど中身は見かけによらず、とっても甘い!
パセリはあまりにも大量なので、いつも酢漬けにしてハーブ・ビネガーにしています。なぜかいつも週末近く「もう冷蔵庫が空っぽで今夜の副菜をどうしよう」と困っているときに限って、タイミングよく野菜を貰えたりするので助かっています。
季節の挨拶と御宅訪問
左隣の年配御婦人は季節行事を大事にしていて、クリスマスにはわざわざわが家までやってきて挨拶とカード、子供たちのためにチョコレートをそれぞれひとりずつに持参してくださってビックリしました。
ある日庭に見慣れないサッカーボールが3個も転がっているなと思ったらどうやら婦人が使っていないものを、いつのまにか投げ入れてくれたようです。またあるときは、これまた見慣れぬテニスボールが3個投げ入れられていると思ったらこちらは右隣の夫妻からでした。
クリスマスに挨拶をいただいたので、わが家も見習ってある年イースターの朝に訪問してみました。するとかわいいウサギさんの高級チョコをまたまた子供たちにいただいてしまい、かえってお気遣いして貰うことに。
その上、お隣さんはまだパジャマのようなガウンを着たままだったにもかかわらず、なんと玄関ならぬ居間にまで招き入れてくださりました。子供がさっさと入って行ってしまったのもあり、私もそれをいいことに図々しくもほんの少しだけお邪魔してしまいました。お部屋には暖炉があり、壁一面の額に入った写真や小物などがセンス良く並べられており、「伝統的なイギリスの御宅」とでもいうのでしょうか。世代が違うので普段ママ友の家では見たことのないような重厚感溢れる室内でした。
話好きでお茶をするのが好きなイギリス人は、こうしていかなるときでも来訪者をお招きできるよう常に家を綺麗にしている、とどこかで聞いたことがあります。「そんなの子供がいたらムリでしょ」とは友人談ですが、たしかにイギリスの家は外から丸見えでも気にせずカーテンを開けっ放しにし、外に見えるように花を飾っている家が多いです。
生花で普段から家を綺麗に飾り、右隣の夫妻のようにガーデニングにいそしみ、左隣の婦人のように毎日を丁寧に過ごすイギリスのご近所さんたち。これからの季節、またあちこちの家で庭の花が咲き始め、郊外ならではの緑溢れる町並みを眺めるのが楽しみです。
筆者
イギリス特派員
パーリーメイ
2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。
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