シルク・ドゥ・ソレイユ~マイケルジャクソンONEで活躍中の田原(たばる)君にインタビュー!

公開日 : 2015年04月02日
最終更新 :
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この記事がきっかけとなりいろいろな出会いが重なって、先日その「Michael Jackson ONE」で活躍する日本人パフォーマーの一人、田原丈嗣(タバルジョウジ)君にインタビューをさせていただく機会がありました。

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「Michael Jackson ONE」は、現在ラスベガスで8つのレジデントショー(常設公演)を持つシルク・ドゥ・ソレイユのショーのひとつで、2013年6月からマンダレイベイホテルで行われています。

シルク・ドゥ・ソレイユによってマイケルジャクソンの魂と音楽がぎゅっと詰めこまれたこのショーは、90分の間に30曲ほどのマイケルの歌とアクロバットやダンスによって組み立てられているのですが、その中で"Smooth Criminal"の曲にのってステージを縦横無尽に飛び回っている7人の日本人パフォーマーたちの一人が田原君というわけです。

ちょうど今年の2月に日本で放送されていたテレビ番組「笑ってコラえて!」の中で、「世界で活躍する若いアスリート達」として紹介されていた田原君は、こちらラスベガスでもかなり話題に上っていたのです。

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インタビューは3月21日土曜日、マンダレイベイホテルのシアター(ショー会場)にて、まずはステージでトレーニングしている彼らの見学から始まりました。水曜日と木曜日がもともとショーの休演日で、続く金曜日(3月20日)は、年に一度の一大イベント「One Drop」開催のためにラスベガスのすべてのシルク・ド・ソレイユのショーは休演だったため、この日は体ならしのためのリハーサルとのこと。

ステージでの練習を見学させていただいている間、今回インタビューの窓口となって下さったシルク・ド・ソレイユの広報担当、ジェフさんからいろいろとお話を伺うこと30分。そしてトレーニングを終えた田原君の登場です。

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新体操を始めたきっかけ?遊びも勉強もそっちのけで打ち込んだ新体操

- シルク・ドゥ・ソレイユに入るまでは中学から大学までずっと新体操を続けてこられたのですよね。

田原君:はい。昔から体を動かすことが好きだったんです。小学生の時にやっていた少年野球を引退するにあたって、次に何をするかという時に、たまたま神埼清明高校(新体操部)の中山監督が父の同級生で「新体操教室」を勧められて練習をちらっと見に行きました。

そこでバク転とか初めて見た光景に「かっこえ~!」となってしまって(笑)。最初は、こんなバク転ができたら女の子にモテると思って。それが新体操を始めたきっかけです。

- え?実はそういうきっかけ?

田原君:はい!もう、モテたいと(笑)。バク転できたらモテると思って始めたんですが、それがいまだに続いています。続いているのは多分自分には新体操しかないと思っていたからかな。自分から新体操を取ったら何もないと。

- で、モテましたか?

田原君:いえ(笑)、中学・高校ではひたすら練習ばかりで休みもなかったですから。毎日毎日練習で、遊びに行きたいんだけど、そういうのを我慢しないと日本一は取れないと言われていたので、遊ぶ時間も削って練習をしていました。やめたいと思った時期もあったけど、やめてもすることないし。

- 高校生の時に出演されていたテレビ番組(2008年放送の「笑ってコラえて!」)」の中で、将来の夢を訊かれて「サーカス団員になりたい」と。その頃具体的にそういう夢が?

田原君:いや、そういうわけでもなかったと思います。確かにシルク・ドゥ・ソレイユというショーのことは知っていました。こういうサーカスってかっこいいなという気持ちはあったし、あと新体操を続けても卒業したあとに就職が難しいとか、頑張っても何もないよとか言われていたので、それなら(シルク・ドゥ・ソレイユみたいな)サーカスで体を動かす仕事につくのもいいかなという気持ちもあったかと。それで、頭の片隅に「サーカスに入れたらいいな。」というのがあったのだとは思います。

- そして、高校卒業後は(男子新体操の強豪である)花園大学に入学されました。ところで、イモータルツアー*は大学在学中に始まっていたのですね。

田原君:そうですね。自分が大学生の時にイモータルツアーが始まって、ツアーには先輩たちが参加していました。

その時も、「あー。(先輩たちは)サーカスかー。」なんてぼんやりと考えていました。この頃も別に「自分も頑張ってサーカスへ行くぞ!」というような強い気持ちもなかったんですよね。*イモータルツアー:2011年10月から2014年8月まで北米・ヨーロッパ・アジア・オーストラリアなど27カ国を回ったシルク・ドゥ・ソレイユのツアーショー"Michael Jackson The Immortal World Tour"。新体操の演技が取り入れられた最初のショー。

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そしてシルク・ドゥ・ソレイユへ。モントリオールでのトレーニング~演じること

- 大学生の時にシルク・ドゥ・ソレイユのオーディションを受けられたのですね。

田原君:「マイケル・ジャクソン ONE 」というショーを作るのでそのためのオーディションがあるという話は、新体操の仲間たちと軽い感じで話してはいたんです。「あ、そうなんやー。」ぐらいの(笑)。(大学の)3年生の終わりか4年生の頃にオーディションが行われると聞いていたので、だったらちょうど卒業したくらいにそこに行けたらいいかななんて思って、受けるだけ受けておくかなと。実際受かるとも思っていなかったし、完全に落ちたなと思っていましたね。

- で、思いもかけずに受かってしまって。

田原君:はい、そうですね。大学の3年生後半からモントリオールへ行きました。モントリオールでは半年、トレーニングや構成を作ったりしていました。

- 先ほどジェフさんからお伺いしたんですが、モントリオールではこれまでに経験したことのない「演じる」ということを学んだのだとか?

田原君:そうですね。最初、いろいろと新しい(これまで経験したことのない)ことがありすぎて、混乱していました。みんな新しいことをするという時にはやっぱり恥ずかしさがあるんです。もちろん自分も恥ずかしくて。外国の方は結構オープンなので何でもやってしまうし、何でもできていたのでうらやましいなあと思っていました。今思えば、(トレーニングを通して)恥ずかしさを捨てるというか、みんな一皮むけて、こう、「何かやれ。」と言われた時にぱっとできるようになっていましたね。

- 言葉や考え方、バックグラウンドが違ういろいろな国の人たちが一緒になって、ひとつのショーを創り上げるためのトレーニングをしているわけですけど、そういう中にポンと放り込まれて、最初はどんなことを思ったのでしょう?

田原君:やっぱり文化の違いっていうのもいろいろと感じましたけど、外国の方から「おまえたち日本人の文化はすばらしいな。」とか「日本って美しいね。」なんていろいろと褒められたので、日本人として誇りを持っていたいなと思ったりしました。でも、やっぱり言葉が一番難しいかなと。ここラスベガスでも外に出ると、強い言葉(英語)でばーっとまくし立てられたり、ちょっと怖いというか。だいぶ慣れてはきましたが、いまだにヒヤッとするときはありますね。

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ショーを始めてからこれまで、変わったこと

- マイケル・ジャクソン ONE が始まって、2年弱。最初の頃と今と比べて、ステージ上での田原君に何か変化は?

田原君:うーん。最初の頃は緊張ばかりしていました。まあ、いまだに緊張はするんですが、もっと緊張していて。本番中も、(自分が出るナンバーが)「来ないで!来ないで!」でと言うくらい、本当にイヤで(笑)。ミスがないようにっていうことを最初はずっと頭の中入れていて。モントリオールからラスベガスに来たころは、構成が変わったりすることも多くてミスもいろいろありましたね。

今は、テレビ(先月放送の「笑ってコラえて!」の番組)でも言っていたように、ミスをしないのは当たり前で、いかにお客さんに楽しんでもらえるかということを考えています。

たまにミスは出るんですけど、いまだに(笑)。でも今はどれだけこう(観ている人たちにさとられないように)ミスをカバーできるか、そういうことに気を使いながらみんなやっていますね。

- 毎日のショーは楽しい?

田原君:楽しいといえば楽しいです。でも難しいこともいっぱいあります。モントリオールで作ったオリジナルの構成からはがらっと変わっているし、変わっていくことの繰り返しなので。今も新しい構成を作っているんですけど、何か月後にはまた変わっていくんだと思います。

- 学生時代は競技としてひたすら練習をして1位を目指す毎日、でも今はもう勝ち負けということからは離れたわけですけれど。

田原君:まあ、気持ち的には楽になりました。学生時代はもう命かけるくらいの勢いで練習してたので。しかし、(毎日同じレベルを保ちながら年間480本のショーで演じ続けることについて)同じものをキープするというのも結構大変なんです。メンタルな部分や体力的にも。でも、やっぱり喜んでくださるお客さんを見ると嬉しいので、それで頑張れていますね。

- なるほど!ステージでのパフォーマンス中に、客席のお客様の反応とか、そういう空気みたいのはわかる?

田原君:わかりますね!全然!「あ、今日はさめてるな。」っていう日もあるし、「おおっ、今日は盛り上がってるなーっ!」とか、「そこの(最前列の)お客さんノリノリやなー。」とか。やっぱり、客席の空気はとっても感じますし、あとは拍手が聞こえた時は、ほんとにうれしいですよね。

- 拍手と言えば、スタンディングオベーション、多いのではないですか?

田原君:多いですね。。。たまーに、寝てる方とかもいらっしゃいますけど(笑)。好き嫌いがはっきりするショーなんだと思いますね。

- ところで、新体操は以前に比べると人気は出てきているのでしょうか?

田原君:そうですね。昔に比べると少しづつですが知名度は上がってきていると思います。でも、まだまだ。

- なんで人気がないのかな?新体操のことを少し教えてください。

田原君:体操と新体操、実は結構違います。オリンピックには新体操はないですし。

新体操の団体というのはひとつのフロアで6人が呼吸を合わせて音楽とともに3分間の演技をします。個人はスティック、リング、ロープを使って一人で1分半。

たとえば、「タンブリング(床やマットの上で跳んだり回転する)」で言えば、体操でも新体操でもやるんですが、新体操では(体操のように)たとえば、「タンブリングでこの技をしないとこれだけの難度が取れません。」というようなことはないんです。

新体操にももちろん難度はありますよ。低い難度だけど「交差」(人の上をタンブリングで超えること)をしたらいい難度になるとか、あとは「組み技」(人を人の上にあげたりする技)は体操にはないですね。それから、新体操は曲と一体になって表現するということもあると思います。

- シルク・ドゥ・ソレイユのリクルーターがその映像を見てインスパイアされたという、青森大学の男子新体操チームによる演技をYou Tubeで見ました。体操っていう枠では収まりきらないような素晴らしいパフォーマンス、シルク・ドゥ・ソレイユが新体操をショーに取り入れたかったという理由がなんとなくわかりました。

田原君:そう、「BLUE」ですね。実はモントリオールでのトレーニング中に上の方からお話をきく機会があったんですが、その方が若い頃、1990年ぐらいにすでに男子新体操をみつけていて、その時に「いつかこの新体操を自分のショーに取り入れてみたい。」と考えていたんだそうです。いつ、どのショーにどうやって取り入れるかということをずっと考えていて。そして「BLUE」を見た時、ついに「今だ!」ということになったと聞きました。その素晴らしいタイミングで、シルク・ドゥ・ソレイユに男子新体操が加えられることになったんだと思います。

- そうだったんですか。そして時が経ち田原君が今シルク・ドゥ・ソレイユで活躍していて。これって新体操を続けている後輩たちの夢を大きく膨らませるきっかけになっているんだと思います。これからも頑張って下さいね。

田原君:はい!ありがとうございます。

(インタビュー終了)

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インタビューの前に広報担当のジェフさんから伺ったのですが、田原君たちが入団後、モントリオールでのトレーニングで身に着けたことは、新体操の技とは別に「演じる」ことだったそうです。ステージの上で言葉を発することなく観客にストーリーを伝えられるようになること。実はモントリオールでの6ヵ月は、その「演技」のためのトレーニングでもあるのだそうです。

「新体操のテクニックだけで言えば彼らと同じレベルの選手はいると思うけど、この7人はテクニックに加えて、ステージの上で「演技」することができるというのが非常に素晴らしいよね。」というお話でした。

実際トレーニングを見学していると、みんなほんとに楽しそうにマットの上をぴょんぴょん飛び跳ねていて、中学校の体育館みたいなゆるーい風景なんですが、ひとたびショーが始まってステージでの演技が始まると、もうその面影はふっとんで、"Smooth Criminal"の曲を演じ切っている彼らとのギャップに驚くばかり。

きっとこういう人たちが集まっているのが、シルク・ドゥ・ソレイユの魅力のひとつなんだろうと思ったりしました。

さて、そんな田原君ですが、毎年ここラスベガスで行われている「ラスベガス秋祭り」でボランティアをするなど、地元コミュニティへの参加にも積極的なようです。去年の秋祭りではキッズッコーナーでお手伝いをされていたのだとか。私自身もお祭りにはボランティアとして関わっていたので、そういう話を聞くとうれしいなぁ。

何はともあれ、18カ国から集まった63名のダンサーやパフォーマーが演じるこの「マイケル・ジャクソン ONE 」で活躍する田原君、これからも元気に頑張ってほしいなと思います。

ゴールデンウィークや夏休みに向かってラスベガス行きをお考えの皆さん、ぜひ「マイケル・ジャクソン ONE 」をスケジュールに入れてみてくださいね。「あー、観てよかった!」と感じるはずです。

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○チケットインフォメーション(2015年3月31日現在の情報)

会場: マンダレイベイリゾート&カジノ内 Michael Jackson ONE シアター

   3950 Las Vegas Blvd S, Las Vegas, NV 89109

公演スケジュール:金曜日・土曜日・月曜日・火曜日 7:00PM & 9:30PM、日曜日 4:30PM & 7:00PM

休演日:水曜日・木曜日

特別スケジュール:7月4日(独立記念日)4:30PM & 7:00PM

2015特別休演日:4/14 - 16, 6/3 - 18, 8/11, 10/14-22, 12/15

2015追加公演日:8/19, 11/25, 12/30

チケット料金: $69 - $160, $180(ゴールデンサークル) (税金、サービスフィー別)

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<この記事の写真はCirque du Soleilの許可をいただいて掲載しています。複製・転載はご遠慮下さい。>

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筆者

アメリカ・ネバダ州特派員

石川 葉子

ラスベガスに来て20年ちょっと。ローカルツアーオペレーター出身のフリーランスライターです。

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