#16 コンポントムのコオロギ事情を追う〜その2・養殖コオロギ編〜

公開日 : 2019年02月26日
最終更新 :

コンポントムからこんにちは!

コンポントム特派員の舛屋彩子です。

今回は前回に引き続き、コンポントムのコオロギ事情についてお届けしていきたいと思います。

前回は天然編でしたが、今回は養殖編を。

訪れたのは、州都から50kmほど離れたバライ地区。

州都内でも探したのですが有力な情報は得られず。

20kmほど離れたサントゥク 地区にもあるようですが、

今回は同僚の伝手を辿りました。

養殖場と言っても家庭単位で、

そして家の敷地内で行っているため、

一見コオロギの養殖場があるとは見た目からは気づきません。

家の裏に案内して貰い・・・

養殖現場と初対面。

コオロギ養殖場.JPG

拡大して見てみましょう。

生後10日目アップ.JPG

生後10日目の赤ちゃんコオロギたちです。

紙や布の上に撒かれている黄色いものは、コオロギの餌。

家禽用と同様のものです。

タケオ州で様々なコオロギ養殖場を見学してきたコオロギ博士・葦苅晟矢氏によると、

コオロギの餌として鶏用の餌を与えるのはカンボジアではコモンなことのようです。

そして雑食であるため、草や野菜なども食べます。

水分補給としては、2時間おきの霧吹きが必要。

養殖のサイクルは45日。

45日目でコオロギを集め(?)、バイヤーの元に行くそう。

コオロギサイクルメモ.JPG

壁には、養殖開始日と収集日が備忘録として書かれています。

生後10日目コオロギ.JPG

薄黄色の、潰れた木枝のようなもの、何だかお判りでしょうか?

正解は、サトウキビ。

カンボジアではサトウキビジュースが良く飲まれるのですが、

果(?)汁を絞り出した後のサトウキビを無料で譲り受け、

コオロギ養殖に役立てています。

このサトウキビは、コオロギちゃんたちのベッドとなるようです。

全体像を写していなかったのが非常に心残りなのですが、

実はこのレンガ桶上部には蚊帳がセットしてあります。

養殖桶遠目から.JPG

写真上部に少しだけ黒い蚊帳が写っております。

日中は写真のように開けておき、

夜は他の昆虫など外敵から守るために蚊帳を下ろすそう。

ここでコオロギ博士へ素朴なギモン。

「蚊帳を開けておいても逃げないの??」

槽内部に、タイルが取り付けられているのが見えますでしょうか?

実はコオロギ、このようなツルツルした面は登れないそう!

なるほど〜〜面白い!

槽の下部には、水たまりが。

虫よけ水たまり.JPG

これは、アリやネズミなどからコオロギを守るためのもの。

産卵は40日目。

産卵場所.JPG

40日目を迎えたら

この木箱の中に灰を入れ、

養殖槽の中に2つの木箱をセットします。

7:00am-15:00pmの間に卵を産むそう。

コオロギは土に産卵する習性があるようで、

この灰の中に卵を産むそう。

粒子が細かい方が産卵が容易なんだとか。

ちなみに卵の色は黄色とのこと。

産卵用灰.JPG

カンボジアの一般家庭では、

毎日の料理には七輪と木炭を使用している家庭がほとんど。

使用済み木炭の灰を再利用しています。

卵保管場所.JPG

そして、その木箱をこの木箱(大)の中へ移動。

コオロギの卵が孵化するには、

日が当たらずに多湿な環境を作ってあげることが重要なようです。

しっかり霧吹きも置いてありますね。

この一つの煉瓦槽で養殖できるコオロギは、約30kg.

30kgって何匹?と、ここでも尋ねてみましたが

「数えられないよ!!(笑)」との回答でした。笑

前回取材した天然コオロギの販売者さん曰く、

1kg=200-300匹とのことだったので

仮に250匹とすると、

250匹×30kg=7,500匹(!)

7,500匹のコオロギ・・・

(想像中)

7,500匹のコオロギ、どうやって収獲(捕獲?)するんでしょう?

聞いて見ました。

「手作業」だそうです。(!)

コオロギがくっ付いているサトウキビを振って振って・・・、袋へ。

この作業の方が骨が折れそうですね・・・。

気になる1kgあたりの価格はというと・・・?

1kg=13,000riel - 15,000riel

(1ドル=約4,000riel)

先日取材した天然コオロギより若干お高め。

こちらの農家さんには、養殖槽が3つあります。

(30kg獲れる槽×1 / 50kg獲れる槽×2 =1サイクルで130kg)

仮に 1kg=3.5ドル(14,000riel)としましょう。

1年で5サイクルの養殖が可能とのことでしたので、

3.5ドル×130kg ×5サイクル = 2,275ドル(!)

農村部の農業収入(米)が月150ドルと耳にしたことがあるので、

単純に12で割ってもお米以上の収入です。(約190ドル/月)

ここで養殖されたコオロギ達は、地元で消費されます。

「売るのが簡単だからね〜」とのことでした。

完全なる地産地消!

カンボジアに生息するコオロギは主に2種類。

・チョンルッダイッ

(チョンルッ=コオロギの意。ダイッ=鉄の意。)

 鉄のコオロギ! 何だかかっこいいです。

・チョンルッドーン

(チョンルッ=コオロギの意。ドーン=ココナッツの意。)

※もっと正確に発音を綴ろうとすると、チョングルッ。

(舛屋的発音出来ず伝わらない単語暫定No.1)

ここで養殖されているのは、前者・チョンルッダイ。

カンボジアにおいて養殖のノウハウが確立されているのは

チョンルッダイッのみ。

チョンルッドーンの方は、現在の研究(と言っていいのか分かりませんが)では養殖は不可能で、天然物のみとのこと。

興味深いです。

こちらの養殖農家さんは、5年前からコオロギ養殖を開始し、

そのノウハウは農業局より教えてもらったとのことでした。

未来のタンパク源として注目される昆虫食。

昆虫食が抵抗なく受け入れられる日も、

そんなに遠くないかもしれませんね。

参考までに・・・

重要なことに言及するのを忘れていました。

コオロギ素揚げ.JPG

気になるコオロギのお味はというと・・・!

普通に美味しいです。

エビなどの甲殻類系に近い味。

目を瞑って食べたら、虫だなんて分かりません。

素揚げアップ.JPG

ビールの良いアテにもなります。

葦苅氏曰く、コオロギはグルタミン酸などの日本人が好む旨味成分が豊富。

コオロギで出汁を取ったコオロギラーメンは最高に美味だそうです。

気になる〜〜〜!

そして半分以上はタンパク質。

アスリートにはたまりませんね。

葦苅氏「コオロギ始め、虫のように丸ごと食べられる動物ってまず他にない」

・・・確かに!!!

奥深き昆虫食・・・

理解を深めると更に昆虫食に対しての抵抗が激減し、

少なくともコオロギに対しては全く抵抗がなくなっている自分がいました。

というよりも、ヘルスコンシャスな人間にとってはかなり興味深い。

むしろ積極的に取り入れたいですね。

コオロギの聖地・コンポントムのコオロギ事情はいかがでしたでしょうか?

また追って、昆虫シリーズをアップして行けたらと思っておりますので

今後も昆虫レポートにお付き合いください。

では、最後までお読みいただき有難うございました!

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