なぜ禁酒? 南アフリカの新型コロナ対策
南アフリカの新型コロナウイルスの感染者数が30万人を突破、感染拡大に歯止めがかかりません。
感染拡大の中心地がWestern Cape州(ケープタウンの所在地)から、Gauteng州(ヨハネスブルグとプレトリアの所在地)へと移り、感染拡大の押さえ込みまでにはまだ1ヵ月以上かかると言われています。
このような状況のなかで南ア政府は今週、お酒の販売禁止措置再導入を含むレベル3ロックダウン内容の一部見直しを発表しました。
でも、なぜ新型コロナ対策でお酒なんだろう? 本当に効果があるの?
そんな疑問に対するヒントとなるデータを見つけたので紹介します。
南アでの新型コロナにともなうロックダウンは、2020年3月26日に始まりました。4月は最も厳しいハードロックダウンが行われ、5月に少し緩和されるも禁酒は継続、そして6月にレベル3となり禁酒が解けた、というのがこれまでの流れです。
こちらの表は、ヨハネスブルグ郊外のSoweto地区Diepkloofにある公立病院Chris Hani Baragwanath Academic Hospital(通称Bara病院)での3月から6月の外傷患者の推移を示したものです。
Bara病院はアフリカ最大の病院で、病床数は3000床。南アの東大とも呼ばれるWitwatersrand大学(通称Wits大学)の教育病院でもあり、日本を含む世界20ヵ国以上から研修を受け入れています。
3月から6月にBara病院が受け入れた外傷患者の人数を追うと、世の中がほぼ通常営業だった3月は2220人でした。これに対して厳格なロックダウンが行われた4月は1151人と約半減し、そのあとは5月が1623人、禁酒が解けた6月には患者数が一気に増加した様子が見て取れます(6月の内訳は公表なし)。
グラフにするとさらに一目瞭然です。
飲酒の解禁と外傷患者の増加に相関関係が見られるのは、Bara病院に限った話ではありません。
例えばEastern Cape州でも6月上旬に、禁酒の解除とともに外傷件数が一気に増加して医療現場を圧迫しているとして、禁酒の再導入を求める声が聞かれました。
日本の報道では「禁酒、コロナに効果あり? 南アフリカで驚きのデータ」のように、飲酒と新型コロナの直接的な因果関係をほのめかす記事も散見されますが、これはアイキャッチを狙った明らかなミスリードです。
「飲酒由来の外傷患者が医療現場の逼迫を招いているため、禁酒措置を導入した」が真相です。
それにしても、お酒が解禁された瞬間に外傷件数が倍増するとはいったいどんな飲み方をしているんだ、お酒に失礼じゃないか......とお酒好きのひとりとしては思わなくもないわけではありますが。
図表:参考記事を元に筆者作成
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