なぜ禁酒? 南アフリカの新型コロナ対策

公開日 : 2020年07月18日
最終更新 :

南アフリカの新型コロナウイルスの感染者数が30万人を突破、感染拡大に歯止めがかかりません。

感染拡大の中心地がWestern Cape州(ケープタウンの所在地)から、Gauteng州(ヨハネスブルグとプレトリアの所在地)へと移り、感染拡大の押さえ込みまでにはまだ1ヵ月以上かかると言われています。

このような状況のなかで南ア政府は今週、お酒の販売禁止措置再導入を含むレベル3ロックダウン内容の一部見直しを発表しました。

でも、なぜ新型コロナ対策でお酒なんだろう? 本当に効果があるの?

そんな疑問に対するヒントとなるデータを見つけたので紹介します。

南アでの新型コロナにともなうロックダウンは、2020年3月26日に始まりました。4月は最も厳しいハードロックダウンが行われ、5月に少し緩和されるも禁酒は継続、そして6月にレベル3となり禁酒が解けた、というのがこれまでの流れです。

2007_ figure01.jpg

こちらの表は、ヨハネスブルグ郊外のSoweto地区Diepkloofにある公立病院Chris Hani Baragwanath Academic Hospital(通称Bara病院)での3月から6月の外傷患者の推移を示したものです。

Bara病院はアフリカ最大の病院で、病床数は3000床。南アの東大とも呼ばれるWitwatersrand大学(通称Wits大学)の教育病院でもあり、日本を含む世界20ヵ国以上から研修を受け入れています。

3月から6月にBara病院が受け入れた外傷患者の人数を追うと、世の中がほぼ通常営業だった3月は2220人でした。これに対して厳格なロックダウンが行われた4月は1151人と約半減し、そのあとは5月が1623人、禁酒が解けた6月には患者数が一気に増加した様子が見て取れます(6月の内訳は公表なし)。

2007_figure02.jpg

グラフにするとさらに一目瞭然です。

飲酒の解禁と外傷患者の増加に相関関係が見られるのは、Bara病院に限った話ではありません。

日本の報道では「禁酒、コロナに効果あり? 南アフリカで驚きのデータ」のように、飲酒と新型コロナの直接的な因果関係をほのめかす記事も散見されますが、これはアイキャッチを狙った明らかなミスリードです。

「飲酒由来の外傷患者が医療現場の逼迫を招いているため、禁酒措置を導入した」が真相です。

それにしても、お酒が解禁された瞬間に外傷件数が倍増するとはいったいどんな飲み方をしているんだ、お酒に失礼じゃないか......とお酒好きのひとりとしては思わなくもないわけではありますが。

図表:参考記事を元に筆者作成

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。