南アフリカで前代未聞のベストセラー本が誕生 "The President Keepers"

公開日 : 2017年11月14日
最終更新 :

「5000部売れればベストセラー」といわれる南アの出版業界で、今、ちょっとした事件が発生しています。

"The President Keepers"という本が爆発的に売れているのです。

発売1週間で2万部が完売 大手書店で入荷待ちが続く

10月末の発売以来、

●初版第1刷2万部は発売から1週間ほどで完売

●慌てて1万5000部を緊急増刷するも、既に大手書店で完売

●電子書籍の海賊版がWhatsAppやメールで広まり、著者・版元は違法コピーに手を出さないようお願いする声明を発表(違法コピーは犯罪ですが、事実として)

と異常事態が続いています。

それにしても、南ア人がここまで関心を持つ"The President Keepers"とは、いったいどんな本なのでしょうか?

一度は引退したベテランジャーナリストがズマ大統領の汚職とネットワークを告発

実はこの本は、南アの政治を取り上げた本です。

一度は引退して田舎でゲストハウスを経営する隠居生活を送っていたJacques Pauw氏が綿密な調査に基づいて、ズマ大統領による汚職とこれを可能にしている取り巻きを真正面から告発する内容になっています。

著者のPauw氏はアパルトヘイト政策の支配下にあった南アで、当時の政権国民党による反アパルトヘイト活動家たちに対する暴力をアフリカーンス語のメディアで暴露した、恐れ知らずのラディカルなジャーナリスト。

数々の疑惑を切り抜けてきたズマ大統領に対して今度こそ引導を渡す一冊になるか?と異例の関心が集まっているという訳です。

本の目次は次の通りです。

●1. The spy in the cold

●2. Projects Vodka, Pack and Psycho

●3. The shadow state

●4. Glimmers of horror

●5. Little altar boy

●6. President on a payroll

●7. I beg you, Mr President

●8. Tom's tempest

●9. The gentlemen gangster and his donkey

●10. Up in smoke

●11. Tom's tax bones

●12. The spiders in the centre of the web

●13. Somebody in a neighbourhood full of nobodies

●14. Gladiators

●15. Top Hawk down

●16. Jeremy of the Elsies and the woman of trouble

●17. Killer, KGB, and a guy in a crumpled suit

●18. The one who laughs while grinding his enemies

政府当局による出版差し止め要求でさらなる注目

ところで、ズマ大統領やANCの汚職を告発する、あるいは批判する本はこれまでにも多数出版されています。一体今回は、何が特別だったのでしょうか?

南アの報道では、ズマ大統領の意向を忖度した(あるいは命令に従った)政府関係機関State Security Agency(SSA)による脅迫とも取れる出版差し止め要請が大きな転機になった、との見解で一致しています。

アパルトヘイト下での暗い過去をふまえて、南ア国民は言論の自由に対して敏感です。言論封鎖とも取れるSSAの動きに対して、

「政府の行動は本の信憑性を裏付けたようなものだ」

「言論の自由を守ろう!」

と世論が反応して、異例の売れ行きになったという訳です。

Jacques Pauw氏の元には匿名での殺害予告も届いているようですが、当の本人にとっては初めての経験ではなく権力と対峙する姿勢が何ら変わることはなし。公の場にも積極的に姿を見せています。

先週、南ア最大の書店チェーンExclusive Booksで行われた出版記念イベントは大盛況に終わりました。

Hyde Park店での様子。

PretoriaのBrooklyn Mallでの様子。

ペーパーバックは未だ品薄状態が続いていますが、Exclusive Booksは11月15日(水)までに南ア全国の店舗合計で2万刷を入荷すると発表しています。少しは手に入りやすくなるかもしれません。

また、電子書籍版はAmazonKoboの大手オンラインプラットフォームで取り扱われていて、南ア国外からの購入も可能です。

1冊の本による影響がどこまで広がるのか、しばらく目が離せません。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。