トルコ共和国の危険度

公開日 : 2001年10月28日
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日本とトルコを結ぶ唯一の直行便であるトルコ航空が、大阪便の運行停止と東京便の運行数半減を伝えてきた。言わずもがな戦争の影響である。乗客数が20名程度のフライトが続いたりフライトキャンセルが出たりソウル経由便とくっついたり、と動きが激しかったので心配はしていた。外務省の観光旅行延期勧告発令をうけた観光ツアーが全キャンセルとなったことで、とどめを刺された形だ。

今回のアメリカのテロ以来、私のところにも「トルコは危険ですか」というメールが何通も舞い込んだ。この手の質問はなんとも答えにくい。絶対安全だと保障できる国などどこもない。炭そ菌騒動にからんで何度もテレビに登場しているサリン事件の「日本」という国だって、なかなかに危険かもしれない。トルコには確かにNATOの基地はある。しかし、先日お伝えしたトルコ人式テロ生き残り法に見られるように、トルコの一般大衆はまるでテレビの中の出来事のように今回の事件を捉えている。不謹慎ではあるが、戦争を身近に感じられないだけの平和な毎日がここにあるということだ。

市内の日本料理店では、「トルコに対する危険情報・危険度②「観光旅行延期勧告」撤回のお願い」という署名が集められていた。理由としては以下のように書かれている。(そのまま抜粋)

①戦争当事国であるアメリカ、イギリスに対して何も危険情報が出されていない。

② アメリカでは、新たなテロの可能性があるとFBIの声明があったにもかかわらず、何の危険情報も出ていない。

③ トルコはイスラム教国では唯一政教分離政策を取っており、今回危険度2に引き上げられた他のイスラム教国と同一視すべきではない。

④ テロは絶滅していないが、PKK、イスラム過激派の活動は収まってきており、以前と比べてより安全である。ロンドンでも今年、少なくとも3件のテロが発生しているが、危険情報が出されていない。

⑤ 生活実感として感じる危険度は、10月7日前と変わらない。

生活実感は個人のアンテナの広さと意識の高さによる主観に過ぎないし、トルコ人の「イスラム教徒だからって、テロリストタリバーンとひとくくりにされたくない」意識あたりはひとまず置くとしても、アメリカとイギリスに発令がないのは何ともフシギである。始まりがアフガニスタンから遠く離れたアメリカでのテロ行為であるように、爆撃地に近い遠いの立地条件はこの際、危険度とはあまり関係あるまい。「危険だと認められれば外務省職員の給料があがるから」だと憎憎しげにつぶやいていた男の人は、観光業者だったのだろうか。

危険情報が出されていてもいなくても、世界的に航空業界が打撃を受けていることからわかるように、観光旅行は自粛傾向にあるとは思われる。ただ危険度の数値は、観光だけに限らず日本とトルコの経済関係にも密接に関わってくる。いくつもの会議がキャンセルされ、ホテルはガラガラなのだ。日本は遠い国であるだけ、一度ついた悪いイメージを払拭するには、長い長い時間が必要となる。欧米の人々のようにすぐにも戻ってきてはくれないことをエジプト乱射事件や地震の経験が教えてくれた。

一つだけ景気のいい話が聞こえてくる。アタチュルク空港が結構儲かっているらしい、と。全世界でフライトが現象傾向なのになぜであろう。それは、ルフトハンザやKLMを始めとするヨーロッパ各国のナショナルフライトが、アジアなどの長距離線の給油地を、戦争をきっかけにドバイからイスタンブールへと次々に移したからである。ヨーロッパは、トルコ・イスタンブールをこの地域の中で最も「安全」と判断した、とも取れる。

それに対してなぜ日本は?と詰め寄られて、私はなんとも理由が見つけられない。

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