安くておいしい!ベトナム南部の定番麺料理「フーティユ(Hủ Tiếu)」とは

公開日 : 2020年09月18日
最終更新 :

新型コロナウイルスが猛威をふるっておりますが、事態が収束したら訪れて食べてほしいおすすめのホーチミン市のグルメを紹介します。今回私が紹介するのは、ベトナム南部の代表的麺料理のフーティユ(Hủ Tiếu)です。

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■フーティユ(Hủ Tiếu)の基本情報

フーティユ(Hủ Tiếu)とは豚肉とシーフードの具がのった麺料理です。主にベトナム南部でよく食べられます。フーティユは米を原料にした生地を蒸して作られます。基本製法はフォー(phở)と同じですが、生地を乾燥させて半乾麺にする工程が入るところがフォーとの違いです。そして、極細麺でコシが強いのが特徴です。以前私がハノイに住んだ時にはフーティユの存在を知りませんでしたが、現在、私が住むホーチミン市には店舗型から屋台型までほんとうにたくさんのフーティユの店があります。ベトナムの代表的な麺料理といえば、多くの日本人はフォーを思い浮かべがちですが、フォーは元々は首都ハノイを代表する麺料理です。もちろん今ではベトナム全土でフォーが食べられますが、ホーチミン市でフォーを食べると、平均的に5、6万ドン(約250円から300円)はするので、結構割高です。一方、フーティユは平均3、4万ドン(約150円から200円)で食べられるので、小腹が空いたときなどにはお手頃な存在なのです。

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■フーティユ(Hủ Tiếu)のルーツ

ホーチミン市で頻繁に食べられているフーティユですが、その発祥地はメコンデルタ地方の南部、メコン川のもっとも河口に位置するソクチャン省(Sóc Trăng)だといわれています。ソクチャンでは、名物のフーティユはHủ Tiếu Nam Vangと呼ばれています。Nam Vangとは日本語で"南蛮"のことです。日本でも南蛮料理と呼ばれる料理がかつてありました。それは16世紀にインドや東南アジアを経由してやってきたポルトガル人が日本へたどり着くまでに訪れた東南アジア・インドなどの国のエッセンスが入り混じった「エスニック料理」のことでした。一方、ベトナム人にとっての南蛮とは、隣国カンボジアを意味します。ベトナム南部は17世紀にキン族が南下するまで、プレイノコールと呼ばれるクメール人(カンボジア人)の土地でした。キン族の阮氏はまず明人を入植させ、かれらに官位を与えて、プレイノコールをベトナム領に編入してしまいました。ちょうどその頃、隣国のクメール帝国は衰退期に迎えていたこともあって、ベトナムは簡単に領土拡大に成功したのです。現在でも、メコンデルタ地方にはカンボジア系住民がたくさん住んでいます。中でも、ソクチャン省は同地方のチャビン省とともにカンボジア系住民がベトナムで最も多い省として知られています。さらに、ソクチャン省は中国系住民(ホア族)の人口比率でもベトナムで2番目に多い省です。フーティユはそんな中国とカンボジアの影響が色濃く交じり合ったソクチャンだからこそ生まれた麺料理といえるでしょう。そもそもクメール料理にはクイティウと呼ばれる麺料理がありました。フーティユの名称はそこからきています。そして、フーティユに使われる米麺もこの地の中国系住民が最初に作ったとされています。なお、ソクチャンのカンボジア系住民が作る本場のHủ Tiếu Nam Vangには、調味料としてヌク・マムの代わりに、カンボジアで主流の川魚の調味料プラホックが使用されているそうです。ぜひ一度食べて見たいものです。

■フーティユ(Hủ Tiếu)の具材と調味料

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フーティユの具材には、一般的に豚肉やシーフード(海老)が使われます。付け合わせの野菜としては、にら、もやし、レタス、春菊などが入っています。豚肉といっても、チャーシューだけでなく、ひき肉、ハツ(心臓)やマメ(腎臓)といったホルモンや、つみれも入っていてさまざまな食感を楽しめるのがうれしいです。お店によっては、牛肉を使ったメニューもあったりします。フーティユは豚骨ベースの控えめな甘さの透き通ったスープが特徴です。そのままでも十分においしいですが、ベトナム人はそこにライムを絞り入れたり、唐辛子を入れたり、チリソースをかけたりして、自分好みの味に調整して食べます。チリソースは入れすぎるとスープの繊細さが失われるので加減が大切です。

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■フーティユ(Hủ Tiếu)のヴァリエーション

ソクチャン発祥の麺料理、フーティユですが、大都会ホーチミン市では半乾米麺にこだわらずいろんな食材を使った食べ方が広まりました。いくつかを紹介したいと思います。

①Hủ tiếu Mì

Mìとは小麦麺のことです。Hủ tiếu Mìは米麺と小麦麺の2種類の麺が1つの器に入ったメニューです。米麺と小麦麺をいっしょに食べるなんて合わないのではと思いきや、意外にも違和感なく楽しめます。

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②Nui

米麺の代わりにマカロニ(Nui)を使ったメニュー。私は積極的に注文しませんが、スープとの相性はそれほど悪くないと思います。

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③Bánh Canh

Bánh Canhとは、米粉とタピオカ粉を混ぜ合わせて作った麺です。食感や見た目はうどんに近いです。スープとの相性も良好です。

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④Hủ tiếu khô

khôは乾いたという意味です。つまり、汁なし麺のことです。麺に汁がかかっていない代わりに、別でスープがついてくることが多いです。

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スープが異なるので今回は紹介しませんでしたが、ビーフシチューにHủ tiếu麺を入れて食べるHủ tiếu bò kho(bòは牛肉、khoは煮込むという意味)という料理もあります。それは、また別の機会に紹介できればと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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