かまど(台所)の神様「オンタオの日」を祝って迎えるお正月☆2018年テト便り☆

公開日 : 2018年02月08日
最終更新 :
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旧暦の12月23日、ベトナムでは"かまど(台所)の神様オンタオ(Ông Táo )" を祭り、この行事を済ませるとテト(旧正月)が間もなくやって来ます。今年は2月8日が「オンタオの日」ということで、前日7日は朝から準備の買い出しのため市場は賑わっていました。

旧暦12月23日に祝われる「オンタオの日」

「オンタオの日」は、かまど(台所)の神オンタオが、人々の一年間の行いを聞きに天から降りて来る日だそうです。人々は部屋や台所を掃除して、祭壇にお供え物をし神様を迎え、この一年の報告や、新しい年への願掛けをします。オンタオの神様はその願いを天に持ち帰り、大晦日に再び願いを届けに戻って来るのだと聞きました。

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▲ オンタオの日に供える飾り物が並ぶ賑やかな店先

オンタオの神様の伝説

三位一体の神オンタオは悲しい説話に基づかれています。ある子供のいない夫婦が不仲になり、喧嘩が絶えなくなくなったことから夫が妻を家から追い出しました。家を出た妻は、その後出会った男性と再婚。時が経ち、前夫は己を悔い改め妻を探しに旅へ。妻に再会を果たした前夫が改心の気持ちを打ち明けると、妻はその言葉に心を打たれました。しかし、そうして話しているところへ夫が帰宅します。妻は前夫を裏庭の積み藁に急いで隠し、夫はそれを知らずに畑の肥料にしようと藁に火をつけました。前夫は妻を気遣い藁から出る事なく命を落とし、妻もその火の中に身を投げ前夫と共に亡くなりました。夫は妻の死を見て自らの命を絶ちました。

天帝は、愛のために身を投げ出した3人に「台所の神」「土地と家の神」「市場の神」の役割を授け、やがて3人はひとつの神となり、家の安泰や財産を守る神様になりました。

※参考文献「Kitchen God Day - Tet Tao Quan- Vietnam Online」ほか、知人たちからのエピソードなどを参照

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ぜひ私も「オンタオの日」を体験しようと市場へ買い出しに行きました。まず目に飛び込んできたのは、お供え物に欠かせない餅米料理。ほかにも新鮮な果物、桃の花、黄色い菊など、お正月に欠かせない品々で溢れています。

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▲ 真っ赤な小さな鯉も販売されています

鯉は「オンタオの日」の重要なシンボルのひとつです。生きた鯉を池に放すことは、生き物への尊敬や感謝と共に、新年の幸運を祈るための伝統の行事だそうです。それは、オンタオの神様が天に戻る際、鯉に乗って帰るからという言い伝えからとのこと。鯉は3匹用意し、小さなボールに入れてお供えします。

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私は生きた鯉は買わず、オンタオの神様セットの中にあった、紙製の鯉で許していただくことにしました。

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私の滞在先は仮住まいなので祭壇はなく、お供えは簡易的なものです。祭壇がない場合はキッチンにセットを飾り、お皿にお供え物を並べれば良いとのこと。

お供物は白飯、餅米料理、スープ、野菜、茹でた鶏肉、花、お酒、ポットを添えたお茶、果物、砂糖菓子、塩、お線香、生きた鯉3匹などを供えます。品数や量は家庭によりそれぞれだそうです。神様に気持ちを伝えるのが大事とのこと。しかし、お供え物は1個、3個、5個の奇数で供える事が大事など、友人から様々なレクチャーをいただき、どうにかそれらしい形になりました。

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行きつけのレストランでは庭に祭壇、そしてかまどが焚かれ、お正月に欠かせない餅米料理「バインチュン」が作られていました。みな着々と正月を迎える準備が進んでいるようです。

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オンタオの日の準備は、できれば旧暦の12月22日に供え、遅くとも23日当日の朝には終わらせるそうです。支度ができると神様が降りて来るので、今年一年の出来事などを報告します。その後、来年の抱負、お願い事をします。その際、一番最初に名前と住所を伝えます。さもないと願いを叶えに戻ってくる際に神様が迷ってしまうとのこと。(ちょっとカワイイ)そしてオンタオの日の正午、神様は役割を終えて天へと戻って行くのだそうです。

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オンタオの日の正午を過ぎたら、紙のお供えは燃やしてお清めをし、お供物はいただきます。また、生きた鯉は川や湖に放して幸運を祈願します。

以上が、ベトナム人の知人たちに教えてもらい、初めて体験した「オンタオの日」でした。

沢山の食べ物を供えてキッチンから幸せが始まる一年。神様はなかなかバランスのよい食事をお求めで驚きました。そこには「豊かな食が幸せをもたらす」または「食の豊かさは幸せ」そんな精神が感じられ、かまど=キッチンから幸福が訪れるベトナムの素敵な伝統に感激しました。

こうして「かまど(台所)の神様オンタオの日」を無事終えると、テト正月への準備が加速していくそうです。

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▲ 小さな赤い鯉を湖にリリース。幸せが訪れますように

※オンタオの日は「オンコン・オンタオの日」とも呼ばれています

※行事のエピソードや作法は諸説があり、本記事はその一例であることをご理解いただけますようお願い申し上げます。

Photos & writing © Midori Nakagawa

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