海洋国家の名にかけて、4つのライバル都市がレガッタで激突!

公開日 : 2018年06月04日
最終更新 :
筆者 : 浅井まき

6月2日はイタリアでは共和国記念日。各地で様々な催しが行われました。ジェノバでも同様に関連する催事が行われていましたが、今年はもう一つ、重要なイベントがありました。

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それは、毎年開催されている旧海洋共和国対抗のレガッタ大会です!

旧4大海洋共和国、華麗なるパレード!

このレガッタ大会は1955年、かつての海洋国家の歴史的業績とライバル心を呼び起こすために創始されました。中世イタリアの海洋国家は多数ありますが、なかでも特に強力で後世にも影響を残したのが、アマルフィ、ピサ、ジェノバ、そしてヴェネツィアの4つの海洋共和国です。

6月2日土曜日の夜にはそれぞれの都市が各国の歴史を題材とした衣装を身に着け、ジェノバ市内を練り歩きました。

ピサ

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ピサの斜塔で有名なピサは今ではあまり港町のイメージはないかもしれませんが、中世には強力な海洋国家でした。フィボナッチを輩出した数学研究の中心地で、アラビア数字を欧州で初めて取り入れ、簿記など商業数学の発展に貢献しました。ジェノバと長らく覇権を争っていましたが、1284年メロリアの海戦で敗れ、ジェノバの優越を許すこととなります。ピサの一団は1004年にサラセン人の攻撃からピサを救ったとされる伝説のヒロイン、キンヅィカ・デ・シスモンディを主役とし、歴代のピサのリーダーたちを登場させています。

ヴェネツィア

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4つの国の中でとりわけ強力であったのはやはりヴェネツィアとジェノバで、両国は中世後期を通じて激しいライバル関係にありました(現在でもどうやら若干の対抗心が残っている模様...)。ビザンツ帝国の保護下から身を立て、第4次十字軍ではフランスなどと共に帝国の首都コンスタンティノープル(現イスタンブール)を攻略します。東地中海の覇者として近世まで君臨し続けた「アドリア海の女王」です。ヴェネツィアの一団の主役は、15世紀のヴェネツィア貴族の娘でキプロス女王のカテリーナ・コルナロ。祝祭都市ヴェネツィアらしく豪華絢爛で華やかな装いです。

アマルフィ

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南イタリアのアマルフィは4つの海洋共和国の中で最も歴史が古く、11世紀頃に全盛期を迎えました。東洋から伝来した羅針盤の実用化や、最古の海洋法(Tabula de Amalpha)の編纂など、地中海史に多大な影響を残しました。アマルフィの一団は当時の衣装を再現し、元首(ドゥーカ)の息子の結婚式の様子を表現しています。

ジェノバ

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観衆が待ち望んでいたのはやはりジェノバの一団です!大きな拍手の中練り歩いた一団は、1096年の第1次十字軍をテーマにしています。この十字軍への参加によりジェノバは近東に商業拠点を築くことができ、その後の繁栄をもたらす重要な転換点となりました。主役は2人、十字軍でジェノバの船団を率いたグリエルモ・エンブリアコと、従軍し自らも戦った年代記著者カッファロです。

大接戦となったレースの勝者は!?

翌6月3日、いよいよレガッタ開催です!

場所はジェノバの西側沿岸部のプラ地区。ペスト・ジェノベーゼに用いるバジルで有名な地域ですが、ここの海岸は専門家が見てもレガッタに最も適しているとのこと。コンテナ集積所のある突堤に守られ、横に長く伸びたボート停泊所は風も海面も穏やかで、多くの観覧客が並んで観戦できる絶好のロケーションでした!

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(がんばれ!)

午後6時過ぎ、4隻は各々観客のエールを受けつつスタート地点へ向かいます。

レースは2000m。前回優勝のジェノバ(白)は地元の大歓声を受け序盤から先頭を快走します。それにほとんど並ぶ形でアマルフィ(青)が追走し、その後ろにヴェネツィア(緑)、ピサ(赤)と続きます。私は1700mあたりの地点で観戦していましたが、私の前を通過した時点ではジェノバがわずかにリードしていました。しかし、最終盤にアマルフィが怒涛の追い上げを見せ、逆転勝利をつかみました。

さて、プラは郊外の静かな地区ですが、この日は1万人を超える観衆で大賑わい。帰りの電車を2本見送る羽目になりました...。

アマルフィはこれで12回目の優勝です。63年の歴史を持つ大会ですが、これまでの成績は(さすが海の上の街というのか)圧倒的にヴェネツィアが優位で、33回の優勝を誇っています。ジェノバは9回、ピサは8回です。

2019年の大会については来年春ごろに詳細が判明するかと思います。時期は5月末~7月初め、場所は順番通りであればヴェネツィアと思われますが、変更となる可能性もあります。

この時期に上記4都市を旅行される際には、ぜひ市内のイベント情報をチェックしてみてください!※ちなみに、テレビ中継もあります!

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