国指定重要文化財の芦屋釜が600年ぶりに里帰り!
こんにちは、「地球の歩き方」福岡特派員のDukeです。今日は、遠賀郡芦屋町にある「芦屋釜の里」を紹介します。
「釜」とは茶の湯で使われる湯釜のこと。芦屋はかつて湯釜の名品を世に送り出した土地柄で、ここで作られた釜は「芦屋釜」と呼ばれて都の貴族たちの間で名声を博し、室町時代を中心として一世を風靡しました。しかし、なぜか江戸時代初期には歴史の舞台から姿を消し、その高い技術は受け継がれませんでした。(写真は入口の長屋門)
「芦屋釜の里」は、そんな芦屋釜の伝統を復興し、古きよき時代の茶の湯の文化を振興するとともに、季節の花々を楽しめるようにと芦屋町が運営する、芦屋釜復興工房やふたつの茶室(蘆庵、吟風亭)を備えた日本庭園です。
入口を抜けると右側に芦屋釜資料館があり、室町時代の湯釜や現代の技術で作られた芦屋釜などを展示するほか、芦屋釜の歴史や製造方法などを映像や展示を通じて紹介しています。
この資料館では、2021年4月22日(木)から6月27日(日)の間(福岡県に対して緊急事態宣言が出されていた5月12日~6月20日は休園)、特別展「芦屋から始まる茶の湯釜、6百年の系譜」が行われていました。これは昨年末、芦屋町が購入した国指定重要文化財の芦屋釜を一般に公開するための特別展です。特別展の期間は終了していますが、この重文指定の芦屋釜と住友コレクションの名品9点は、引き続き7月14日(水)まで展示されています。
こちらが芦屋町が新たに収蔵した重要文化財、芦屋霰地真形釜(あしや あられじ しんなりがま)。室町時代に製作されたものです。国の重要文化財に指定されている茶の湯釜は全部で9点あり、そのうち8点までを芦屋釜が占めています。往時の芦屋鋳物師の技術力、芸術性の高さを窺わせるエピソードですが、実はこれまで重文の芦屋釜は芦屋町にはなかったのです。そこで芦屋町は、今年が町政施行130年にあたる記念として、昨年12月、県外の個人所有だったこの霰地真形釜を2億7500万円で購入。15世紀初期に製作された釜が、なんと600年の歳月を経て芦屋に里帰りを果たしました。
こちらは現代の芦屋鋳物師、八木孝弘氏の手になる七宝文真形釜(しっぽうもん しんなりがま)。国指定の重要文化財を復元した作品です。
浜松図真形釜(はままつず しんなりがま)。これも現代の芦屋鋳物師、樋口陽介氏による重要文化財復元品です。
江戸時代初期に途絶えてしまった芦屋釜の復興を目指す工房。「蘆屋鋳物師復興工房」と呼ばれるこの工房では、全国に残る芦屋釜の調査・研究を踏まえ、16年の歳月をかけて芦屋鋳物師の養成を行っています。先ほどの作品を製作した八木孝弘さん、樋口陽介さんのおふたりも、この工房で養成された芦屋鋳物師です。
鋳型が並んだ工房。中には入れませんが、タイミングがよければ製作場面を見学することもできます。
園内に咲いていた白いむくげの花。
池越しに見る大茶室、蘆庵。池は玄界灘、中洲のような島は芦屋町の奇観、「堂山・洞山」を表現したものです。
小茶室、吟風亭に続く小径。
露地や躙り口(にじりぐち)を備えた吟風亭。京都御所苑内の仙洞御所跡にある茶室、又新亭(ゆうしんてい)を復元したものです。
四畳半の茶室。
7月14日(水)まで芦屋釜の里で展示されている重要文化財、芦屋霰地真形釜は、その後いったん九州国立博物館で保管されます。その間に、重要文化財を保管できるように芦屋釜資料館を改装し、来年度以降は常設展示される予定だそうです。しばらくは見納めとなりますから、まだご覧になっていない方は7月14日までにどうぞ。
また、蘆庵の大茶室で春と秋の2回行われるミニコンサートは、マンドリンやフルート、マリンバ、ピアノなど毎回趣向を変えて楽しめるイベントです。新型コロナのため昨年春から中止されていますが、今秋は10月8日(金)、9日(土)の両日、「町制施行130周年記念 秋のコンサート」を予定しています。事前申し込みが必要ですので、詳細はウェブサイトをご覧ください。
【芦屋釜の里】
・住所: 福岡県遠賀郡芦屋町大字山鹿1558-3
・開園時間: 9:00~17:00(入園・呈茶は16:40まで)
・休園日: 月曜日(祝日にあたる場合はその翌平日)、年末年始
・入園料: 中学生以上200円、小学生100円、6歳未満(小学校就学前)無料
このほか、お得な年間入園券もあります。
・問合せ: Tel:093-223-5881 Fax:093-223-5882
・URL: 芦屋釜の里
筆者
特派員
Duke
縁あって福岡県北九州市に落ち着いて、はや15年。県外の方はもちろん、地元の方にも楽しんでいただけるよう、福岡・北九州の旬な情報を発信していきたいと思っています。
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