リアル三国志の世界へ~九州国立博物館「三国志」

公開日 : 2019年12月24日
最終更新 :
筆者 : Duke

こんにちは。「地球の歩き方」福岡特派員のDukeです。今日は、九州国立博物館で開催中の特別展「三国志」を紹介します。三国志は約1800年前の中国で黄巾の乱などにより漢王朝が衰退するなか、魏・蜀・呉の三国が覇権を争ってしのぎを削った歴史物語。その時代を生きた英雄たちの物語は中国のみならず広く世界に知られています。日本でも、吉川英治をはじめ多くの作家による小説や横山光輝の漫画、NHKによる人形劇ドラマなどでも親しまれてきました。今回の特別展「三国志」は、中国で発掘・発見された実際の出土品を公開するもので、言わば「リアル三国志」と呼ぶべきものです。

九州国立博物館(略して「九博(きゅうはく)」)は太宰府天満宮裏の丘陵地にありますので、まずは天満宮に参拝してから向かうのも趣があっていいかもしれません。宝物殿と菖蒲池の間の道を進むと山小屋風の建物があり、ここが九博への連絡通路入口となっています。

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建物の中に入るとすぐに長いエスカレーターがあります。その隣には階段もありますから、体力に自信のある方はもちろんそちらを利用しても構いません。壁には、過去に九博で行われた展覧会のポスターが飾られています。

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エスカレーターで上まで上がると、さらに動く歩道が続いています(写真は出口側から通路を見たところ)。この連絡通路は、照明の色が刻々と変化することから「虹のトンネル」と呼ばれています。

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通路を出ると正面に、緩やかな曲線を描く屋根とガラス張りの壁面が印象的な建物が見えてきます。

東京・京都・奈良の各国立博物館が美術系であるのに対して、九州国立博物館は歴史系博物館として2005年(平成17年)に開館。これは、日本とアジアとの文化の交流、人や物の往来に関して、九州がその窓口となってきたという歴史的及び地理的背景を踏まえ、「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」ことを館のコンセプトとしていることに由来しているのだそうです(九博公式HPより)。

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特別展示「三国志」は、プロローグ「伝説のなかの三国志」、第1章「曹操・劉備・孫権~英傑たちのルーツ」、第2章「漢王朝の光と影」、第3章「魏・蜀・呉~三国の鼎立」、第4章「三国歴訪」、第5章「曹操高陵と三国大墓」、エピローグ「三国の終焉~天下は誰の手に」という7部構成となっており、曹操墓(曹操高陵)の出土品をはじめとして、展示品の約8割が初めて日本で公開(九州は東京に次いで2回目)されます。また、この展覧会では「全作品撮影OK」とされており、特派員ブログに写真を掲載することについても問題ないとのことでした。

3階特別展示室に入ると、精悍で威厳に満ちた関羽像が出迎えてくれます。最も傑出した武将であり忠誠心に篤い関羽は、人々の尊敬を集め神として崇められてもいるそうです《青銅製、明時代15~16世紀:新郷市博物館蔵》。

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早い時期から劉備玄徳に仕え、関羽とは義兄弟の関係でもあった張飛が、関羽が曹操に寝返ったと早とちりしたことを謝っている様子を表した関羽・張飛像。勇猛果敢で鳴らした張飛ですが、豪傑らしからぬ、おもねるような表情で描かれているのが面白いですね《土製、清時代19世紀:天津博物館蔵》。

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この日は12月22日。日曜日かつ年内最終展示日とあって、大勢の来館者で混みあっていました。年明けは元日から1月5日までの公開です。

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劉備の祖先、漢の中山王が所有していたといわれる酒壺。金や銀などがあしらわれた豪華な仕様で、隣の小さな豹の置物ともども一級文物(日本で言う国宝)に指定されています《青銅製・金銀・ガラス象嵌、前漢時代紀元前2世紀:河北省文物研究所蔵》【一級文物】。

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人や動物などを薄い板状に成形し、7層にわたって飾りつけた多層灯。死後の世界を表現したものと考えられています《土製、後漢時代2世紀:涿州市博物館蔵》【一級文物】。

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張将軍という有力者の墓に副葬された儀仗俑。張将軍は、後漢末期に専横の限りを尽くした悪評高い董卓の配下の武将であった可能性も指摘されているようです《青銅製、後漢時代2~3世紀:甘粛省博物館蔵》【一級文物】。

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正確かつ強力に弓矢を発射する弩(ど)《青銅・木製、三国時代(呉)3世紀》【一級文物】。

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弩や弓といった飛び道具は三国志の時代の主力兵器のひとつ。三国志演義「赤壁の前哨戦」では、諸葛亮孔明が幕と草の束を張った20隻の船を囮にして曹操軍に無数の矢を放たせ、大量の弓矢を調達した話が伝えられています。約1000本の矢を使って、その様子をイメージした飾りつけが行われていました。

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祭祀儀礼などの重要な場面で使用された銅鼓《青銅製、三国(呉)~南北朝時代3~6世紀:広西民族博物館蔵》【一級文物】。

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曹操の墓、曹操高陵の内部が、展示室内に実寸大で再現されています。

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2008年から2009年に発掘された河南省安陽市の墓で出土した石碑(石の札)。そのうちの1枚(右)に刻まれた「魏の武王(曹操)愛用の虎をも倒す大戟」の銘文が、この墓が曹操高陵であることを決定づけました。世界を驚かせた大発見です《石製、後漢~三国時代(魏)3世紀:河南省文物考古研究院蔵》【一番右の石碑:一級文物】。

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曹操高陵から出土した白磁の罐(かん)。従来、6世紀後半の隋の時代と考えられてきた白磁の誕生ですが、それを遥かに遡る3世紀の墓から出土したことにより、これまでの定説が覆される可能性が大いに高まりました《白磁、後漢~三国時代(魏)3世紀:河南省文物考古研究院蔵》【一級文物】。

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後漢時代の豪華な金製獣文帯金具《金製・貴石象嵌、後漢時代2世紀:寿県博物館蔵》【一級文物】。

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揺銭樹と呼ばれる青銅製の飾りものを備えつけるための台座《土製、後漢~三国時代(蜀)3世紀:重慶市文化遺産研究院蔵》。

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NHKの「人形劇 三国志」に登場した人形も展示されていました。

こちらは、魏の曹操と嫡子 曹丕。

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蜀の劉備玄徳と軍師 諸葛亮孔明。

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九州国立博物館の特別展「三国志」は、伝説の時代と現代との間に架けられた橋のようなもの。とりわけ曹操高陵の発見は感慨深いものがあり、小説や漫画で読んだ三国志の世界が1800年の歳月を越えてぐっと身近に迫ってくるような気がする展覧会でした。

今年は12月22日で展示を終了しましたが、2020年は1月1日から5日まで公開されます。三国志の英雄伝や歴史に興味のある方は、是非ご覧になっていただきたいもの盛りだくさんです。

【九州国立博物館】

〇場所:福岡県太宰府市石坂4-7-2(太宰府天満宮横)

〇問合せ:092-918-2807

〇公式HP:https://www.kyuhaku.jp/

〇開館時間:(火~木09:30~17:00、金・土09:30~20:00)

〇休館日:月曜(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)、年内は12月23日~31日まで休館

〇観覧料:(三国志)一般1,600円、高大学生1,000円、小中学生600円

     (文化交流展のみ)一般430円、大学生130円

〇アクセス:(西鉄)西鉄太宰府線「太宰府」駅下車、徒歩約10分

      (車)太宰府IC または 筑紫野IC から高雄交差点経由で約20分

〇駐車場:普通車313台 500円/回

筆者

特派員

Duke

縁あって福岡県北九州市に落ち着いて、はや15年。県外の方はもちろん、地元の方にも楽しんでいただけるよう、福岡・北九州の旬な情報を発信していきたいと思っています。

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