【オンライン授業】ボローニャ音楽院の様子を紹介
ボローニャ音楽院は、新型コロナウイルスの影響により、2月24日から閉鎖されています。
しかし、ありがたいことに3月になるとすぐにオンライン授業が開始され、勉強を継続できています。
日本の家族や友人たちから、
「オンラインレッスンってどうやってるの?」
「何を使っているの?」
という質問を多く受けるので、記事にまとめて紹介いたします。
1週間のオンライン授業
ボローニャ音楽院はイタリアの国立音楽院のひとつです。
私は現在、ルネッサンス・バロックの歌科の修士課程・2年生に在籍しています。
まずはオンラインでどのような授業がされているのか、1週間の流れでご紹介します。
《私がオンライン授業で使っているアイテム》
・iPhone SE・・・おもに課題を写真・ビデオで撮るのに使用。
・iPad mini・・・留学前に友人から中古で買ったもの。印刷屋さんが開いていないので、楽譜を見るのに使用。
・PC・・・イタリアの格安PC(日本円にして3万円程度)
《通信環境》
・家のWi-fi(イタリアの通信会社)
《1週間の時間割》
・月曜日・・・対位法、歌、オペラ実習
・火曜日・・・イタリア語
・水曜日・・・オペラ実習
・木曜日・・・副科チェンバロ
・金曜日・・・歌
それでは、それぞれの授業をどのように行っているのか詳しく説明します。
~対位法~
《使っているアプリ・・・Skype、CamScanner、MuseScore》
※ボローニャ音楽院のオンライン授業では、Skypeを使う先生が多いです。
レッスン時間:
30分(個人)
レッスン準備:
先生に課題をレッスン前にCamScannerかMuseScoreで提出します(いずれも無料で使える便利なアプリです)。
CamScannerは、携帯の写真で撮った画像をきれいに画像やPDFにしてくれます。
こんな感じに処理されます。
課題の提出までに余裕があるときは、MuseScoreで打ち込んで提出します。
きれいな楽譜が作れるので、こちらのほうが先生に喜ばれます。
私はPCで使用していますが、iPadでも使用できます。
レッスン内容:
提出した課題の添削をしてもらったり、アドバイスをもらったりします。
メリット:
・対位法の授業に関しては、オンラインと対面でまったく変わりがありません。
・もらった課題を事前に提出しなければいけないので、学校に通っていたときよりも進みが早いです。
注意点:
・うしろにも生徒が詰まっているので、遅刻厳禁
課題は余裕をもって早く出さないと、次の生徒に迷惑がかかります。
時間にゆるいイタリアが、オンラインになるとキッチリに......
~歌~
《使っているアプリ・・・Skype》
※Skypeに問題がある生徒には、ブラウザ上で音声通話ができるウェブサイト「Jitsi」を使っている人もいます。
レッスン時間:
1時間(個人)
レッスン準備:
先生に楽譜を送ります。
楽譜は無料で使えるペトルッチ楽譜ライブラリーから探すか、CamScannerで楽譜を写真に撮って送っています。
レッスン内容:
アカペラで歌うか、事前にクラスのチェンバロ伴奏者に録音してもらった伴奏をiPhoneから流して歌います。
メリット:
・歌のレッスンに向けて、練習にやる気が出ます。
・自宅とはいえ人前で歌うので、緊張感があります。
・アドバイスをもらえます。
・発音を見てもらうのにはいいです。
ボローニャ音楽院は最初、理論のオンラインレッスンからスタートしたため、実技系は3月末からのスタートでしたが、あるのとないのでは全然違いました。
日本でも「音大の実技がオンラインなら、休学する」という人の口コミをたくさん見かけましたし、その気持ちはよくわかります。
私もそうしたかもしれません......。
ですが、気持ちの上でもクオリティを下げずに勉強を続けるためにも、プライヴェートにレッスンを続けたほうがいいと思います。
注意点:
・オンラインだと、どうしても自分と先生の音の時差が生じるので、伴奏を弾いてもらえません。
・先生が歌に合わせて指揮をしてくれても、ズレます。
・歌に集中していると先生が止めようとするのに気がつかないことも(適宜画面の先生も気にしたほうがいい)
・基本アカペラかカラオケなので、音程のコントロールが難しいです(鍵盤のそばでレッスンをして、必要なときは自分で弾きながら歌う)。
オンラインレッスンでの課題:
・誰もが音出しできる環境ではない
イタリア人のクラスメイトの中には、
「妹がふたりいて、みんなオンラインレッスンを受けているため、歌えない」
「夫が在宅ワークをしているので、彼が働いている間は歌えない」
という人たちがいます。
そういう場合には、
「歌えるときにビデオを撮っておいて、一緒に見る」
というスタイルをとっています。
これなら、歌わずに話すだけなので、ほかの家族の邪魔にはほとんどならないかと思います。
~オペラ実習~
《使っているアプリ・・・Skype》
レッスン時間:
3~4時間(団体)
レッスン準備:
先生が作成した授業内容のPDFファイルの予習・復習が必須。
宿題の提出もあり。
レッスン内容:
演技のための理論、発音、セリフ読みが中心。
メリット:
・対面よりオンラインのほうが、先生も生徒もリラックスして取り組めます。
・対面の時は授業2日前からニンニクを食べるのを禁止されていましたが、気にせず食べられます。
イタリア語がうまく話せない生徒に対してものすごく厳しい先生のため、対面のときはお説教で授業が中断してしまうことが多々ありました......(イタリア語が話せない人に演技の理論を教えられないので、先生の主張も一理あります)。
ですが、オンラインだと先生も自分の家からでリラックスできているようで、授業がスムーズです。
注意点:
人数が多いので、通信がかなり重くなりがちです。
私も授業開始直後など、何度もSkypeアプリがダウンしています。
自分のビデオはオフ、先生以外の生徒もビデオをオフにするなど協力してもらう必要があります。
ボローニャ音楽院の先生方はSkypeが主流ですが、生徒が聞くだけスタイルの座学に関しては、ほかのアプリを使うほうがいいようです。
試験:
オペラ実習の先生は、試験を今月か来月に実施したいと考えているようですが、オンライン上になりそうです。
せっかくみんなで劇の練習をしていたのですが、大人数で集まることはできないため、できなくなりました。
理論やセリフを学べても、実際に動けない、集まれないのがこの科目のデメリットです。
~イタリア語~
《使っているアプリ・・・Skype》
レッスン時間:
2時間(団体)
レッスン準備:
先生が作成した授業内容のPDFファイルの予習・復習が必須。
宿題の提出もあり。
レッスン内容:
学校が開いているときにはなかった授業ですが、外出ができずにイタリア語に触れる機会のない外国人生徒のために開講したクラス。
一から文法を説明しています。
メリット:
・イタリア語の復習になります。
・先生の質問に答えたり、チャット機能を使って文章を書いたりするので、正しいイタリア語を学べます。
注意点:
こちらもオペラ実習と同様に、人数が多いので気をつけないとSkypeがダウンしがちです。
しばらくしたら安定します。
オンライン授業を受けるだけではなく、自分でしっかり予習復習、暗記をしていかないと、進歩しません。
~副科チェンバロ~
《使っているアプリ・・・Skype、YouTube》
レッスン準備:
先生に事前に撮影した動画を送る。
動画を送るには、YouTubeの限定公開モードが便利です。
限定公開モードは、URLを知っている人しか見られないので、気軽に動画をアップできます。
レッスン内容:
先生が事前に送った動画をチェックしてくださるので、アドバイスをもらえます。
アドバイスを生かして、実際に演奏します。
メリット:
・事前にビデオを撮る必要があるので、必死に練習します。
・「ビデオを送る」という目標があるので、音楽院に通っていた時以上に練習しています。
注意点:
・家にチェンバロがないため、キーボードでレッスンを受けなければなりません。
・完璧なビデオを送ろうとしすぎて、時間をたくさん使ってしまいます......。
来週にはZoomにて、副科チェンバロの試演会が!:
来週の7日にZoomにて、副科チェンバロの生徒による試演会をやります。
※私はSkypeを希望しましたが(ほかの先生方がたまたま全員Skypeなので)、Zoomを使っている生徒が多いようです。
回線が重くなることが想定されるので、演奏する人以外のビデオを切って行う予定。
オンラインとはいえ人前で弾く以上、練習に気合が入ります......!
試演会の様子は、またレポートいたします。
Zoom試演会レポート作成しました!(2020/05/08)
~オンラインで開講できない授業も~
理論の授業がふたつまだ開講されていないのと、みんなで集まる合奏の授業はオンラインで開講できません。
みんなで音楽ができる合奏の授業は、一番好きな授業だったので残念です。
2020年で一応卒業の年なので、どうなってしまうかとても不安ですが、音楽院の先生方がたくさんの授業をしてくださっているので、前向きに勉強を続けていきます。
ボローニャ音楽院のオンライン授業の様子が、皆さんの参考になればうれしく思います。
新型コロナウイルスに負けずに、頑張っていきましょう。
筆者
イタリア特派員
望月 唯
ボローニャ在住のメゾソプラノ歌手です。ボローニャ生まれのピアニスト・マルコと一緒にボローニャの歴史や裏話を紹介します。
【記載内容について】
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