ベルリンの壁、建設から崩壊までと今
「ベルリン」と聞くと多くの人が「ベルリンの壁」という言葉を思い浮かべますが、じゃあそれは結局何だったのか?を知っている人は少ないと思います。
10月3日のドイツ統一記念日も間近ですし、今回はベルリン特派員ブログ6年目にして初(!)の、ベルリンの壁に関する記事です。
現在はベルリンで最も人気の観光スポットのひとつになっている「イーストサイドギャラリー」。現存する最長のベルリンの壁で、世界各国のアーティストがペイントを施したオープンギャラリーとなっている。
<ベルリンの壁とは?>
まず、ベルリンの壁はどこにあったのでしょうか?この図を見るとよくわかります。
*ポツダマー・プラッツにある壁に関する展示物の写真に、私が補足を書き込んでいます
そうです、壁に囲まれていたのは「西ベルリン」で、これは要するに「東ベルリン(東ドイツ)」の人たちが西側に入れないように、と建てられた壁だったのです!
では、なぜそんな壁が必要だったのでしょうか?
<ベルリンの壁が建設された理由>
第二次世界大戦後、敗戦国となったドイツは連合軍(米、英、仏、ソ連)によって占領され、東西に分断されました。首都であったベルリンはソ連統治となった東ドイツの中心に位置していましたが、同じように分断されて4か国の管理下に置かれることになったため、米、英、仏が管理する西ベルリンは東ドイツの中にぽつりと浮かぶ西ドイツの離れ小島のような位置づけになってしまったのです。
こうして西ドイツと東ドイツという2つの国家が生まれましたが、資本主義の西側と社会主義の東側の経済格差は開く一方だったので、自由な暮らしを求めて東から西へ亡命する人が後を絶ちません。実際に、1961年に壁が建設されるまでに東ドイツ市民の6分の1が西側に逃げたとのことで、「このままでは東ドイツ市民がいなくなってしまう!」と危機感を抱いた東ドイツ首脳部によって、「壁をつくって東西の人の行き来を阻む」という強硬手段がとられたのです。
最初は鉄条網によって分断された東西ベルリンの境界線は、やがて3mの高さのコンクリートでできた「ベルリンの壁」となります。東側の市民は壁に近づくことすらできないように緩衝地帯が設けられ、壁を越えて西側に逃げようとした多くの東ドイツ市民が監視の東ドイツ兵により射殺されました。
ベルナウアー通りにある、当時の緩衝地帯を再現した場所。手前がいわゆるベルリンの壁、その向こう側は幅数十メートルの更地で、監視塔から常に東ドイツ兵が東ドイツ市民を見張っていた。
<壁の崩壊>
このまま東西間の冷戦は続き、ベルリンの壁がなくなる日など来ないのではないかと思われた1985年。ソ連でゴルバチョフがペレストロイカ(立て直し)とグラスノスチ(情報公開)をスローガンとする国内改革を実施したことにより、その影響が東欧諸国にも広がりました。徐々に民主化の波が広がり、1989年には東ドイツ市民の間でもデモや民主化運動が激化。その波を抑えきれないと判断した東独首脳部の判断により、11月9日の夜に国境ゲートを開放。集まった東ドイツ市民はベルリンの壁によじ登って歓喜の声を上げました。これが、事実上のベルリンの壁の崩壊だったのです。
現在も、壁があった場所には石が埋め込まれていてどこが壁だったのかわかるようになっている。
<ベルリンの壁の現在>
壁の崩壊から約1年後の1990年10月3日に、東西ドイツは再統一を果たしました。ベルリンの壁の跡はほとんどが撤去されましたが、一部記念碑として残されており、無料で見学できるようになっています。今はドイツ人だけでなく世界中からの観光客が壁の跡地を訪れて、その激動の歴史に思いを馳せています。
ベルナウアー通りに残るオリジナルの壁
Sバーンのノードバーンホフ(Nordbahnhof)駅から北東にのびるベルナウアー通り(Bernauer Straße)一帯は、「ベルリン・ウォールメモリアル」という壁についてのあれこれを見学・学べるエリアになっていて、展示は全て無料。資料館にある展望台に上がると、前述した緩衝地帯の様子を上から見ることができます。
こちらはビジターセンター。2階で無料上映されている20分ほどのビデオは必見。壁の成り立ちや、どのように壁が作られたかなどがわかりやすくまとめられています。
壁があった場所と時代がわかるように、こんなプレートが埋め込まれている
ベルリン・ウォール・メモリアル(Berlin Wall Memorial / ドイツ語名:Gedenkstätte Berliner Mauer)
ビジターセンター住所:Bernauer Straße 119 資料館と展望台住所: Bernauer Straße 111
営業日時:10~18時 (月曜定休)
*屋外の展示や壁はいつでも自由に見学できる
限られたベルリン滞在時間で一か所だけ壁の跡を見に行くなら、私はここが一番おすすめです!イーストサイドギャラリーも時間があればぜひ。余談ですが、有料の「壁博物館(チェックポイントチャーリーハウス)」は展示がわかりにくく商業的なので個人的にはおすすめしません。
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