タイ北部「メーチャンタイ村」のアラビカ種コーヒーショップがバンコクに進出!【支援の輪を広げよう】

公開日 : 2021年09月22日
最終更新 :
筆者 : 日向みく
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サワディーカー。バンコク2特派員のぴっぴです。皆さん、近年タイコーヒーが注目を集めていることをご存じでしょうか?

今回紹介するのは2021年2月にバンコク中心部のビジネス街サトーンにオープンした「アカ・メーチャンタイ・コーヒーショップ」。タイ北部チェンライのメーチャンタイ村に暮らす少数民族「アカ族」が育てた良質なアラビカ種コーヒーを味わえる場所です。

先日私も実際に訪問してみたので、コーヒーが作られた経緯をまじえつつ、お店の雰囲気やコーヒーの味わいについてもリポートします。1杯のコーヒーができるまでのストーリーを知ると、より豊かで味わい深く感じられるはずです。

タイ北部のアラビカ種コーヒー栽培の歴史

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タイ北部のアラビカ種コーヒーの歴史は1980年代にさかのぼります。かつてタイ北部では麻薬(アヘン)の原料となるケシの花が違法で栽培され、山岳地帯に住む山岳民族のおもな収入源となっていました。故プミポン前国王は現地を訪れ、アヘンによる深刻な健康被害もふくめて事態を重くうけとめました。

タイ王室が国民のために手がける「ロイヤルプロジェクト」の一環として、アヘンに代わる新たな収入源として1988年から導入されたのが、タイ北部の涼しい気候を活かしたアラビカ種コーヒー栽培だったのです。山岳民族たちはプロジェクトの助けをかりながらコーヒー栽培のノウハウを習得していき、今では市場価値が高くハイクオリティなコーヒーを生産できるようにまでなりました。

いっぽう問題なのは、その認知がなかなか広まらないこと。ほかの商品との差別化やブランド化に苦戦するなかで、いまだ貧困からの脱却ができない地域が多くあります。もっとその名前を知ってもらい、生産農家が持続的な収益を得られるようにと始まった社会事業のひとつが、今回紹介する「アカ・メーチャンタイ・コーヒーショップ」です。

2021年2月サトーン地区にオープン!「アカ・メーチャンタイ・コーヒーショップ」を訪問

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2021年2月にオープンした「アカ・メーチャンタイ・コーヒーショップ」があるのは、バンコクのビジネス街中心部サトーンに位置するエンパイアタワーの地下1階。チェンライの山岳地帯の雰囲気をとりいれたという店内は解放感があります。

10人が座れるL字型カウンター、30人が座れるベンチソファー、高床カウンターテーブルがあり、Wi-Fiや電源・USBも完備。落ち着いて作業できるくつろぎの空間になっており、コワーキングスペースとしての利用にも最適です。

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■アカ・メーチャンタイ・コーヒーショップ

・住所: 1 South Sathorn Road, Yan Nawa, Sathorn , Bangkok 10120

    (エンパイアタワー地下1階トップス横)

・アクセス: BTSチョンノンシー駅5番出口から徒歩約5分

・営業: 月曜~土曜日 9:00~17:00(コロナの規制期間中)

・定休日: 日曜・祝日

この店で販売されているのは、タイ北部チェンライに位置する「メーチャンタイ村」という220人ほどの小さな村に暮らす少数民族「アカ族」が栽培したアラビカ種コーヒー。この店の出店は、メーチャンタイ村のコーヒー生産者組合と日本のNPO団体が共同ではじめた社会事業です。

タイ産のアラビカコーヒーで「メーチャンタイ村」の豆のみを使ったのはこの店が初めてとのこと。

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SDGsの課題「貧困解消」のモデル事業に選ばれた「メーチャンタイ村」

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もともとこの事業が始まった経緯として、近年注目されるSDGsの課題である「貧困解消」や「格差是正」の達成に向け、東南アジアでもっとも貧しい人々の割合が多い山岳地帯の少数民族に焦点があてられるようになってきた、という背景があります。

そうしたなかで、日本のNPO団体 アジア自立支援機構(GIAPSA)がタイ北部に暮らす山岳民族の支援事業を始めたのです。この事業は2018年に始まり、チェンライのアカ族の村「メーチャンタイ村」が選ばれました。村人たちはコーヒー栽培技術を学び、3年でようやくコーヒー豆の生産・脱穀・焙煎などができるようになりました。

タイ全国の品評会で賞を獲得。専門家にも評価されるたしかな品質

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メーチャンタイ村産のアラビカコーヒーは風味豊かでコクがあり、専門家のあいだでも市場価値が高く評価されるまでになりました。2020年に開催されたタイ全国のコーヒー豆の品評会では3位入賞を果たし、そのクオリティの高さが確証されています。

メーチャンタイ村に設置したコーヒー豆の加工センターが本格的に稼動し、村人たち自身で焙煎までできるようにもなり、このプロジェクトの試験的な第1期のフェーズは2020年半ばに終了しました。

認知が広まらず貧困脱却に苦戦。持続的な収入向上に向けバンコクに店を出店

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次に立ちはだかる大きな課題が「認知を広げ、持続的な収入向上につなげること」です。

メーチャンタイ村では道路・電気・通信などのインフラ整備が遅れ、公共交通機関や市場へのアクセスも悪いため、生産農家がコーヒー豆の生産から得られる収益は限られてしまっています。さらに仲買人に安く買い取られたり他の地域の豆と混合されたりして、「メーチャンタイコーヒー」のブランド化や差別化にも苦戦。

高品質なコーヒー豆を生産できるようになったにもかかわらず、メーチャンタイ村の住民の多くはいまだ貧困から脱却できないままなのです。

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アジア自立支援機構(GIAPSA)の設立者である小沼さんは、メーチャンタイ村の生産者組合と話し合いを重ね、コロナ渦ではありますが「バンコクの人にもメーチャンタイのコーヒーを知ってもらいたい」という想いでバンコク出店を決めました。コーヒー豆の生産・焙煎・販売を一貫しておこなうことになります。

小沼さんは国連で35年勤務し、タイでも20年以上活動されています。「自分がこれまでにいただいた報酬を、世界で援助を必要としている人のために役立てたい」ということで、小沼さん自身の資金をつぎこみ今回の出店を実現しているのだそう。

コーヒーショップの収益の半分はメーチャンタイ村の経済や社会福祉事業にあて、残り半分はタイのSDGsの取り組みにおけるそのほかの支援活動にあてることを目指しています。これらに利益を還元できるかどうかは、メーチャンタイ村のコーヒーの認知をどれだけ広げられるかにかかっています。

コクのある風味豊かなメーチャンタイ村のアラビカコーヒーを味わう

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それでは私も実際にコーヒーを飲んでみます。コーヒーの種類はアメリカン(90バーツ~)、ドリップコーヒー(100バーツ~)、エスプレッソ(90バーツ~)、カフェラテ(100バーツ~)、カプチーノ(100バーツ~)、クラシックチョコレート(100バーツ~)など。悩むなぁ。

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15バーツでショットの追加やホイップクリームなどのトッピングもできます。

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悩んだすえ、店員さんおすすめのドリップコーヒーを頼むことに。ドリップコーヒーにもいろいろと種類があり、加工法は「ウォッシュト製法」「ナチュラル製法」「ハニー製法」、焙煎度合いは「ライトロースト」「ミディアムライトロースト」「ミディアムロースト」「ダークロースト」などから選ぶことができます。

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私は「ナチュラル製法・ライトロースト・Mサイズのホット(110バーツ)」を注文しました。コロナ対策のため、9月時点ではカップでの提供になります。2枚のバタークッキーもつけてくれてうれしい。

コーヒーをいただくと口当たり軽くフルーティー、風味豊かな味わいでとてもおいしいです。ロックダウンの規制で8月末まで2ヵ月ものあいだ店内飲食が禁止されていたので、久々にお店でコーヒーを飲める幸せをかみしめました。

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こちらでメーチャンタイ村のコーヒーを購入することもできます。ステイホーム中に、北タイのアラビカコーヒーを淹れる時間を取り入れてみるのも楽しそうですね。

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かわいい食器が陳列されているスペースもあり、店内購入が可能です。

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バンコク最大のスラム「クロントゥーイ」発のブランド FEEMUE (フィームー)のバッグなどもこちらで購入できます。このブランドの売上金は、クロントゥーイ・スラムを長きにわたって支援し続けているNGO団体「シーカー・アジア財団」の運営費にあてられるとのこと。

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私が訪問した9月3日の時点では、規制緩和してすぐの時期ということもあって、コーヒーショップには私以外の客はおらず貸し切り状態でした。店員さんに状況をたずねると「コロナ禍でのオープンや営業規制で、なかなかお客さんにきてもらえず厳しい」とのこと。

コーヒーショップの運営が少しずつ軌道にのればその売り上げを支援活動に還元でき、メーチャンタイ村の人々の暮らしが楽になるので、なんとかうまくいってほしいです。

まとめ

北タイのメーチャンタイ村に暮らすアカ族が栽培した、高品質でおいしいアラビカコーヒー。このコーヒーショップを通じて私たちも支援活動に気軽に参加できるすてきな事業だと思ったので、少しでも認知が広まればという思いで今回記事に書かせていただきました。

場所もバンコク中心部でアクセスがいいですし、タイ在住者の方は同じコーヒーを飲むならぜひこちらのショップに立ち寄ってみてはいかがでしょうか? メーチャンタイ村に想いを馳せながらコーヒーを堪能するのも心豊かな時間でしょう。

日本にお住まいの方も現在はコロナの影響で自由に旅行ができませんが、事態が収束してタイ旅行ができるようになったら、ぜひ北タイのアラビカコーヒーを味わってみてくださいね。それでは皆様、また次回の記事でお会いしましょう!

筆者

タイ特派員

日向みく

バンコク在住ライター。中南米やアフリカ、中東を含む世界43ヵ国を訪れた旅好きです。

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