【メリーランド州ボルチモア】廃墟マニア向け?老舗デパートの跡地探訪

公開日 : 2022年01月04日
最終更新 :

アメリカのデパートで広く名前が知られているのは、感謝祭パレードで有名なメイシーズ(Macy's)がありますが、ボルチモアにもかつて132年の歴史を誇り、"ボルチモアの文化発信"的な役割をしていた、ハツラーデパート(Hutzler's Department Store)がありました。創業地に今も残る、旧ハツラーデパートの現在の様子を見てきました。

ハツラーデパートは1858年にユダヤ系ドイツ人のハツラー親子が開業した乾物屋が起源で、ボルチモアの当時の中心地、ハワード通りHoward Streetにありました。20世紀初頭までには、ボルチモアの代表的な百貨店として繁栄を築いていきました。ハツラーの栄華を示す、象徴的な例の一つが、1888年に建てられた「パレス(宮殿)」と呼ばれた、ロマネスク建築(壁が厚く半円アーチの窓などの特徴)の大理石五階建て店舗があります。この建築物は米国内務省・公園局によって国家歴史登録材National Register of Historic Places(文化遺産) に登録されています。

1888年に建てられた"パレス"と呼ばれた店舗の正面外観
1888年に建てられた"パレス"と呼ばれた店舗の正面外観

1932年にはパレスの隣に幾何学や曲線を基調としたアールデコ調のビルが増築され、ボルチモア初のエスカレーターが設置されるなど、ハツラーはボルチモアの顔として繁栄のピークを迎え、"買い物するならハツラーへ行く"とまで言われていたそうです。当時のハワード通りはボルチモアで一番のショッピング街でもありました。1930年代~1950年代頃までは多くの女性たちが帽子と手袋を着用し、路面電車に乗ってハツラーデパート内のレストランやカフェテラスへ出掛けていたそうです。当時、ハツラーデパートはボルチモア市内、郊外を中心に、メリーランド州内に最大時には10店舗を構えていました。


1960年代ごろから80年代にかけて、ボルチモア市内から郊外へ移転する人々や企業が相次ぎ、町の景観や治安も大きく変容していきました。130年を超える歴史を誇り、高品質の商品を売りにしていたハツラーデパートの経営も、拡張路線の失敗などの影響もあり1980年代後半には悪化に傾き、1990年初めに全店舗閉鎖、会社も閉業となってしまいました。

1932年に増築された店舗の入り口は、アールデコ調の外壁デザイン
1932年に増築された店舗の入り口は、アールデコ調の外壁デザイン
1932年の増築部分
1932年の増築部分

ハツラーデパートの閉店から既に30年を経過していますが、市当局も港側(インナーハーバー)の開発に注力してきた経緯で、デパートの建物は現在も解体されることなくそのまま残され、同じブロックの商業施設もほとんどが閉鎖されております。ダウンタウンの真ん中にあり、かつての一等地であった一角がまるでゴーストタウンのようになっていました。跡地を利用した再開発の目途はいまだ立っていないようです。

旧店舗の前は今もライトレールが走っていてアクセスは便利
旧店舗の前は今もライトレールが走っていてアクセスは便利
旧ハツラーデパート(Hutzler Brothers Palace Building)
住所
210-218 N. Howard Street, Baltimore, MD
アクセス
MTA Lightrail Lexinton Street 駅下車すぐ
※建物内部への立ち入りはできません。
※周囲の治安はあまり良くありません。夜間や一人での行動は控えることをお勧めします。

筆者

アメリカ・メリーランド州特派員

ベスト加島 聡子

神奈川県出身で、在米20数年になります。現在メリーランド州北東部の町で、家庭菜園とクラフトアートを楽しんでおります。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。