第5回 フランスと日本をつなぐ人びと 作家 レオ・ガントレ さん Monsieur Léo Gantelet
今回は、四国の八十八箇所巡りをしてその経験を本として出版されたレオ・ガントレさんLéo GANTELETにお会いしました。
レオさんは、もともとはビジネスマンで、現在約12000人を雇用するまでに成長した大きなIT関連の会社を立ち上げました。ところが、44歳の時、ビジネスを離れることを決意。24時間仕事に追われ利益を追求する生活に別れを告げ、真の人生の豊かさを追求すべく、芸術活動、本の執筆、詩作(レオさんは俳人でもあります)などに専念し始めました。
その中で、精神的な世界に身を置くため、1999年に世界の三大巡礼地の一つであるスペインのサン・ジャック・コンポステルSt. Jacques Compostelleへの巡礼を実行(*1)。フランスを東から西へ横切り、ピレネー山脈を越え、距離約1900kmの巡礼を3ヶ月かけて歩いたそうです。この経験は2003年に本となりました。巡礼中に自身が考えたことなどを「En si bon Chemin ...vers Compostelle 」に綴っておられます。
その後、サン・ジャック・コンポステル巡礼経験者のための雑誌で、ある記事がレオさんの目に留まりました。日本語を学び日本の四国という地で巡礼をすることを決意したある医師によって書かれた記事でした。以前から日本に関心を持っていたレオさんは、早速この医師に連絡。2006年秋に四国巡礼を開始すべく日本の地を踏みました。
東京、京都などをご家族と旅行した後、単独で巡礼を開始、1400kmの道のりを50日かけて歩き、八十八箇所を巡られました。遍路ではお遍路さんの服装で、朱印帳も携えて回られたそうです。巡礼中、外国人はレオさん一人。ひたすら歩き続けることによって自分と向き合い自分と語る日々だったそうです。
この四国巡礼の道のりとレオさんのご自分との対話は、著作「Shikoku - les 88 temples de la Sagesse(仮邦題: 四国、知恵の八十八の寺-私の歩いた日本のコンポステーラ)」に書かれています。(現在、同書を日本語訳するために関係者との作業を進めているそうです)この中で、聖人(聖ヤコブと弘法大師)の教えに考えをめぐらせながら「道を歩くこと」について四国巡礼とサン・ジャック・コンポステルの間に多くの共通点を見出すとともに、さまざまな違いにも言及されています。例えば、サン・ジャック・コンポステルが一つの目的地に向かって歩くことに対し、四国巡礼では円を描くようにして巡礼路があり途中に88箇所に立ち寄ります。レオさんは仏教の輪廻転生の考え方にこの遍路を重ねました。さらにサン・ジャック・コンポステルでは巡礼を完了した際に証書が授けられ儀式が行われますが、四国巡礼の終了にあたっては特に儀式も行われないシンプルさなど、巡礼を終えた時の感慨も違ったものだったそうです。
レオさんの旅はこれで終わりではありません。最近、第三の道を確立されました。それはご自宅の庭園にあり、30点の彫刻を辿りながら歩く野外美術館となっています。そのうちの一つは四国遍路の道しるべです。この私設野外美術館「Le Chemin Ideal(理想の道)」は日時を決めて一般公開されています。
第二の人生において確立されたこれら三つの道。レオさんにとって全ての道に共通している点は、常に思索を続け自分の哲学を追及し続けるというところにあるそうです。
また、レオさんは7月にパリで行われたジャパン・エキスポでも四国巡礼の経験を基に講演をされました。今後もフランス国内各地で四国巡礼の体験を公演して回られる予定です(予定の詳細は記事の最後)。
フランス人であるレオさんが日本で体験した巡礼は、すでに多くの人の共感を呼び、レオさんの本を読んで、実際に四国巡礼に出かけた方もいるそうです。これからもいろいろな人をフランスから日本へと、日本からフランスへと、つなげていくことでしょう。
(*1)サン・ジャック・コンポステル(スペイン語:サンティアゴ・デ・コンポステラ)
スペインの北西部ガリシアにある、聖ヤコブ(フランス語でサン・ジャックSaint-Jacques)が葬られているとされる場所。10世紀ごろから巡礼の最終目的地として訪れられ、今では年間10万人を越える人々がこの巡礼の道をたどっているそうです。フランス国内からは4つのルートがあります。パリの14区サン・ジャック大通りから始まるトゥールの道Chemin de Tours、ブルゴーニュ地方ヴェズレVezleyに始まるリモージュの道Chemin de Limoges、南仏のアルルArlesから始まるトゥールーズの道Chemin de Toulouse、そしてロワール地方のル・ピュイ・アン・ヴレLe Puy-en-Velayに始まるル・ピュイの道Chemin de Le Puyです。これらの道は1998年にユネスコの世界遺産に指定されました。日本からは約800人がこの巡礼道を訪れるそうです。
======================
〈レオさん著作〉
• Unique Langage, Stocchiero éditrice, 1991
• Pourquoi, éditions du Choucas, 1997
• Dis-moi, Lac..., éditions de l'Astronome, 2004
• Une traduction d'un poème (1000 vers) de l'Anglais Alfred Tennyson : Enoch Arden, éditions Sauvagine, 1993
• Livre illustré de photos sur la Haute-Savoie, Légendes des Sommets, éditions Rossat Mignod, 1995.
• En si bon chemin... Vers Compostelle, Lepère éditions - 2003.
• Chevaux de légende, éditions du Mont, 2005.
• Perles d'océan (roman), éditions de l'Astronome, 2007.
Shikoku, les 88 Temples de la Sagesse, 2008.
〈ブログ・アドレス〉
http://xgantelet.over-blog.com/
〈今後の講演予定〉
(場所・時間の詳細についてはウェブサイトをご覧ください)
10月8日 Thonon-les-bains
11月17日 Annemasse
11月26日 Digne-les-bains
11月30日 Annecy
〈野外美術館「Le Chemin Ideal」の次回公開予定日〉
日時 9月18-19日 午前10時-12時、午後2時半-6時半
(9月17日までに予約が必要です)
料金 1人4ユーロ
住所 8 Route de Emognes、74600、Seynod
電話番号 +33-(0)450691541
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。