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フランスと日本をつなぐ人びと 第2回 チーズ職人 山口潮久さん

カテゴリー:ショッピング・雑貨・お土産 / レストラン・料理・食材 / 旅行・ツアー・ホテル / 生活・習慣・マナー / 見所・観光・定番スポット 投稿日:2010年5月16日

インタビューの第2回目は、オート・サヴォア県でチーズ作りを行っている山口潮久(やまぐち みちひさ)さんのご紹介です。山口さんの職場は、レ・ジェLes Gets にあるフルティエ・デ・ペリエルFruitière des Perrières 。レ・ジェは、アヌシーから北東のスイス国境に向けて70kmほどの距離にあり、標高約1,100m、居住人口約1,200人ほどのスキー場の村です。ここに、2009年の2月から働いていらっしゃいます。実際にチーズ製造所を訪問し、お話を伺いました。

fruitier%20de%20perriere.JPGフルティエ・デ・ペリエル

山口さんの一日は、朝6時半の出勤・その日のチーズ製造準備に始まり、7時半にその日に届けられる牛乳(もちろんとれたての無加工の牛の乳です)を受け取ります。今朝受け取った牛乳は390リットル。この日はアボンダンスAOCの製造過程を見せていただきました(AOCチーズについては*2を参照)。牛乳に酵素を加え、加熱、撹拌(かくはん)し、10時ごろから型入れの作業に入ります(*1)。そして午後は午前中作ったチーズの反転作業や熟成庫でのチーズ管理。チーズの種類にもよりますが、熟成庫に入れて店頭で販売されるまでに、短いもので15日以上、長いものでは1年はかかります。この間も牛が乳を出す限り、つまり1年中チーズ作りは休まることはありません。山口さんの週の休みは日曜日だけですが、お店のオーナーのピエールさんからも「ミチはとっても働き者」という太鼓判つきの勤勉さです。

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(左)加熱・撹拌された牛乳からチーズの素となる「カード」という部分を掬い出す作業。
(右)すくったチーズを型に入れます。

フルティエ・デ・ペリエルは、チーズ製造所の他にレストランと売店が併設されれいます。レストランは夏(7−8月)と冬(12−3月)の夜に営業され、サヴォア地方のチーズ料理を楽しむことができます。また、製造所では私が見せていただいたのと同様のチーズ製造過程を見学することができます(日本語の問い合わせ先はこの記事の最後)。この冬にはスキー教室で村に滞在している小学生合計900人の見学を受け入れたそうです。

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(左)こちらはレストラン。夏と冬の夜のみオープン。
(右)山口さんが働いているチーズ製造所。レストランと売店に隣接。

その山口さんは(私にとっては)意外にも東京のご出身で、高校のころから酪農家に憧れていたそうです。一方、15歳から自転車競技を始めた山口さんは、毎年欠かさずにテレビでツール・ド・フランス を見ていました。そのうちにフランスの風景や地名などに自然と親しむようになり、すでにこの頃から山口さんのフランスのイメージは、アルプス、自転車などでした。大学では国文学を専攻後、3年半の会社勤めを経て、2002年日本を離れることを決意。行き先は、迷わずにフランスでした。語学留学生として滞在した後、肉牛農家にて2年間研修。この間にアルパージュAlpage(夏季に高山で放牧・搾乳をしチーズ生産すること)を経験しチーズ作りの面白さを実感。その後フランス国立酪農・畜産学校Ecole Nationale des Industries du Lait et des Viandes‎ に入学、チーズ製造を学びました。2007年卒業後すぐはサヴォア県で農協経営のチーズ工房で勤務され、1年半後の2009年に現在の職場に来られました。


山口さんがサヴォア地方を選んだ理由は、より伝統的で本質的な酪農形態と乳加工を行っている地方だから、という点にありました。例えばサヴォア地方では、全てのAOC(原産地呼称統制)チーズは、絞られたままの無殺菌乳による製造が義務付けられていて、これにより酪農家もチーズ職人もより一層衛生管理への配慮が求められます(*2)。こういった、不要な手間・材料を加えずに昔ながらの仕事のやり方を守っていこうとするサヴォア地方のポリシーや、伝統維持・地方特色の保護に対するサヴォア地方の姿勢にも山口さんは強く共感を覚え、サヴォア地方を選んだとのことです。


そうしてフランスのチーズ職人の道を選んだ山口さんですが、「チーズ作りは五感の勝負。日々複数のチーズを作っていても、それぞれのレシピを『理解した』と言えるにはまだまだ時間が必要」と感じておられ、当分は今の職場で経験を積んでいきたい、とのこと。さらに、「私のチーズを日本でも食べていただけるようになったり、日本人旅行者の方々が私の職場を訪れてくれるようになると、ますます仕事は楽しくなります。こちらにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。」とのメッセージでした。

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インタビュー中の山口さん

パリや南仏に比べると日本人旅行者の少ないオート・サヴォア県ですが、その魅力について、山口さんはこう語ります。「街や歴史的建造物も魅力のあるフランスですが、『農業大国』としてのフランスを自然・風景や特産物、郷土料理といった観点からも見ることができます。特にオート・サヴォアの豊かな自然と雄大な山々では、冬はスキー、夏は放牧された牛たちを見ながらのハイキング、夜は地元産のチーズとワイン、といったこの地方ならではの楽しみ方ができます。訪れた方々もそういった経験をすることで、これまでと違ったフランスが必ず発見できるはずです。」


チーズ作りに対する山口さんの真摯な姿勢と、妥協をしないプロとしての取り組みがとても印象的でした。これからも素晴らしいチーズを追求し作り続けていかれることでしょう。皆さんもぜひフルティエ・デ・ペリエルまで足を運んでみられてください。

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おいしいチーズになるまでの熟成庫。

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(*1) 酵素は牛乳を固めるために入れるもので、その後固まった牛乳を裁断して過熱するそうです。
(*2)サヴォア地方(オート・サヴォア県とサヴォア県)には6種類のAOCチーズ(ボーフォーBeaufort、トム・デ・ボージュTomme des Bauges、シュヴロテンChevrotain、グィエル・ド・サヴォアGuyere de Savoie、ロブロションReblochon、アボンダンスAbondande)、2種類のIGP(地理的表示保護:Indication Géographique Protégée )チーズ(トム・ド・サヴォアTomme de Savoie、エメンタル・ド・サヴォアEmmental de Savoie)があります。

<フルティエ・デ・ペリエル>
住所    137 Les Perrieres、74 260 Les Gets
電話番号  +33 (0)4 50 79 70 04 (売店)、 +33 (0)4 50 79 89 22 (レストラン)
Eメール   m.pelvat@fruitiere-lesgets.com (仏語対応)
       fromager_japonais@yahoo.co.jp 〈日本語対応〉
ウェブサイト www.fruitiere-lesgets.com/
使用可能クレジット・カード    VISA及びマスター
開店期間 チーズ直売店    月-土  8:00-12:00, 15:00-19:00 
                   日曜 8:00-12:00, 17:00-19:00
レストラン      夏(7−8月)と冬(12−3月)の19:00-23:00 (月曜休日)
チーズ製造見学  毎週水曜午前中 (詳細は電話またはメールで直接お問い合わせください) 

≪行き方≫
● スイス・ジュネーブ国際空港から
車の場合:高速でフランス方面に向かい、フランスの高速A40に入る。Chamonix-Mt.Blanc方面に行きCluseの出口で下りる。あとは県道902号線(D902)に沿ってTaningesを通りLetGetsに向かう。所要時間約1時間15分。
バス:スキーシーズンの場合は www.altibus.com (Tel : 00 33 479 683 296 )
鉄道:ジュネーブのEaux-vive駅から最寄のクルーズCluses駅まで約1時間。
● アヌシー市内から
車:高速A41から途中A410に入り、A40に合流する。Chamonix-Mt.Blanc方面に向かいCluseの出口で下りる。あとは県道902号線(D902)に沿ってTaningesを通りLetGetsに向かう。所要時間約1時間。
鉄道:クルーズまでチケットを買うと、ラ・ロッシュ・シュル・フォロンLa Roche sur Foron駅までSNCFの高速バスが出ていて、そこでCluses 行きの列車に乗り換えられるようになっている。所要時間約2時間。

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西岡 佐知子

フランス・旧アヌシー特派員の西岡 佐知子が現地からヨーロッパ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

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名前:西岡 佐知子

西岡 佐知子

昨年よりフランス在住。途上国における開発協力を仕事とし、オランダで開発学修士を取得した後、アフリカやアジアに滞在。滞在先で出会ったフランス人の夫のジュネーブ転勤に伴ってスイス国境沿いのオート・サヴォアに転居してきた。アルプスの見える家に住み、自然に囲まれたフランスの田舎暮らしに適応中の日々。都会とはまた違ったナチュラルなフランス南東部の魅力を紹介していく。

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