昔の酒造りの道具が凄い「温故伝承館」

公開日 : 2018年03月05日
最終更新 :
筆者 : 麻巳子

温故伝承館(おんこでんしょうかん)は、創業慶応2年の名手酒造店が所蔵する日本酒製造器具、道具類、営業諸資料、蔵人・蔵元の生活用具類を整理、展示した施設です。

前回に続いて今回はメインであるお酒造りの道具の紹介です。

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昔の酒造りを伝える資料館

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名手酒造(なてしゅぞう)さんの資料館「温故伝承館(おんこでんしょうかん)」の奥に、しめ縄が張られた入口があります。

ここから神聖な場所だと思わされます。

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中へ入るとこちらにも多くの古い道具が展示されています。

ここでは昔ながらのお酒造りの工程が道具と共に紹介されています。

1~8番まであり順番に見て行きました。

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1・米搗(こめつき)

大きな水車のようなものが足踏み式の精米機です。

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米搗きの杵と臼です。

本来は十臼ほど並び、それを一人で踏んで回していたそうですよ。

大変な労力ですね。

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稲の見本が展示されています。

左が山田錦で最高の酒米です。

右は普通のお米です。

見比べてみると稲の違いがよく分かります。

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2・洗場(あらいば)です。(水汲み・洗米・浸漬・水切り)

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こちらに「黒牛の井戸」があります。

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3・釜場です。(甑置き・検蒸・甑取り)

大きな甑(こしき)は酒米を蒸す道具です。

甑は大きな蒸籠のようなものだそうですよ。

画像では分かりにくいのですが、和釜がありその上に甑が乗せられています。

この甑を洗うのも大変だなと思うのですが、ひとつの酒づくりのシーズンの米の蒸し作業の終わりを迎えると造りも一段落なのだそう。

このときに甑を横に倒し洗うことから「甑倒し」といい、蔵ではお祝いをするそうですよ。

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甑のそばに煉瓦で囲われた深い空間があって気になります。

薪も置いてあり、これで薪をくべたのだと思うけれど、どんな風に使われたのかなと思います。

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4と5は階段を上った2階になります。

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2階の通路を通って4番の麹室(こうじむろ)へ。

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下が見えます。

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上から見ても大きくて深い桶ですね。

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4・麹室(こうじむろ)です。

復元された麹室ですが、普通だとなかなか入れない場所だと思うので、特別な部屋のような感じがします。

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麹室の中はそれほど広い場所ではなく、閉ざされた空間という感じです。

莚(むしろ)と竹で三重の壁をつくり、中2尺~3尺(60㎝~90㎝)の間にもみ殻を入れているそうです。

天井も床下も同様にして作られており、これで保温室となっています。

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蒸米に「もやし(種麹)」をかけて、肌莚(はだむしろ)をかぶせて、さらに莚を何重にも重ねて保温されます。

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棚の上には麹蓋がズラリ。

積み上げられた麹蓋の中で麹が成熟していくそうです。

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5・酛場(もとば)です。

麹室の向かい側にある部屋で、お酒を作るもと(酵母)を沢山に培養する製造場です。

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画像の酛卸(もとおろし)や酛半切などといった道具が、屋根裏部屋のようなスペースに並んでいます。

もとづくりの際、蔵人たちは櫂を摺るタイミングを合わせるために唄をうたいながら作業されたとHPにありました。

どんな唄なのかは実際に聞いたことが無いので分からないけれど、唄う姿と唄声のイメージが広がります。

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6・仕込(しこみ)

お酒の「もろみ」を仕込むところです。

大きな桶に凄いと驚きます。

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7・槽場(ふなば)

発酵を終えた原酒を酒袋に入れて搾り清酒と酒粕に搾り分けるところです。

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古い歴史のある石掛式(いしかけしき)だそうです。

石をぶら下げて梃子(てこ)の原理で搾るのですが、本当に昔ながらのやり方という感じですね!

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酒槽(さかふね)・男柱(おとこばしら)・締木(しめぎ)・掛石(かけいし)からなっています。

大盤・中盤・小盤とお酒を搾るためのおもりもあります。

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そばにあるこちらの木が男柱の原木です。

木の種類は欅(けやき)で半分は土中だそうですよ。

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男柱から伸びる絞木がとっても長いです!

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待桶(まちおけ)の両脇にある桶の名前がユニークですね。

こちらは「狐(きつね)」です。

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こちらは「狸(たぬき)」です。

どちらも待桶のもろみを三味線で汲んで「狐」と「狸」に入れた酒袋に詰めたようです。

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こちらには「猫(ねこ)」があります。

踏み台のことです。

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「蛙(かえる)」

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「うどん屋」なんていう名前もあります。

作業台で、移動する時にかついた姿が夜なきうどんを思わせることからだそうです。

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清酒は酒槽から出て、ヨダレカケ・スイノを通って垂壺(たれつぼ)に入ります。

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酒袋が吊るされていますが、酒袋に残った粕が板粕となります。

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壁面には桶がずらり。

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検酒瓶の棚といった小さな道具などもたくさん展示されています。

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8・詰口(つめくち)です。

圍桶(かこいおけ)より樽詰(たるづめ)することを詰口というそうです。

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圍桶も大樽です。

このように温故伝承館では多くの古い酒造りの道具が展示されており、その収蔵品の数の多さに驚きます。

展示のみで実際にここで作業は行われていませんが、説明板が設置されていますので道具と説明を照らし合わせながら見学されると作業工程が分かりやすいと思います。

今回紹介させていただいたのはほんの一部なので、もっと詳しく道具を見たい方、詳しいお酒造りの説明を知りたい方はぜひ訪れてみてくださいね。

<温故伝承館 (名手酒造店)>

・住所 和歌山県海南市黒江846

・電話番号 073-482-0005、休日の直通電話 073-482-1115

・利用時間 10:00~17:00

・観覧料 一般400円、小・中学生 100円 (※受付は黒牛茶屋です)

・交通

*JR黒江駅から徒歩約12分

*阪和自動車道 海南ICより約5分

・駐車場 乗用車20台

・温故伝承館HP http://www.kuroushi.com/onko/

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