県内初登録!「小田井用水路」と「龍之渡井」
小田井用水路(おだいようすいろ)が、県内で初めて「世界かんがい施設遺産」に登録が決定しました!
これを機に、以前から気になっていた紀の川市にある「龍之渡井(たつのとい)」を訪れてみました。
国道480号線沿いの小さな広場に説明板などが設置されていてすぐ分かりました。
「世界かんがい遺産」とは?
かんがいの歴史・発展を明らかにし、理解醸成を図るとともに、かんがい施設の適切な保全に資するために、歴史的なかんがい施設を国際かんがい排水委員会(ICID)が認定・登録する制度で、2014年に創設されました。
http://www.maff.go.jp/j/nousin/kaigai/ICID/his/his.html
徳川吉宗が命令した「小田井用水路」
小田井用水路は、紀の川(和歌山県橋本市高野口町)から取水し、紀の川右岸の河岸段丘の水田へかんがい用水を供給する用水路です。
橋本市からかつらぎ町、紀の川市、岩出市の根来川まで延長32.5㎞に及ぶ用水路で、これにより約1000haの水田が生まれました。
小田井用水路ができるまでこの地域のかんがいは、北の大阪と和歌山の府県境となる和泉山脈から流れる沢水やため池により行われていましたが、常に水不足に悩まされていました。
江戸時代に紀州5代藩主・徳川吉宗(後の8代将軍)の命令で、現在の橋本市出身の土木技師・大畑才蔵の指揮により小田井用水を開削し、宝永7年(1710)に完成しました。
当時、紀州藩は財政がきびしく、打開策として水田開発のために用水の確保をしたようです。
煉瓦造りのレトロな龍之渡井
広場から柵越しに穴伏川を(あなぶしがわ)を渡る「龍之渡井」が見えました。
渡井(とい)というのは川に架ける水路の橋(水路橋)です。
これは、標高が高く紀の川から水を引けない高台にも水を運ぶために架けられました。
当初は木製橋で、18m余りの川幅を両岸の岩盤を利用して支え、中間に1本の支柱も使わずに木製の掛樋(かけひ)を通したことで知られています。
現在は、大正8年(1919)に改修されたレンガ造・石張り造りのアーチ橋です。
上部盛土部に三和土(土・石灰・ニガリの混合物)を用いられており、表面は自然石で覆われています。
平成18年(2006)3月に登録有形文化財(文化庁)となりました。
歴史を感じるレトロな橋で素敵です。
小田井用水は紀の川に平行して、紀の川の右岸の同じ高さ(等高線)を巡るように開削されたため、途中にいくつもの河川や谷間があり難工事でしたが、渡井や伏越(ふせこし:サイホン)による立体交差で克服しています。
その中でも一番苦心したのは、谷が深いこの穴伏川の谷を渡る龍之渡井の工事だったようです。
開削後、橋の上には300年経った今でも水が流れています。
水路沿いに歩道があったので、広場から歩いて橋の上を渡ることができました。
歩いていると、京都の哲学の道やインクライン、水路閣を思い出しました。
小田井用水も農林水産省選定の「疎水百選」に選ばれています。
橋の上から見た風景は、静かでとてものどかな風景でした。
橋を渡ると先は隧道があり、その先までは分かりませんでした。
隧道銘板(ずいどうめいばん)には、『水徳無盡(すいとくむじん)』とあり水が勢いよく出ていました。
そばには水門や説明板、龍之渡井憩いの広場ありました。
周辺には「青洲の里」など見どころがあるので、広場は訪ね歩いた際の休憩にもぴったりですね。
広場にはベンチが置かれています。
訪れる人も無くベンチに座って川の流れを聞いていると、哲学者の西田幾多郎のように思索にふけられそうでした。
小ぶりながら紅葉の木も何本かあり、赤く色づいていてきれいでした。
近くにこんな場所があったら散歩にいいのになと思います。
世界かんがい施設遺産に登録が決定された理由
小田井用水路は高台に水を運ぶために随所に凝らされた工夫が高く評価されました。
当時、最先端の技術である水路を河川上に通す「渡井」や、川の下に用水路を通す「水門」と呼ばれるトンネルの採用。
現在の測定精度と遜色のない「水盛台(みずもりだい:水を注いで地面の斜度を計る道具)」と呼ばれる才蔵さんが独自に作り出した水準器を用いて、緩い傾斜でも水が流れるように精度の高い測量が行われたこと。
国の登録有形文化財に指定されたことなどがICIDの高い評価を受け登録が決定されました。
他にも小田井用水路には木積川渡井(こづみがわとい:紀の川市)や小庭谷川渡井(こにわたにがわとい:かつらぎ町)、中谷川水門(なかたにがわすいもん:かつらぎ町)があり、共に県内の土木構造物では初めて国の登録有形文化財に指定されています。
大畑才蔵の功績と、豊かな農地に変えた小田井用水路を、遺産登録されたのを機に多くの方に知っていただきたいですね。
<龍之渡井(たつのとい)>
・所在地 和歌山県紀の川市西の山・伊都郡かつらぎ町高田の境
・アクセス JR和歌山線西笠田駅から徒歩10分
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。