No.490フランス、夏・冬時間廃止後のタイムゾーンの行方

公開日 : 2019年03月24日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

No.482にも書いたように、今週末2019年3月30日(土)と31日(日)の間に、ヨーロッパでは、冬時間から夏時間への切り替えがされます。

夏時間になる時は、時刻を進めることになるので、夜中の2時が3時となります。つまり、いつもと同じ時間に起きるとすれば、睡眠時間が一時間減るわけです。

482.jpgのサムネイル画像

ところで、上述のNo.482に書いたように、2018年夏のヨーロッパでの調査を経て、同年9月、欧州委員会は、「夏時間/冬時間の切り替えは廃止するべき」と明言。そのうえで、通年使うタイムゾーンは各国が選ぶべしとしました。

それを受け、フランスでは、今月頭まで、国民にアンケート調査が行われました。210万人が回答したというこのアンケート結果は次の通り。

・回答したフランス人のうち83.71%が、夏時間/冬時間の切り替え廃止に賛成。

・どのタイムゾーンを選ぶかという質問には、59.17%が夏時間、と返答。

とはいえ、この結果に危機感を抱く専門家も少なくありません。

例えば、フランス国立保健医学研究所リヨン研究所所長である神経生物学者クロード・グロンフィエ(Claude Gronfier)氏は、20Minutes紙のインタビューに答え、夏時間の通年適用がいかに心身に悪影響を及ぼすかを説明しています。

一言でいえば、太陽の巡る時間により合っているのは冬時間なので、そちらの方が、心身への負担も少ないというのがその理由です。

統計データをまとめているStatista も、下のようなグラフィックを公開しています。これは、夏時間を適用した場合、それぞれの都市で12月21日の日の出と日の入り時間が何時になるかを明らかにしたものです。

これを見ると、例えば、パリでは日の出が9時41分、日の入りが17時56分。ブルターニュのブレストでは、日の出が10時6分、日の入りが18時25分。単純計算しても、日が最も高くなるのが、14時過ぎというずれた時間であることがわかります。

わが北部リールでは日の出が9時46分。冬時間であれば8時46分ですが、それでもすでに真っ暗な朝は気がめいりがちですから、それがさらに一時間も遅くなるとなると想像するだけでかなりなストレスです。

実際、同教授も、日の出が遅いと、季節性鬱などを誘発しやすいと述べています。つまり、日照時間が少ないということだけでなく、朝が暗いということが、心身の健康へはダメージとなるのです。

Internaute誌の記事によれば、欧州委員会は、最終的なタイムゾーンの適用実施を2021年までにと考えています。それまでに、メディアや公的機関による啓蒙が進み、賢明な判断が下されることを祈りたいものです。

(冠ゆき)

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。