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No.423フランス・トゥルコアンで振り返る、中東キリスト教徒2000年の歴史

カテゴリー:文化・芸術・美術 投稿日:2018年5月19日

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©Kanmuri Yuki


フランス北部ベルギーと国境を接する町トゥルコアンでは、現在、「中東のキリスト教徒―2000年の歴史(Chrétiens d'Orient, 2000 ans d'Histoire)」中東のキリスト教徒の歴史を振り返る展覧会開催中です。

最も初期のキリスト教徒たち


キリスト教と聞くと、今では西洋の宗教、と考えるのが当然のように思われています。確かに、最も信者数の多いカトリックの総本山はバチカン市国ですし、ヨーロッパやアメリカの歴史・文化を語るのに、キリスト教は避けて通れません。
けれども、実は、信者パーセンテージの高い国は、中南米やアフリカ南部のほうが多かったりもするのです。
また、何より忘れてはいけないのは、キリスト教発祥の地。キリスト教をもたらしたイエズス・キリストが生まれ、活動した主な土地は、いまのイスラエルやヨルダン川西岸地区なのです。
ということは、中東のキリスト教徒は、もっとも初期のキリスト教徒の末裔と言えるわけです。それにもかかわらず、その後増えたイスラム教徒に押され、今では迫害を受けるまでに至っています。彼らがどのようにキリスト教を伝えてきたか。その歴史を振り返る展覧会は、ともすると西洋中心になりがちな視点を外すことも教えてくれます。


第一部:1世紀から6世紀


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水の上を歩くキリスト、シリアのドゥラ・エウロポス、232年、教会の最古のフレスコ画のひとつ、© Yale University Art Gallery


「中東のキリスト教徒―2000年の歴史(Chrétiens d'Orient, 2000 ans d'Histoire)」では、キリスト教の芽生えから現代までを、四つの時期に区分して、展示がされます。


第一部は1世紀から6世紀にかけてです。初期にはイエズス自身が説教をして歩き、その後は使徒らによる福音伝道が行われました。地理的な範囲は、いまのレバノン、ヨルダン、パレスチナ、シリア、イラク、エジプトに及びます。
3世紀までは、ローマ帝政期で、キリスト教徒への迫害が繰り返し行われた時代でもありましたが、313年にはミラノの勅令により、信教の自由が保障されました。


第二部:7世紀から14世紀

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コプト語とアラビア語併記の抄録福音書、カイロ、エジプト、1250年


7世紀は、アラブ人の中東征服が始まった時代です。アラブ人はイスラム教を国教に定めはしましたが、キリスト教の信仰は保障されたままでした。そのため中東のキリスト教は発展を続け、イコンなどの美術品も生まれました。
展示で目を引くのは、古書の数々です。シリア語とアラブ語併記の福音書や、エジプトのコプト語とアラブ語の聖書、アルメニア語のもの、コーランかと見紛う装丁のものが、多数陳列されています。


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コプト語ボハイラ方言のモーセ五書と、アラビア語訳、エジプト、1356-1359年


この時代でもう一つ注目したいのは、10世紀から13世紀にかけて繰り広げられた十字軍です。十字軍とは、ヨーロッパのキリスト教国が、聖地エルサレムをイスラム教国から奪い返す目的で派遣した遠征軍のことです。この十字軍の遠征は、中東のキリスト教徒にとっては受難の始まりでもありました。というのも、それまで共存してきたイスラム教徒たちからは敵視されるようになり、かといってヨーロッパから来たキリスト教徒(十字軍)からは疑いの目で見られたからです。


第三部:15世紀から20世紀

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4つの福音書のアラビア語母型、メディチ印刷所のためRobert Granjonが彫ったもので、福音書の印刷に用いられた、フィレンツェ、イタリア、1590-1591、© Imprimerie Nationale, Paris - Daniel Pype


15世紀になると、中東には、オスマン帝国の統治が敷かれます。メソポタミア、シリア、エジプトのキリスト教徒は、オスマン帝国のもと、信教の自由を保障されることになります。


この時代は、地中海が統一され、商業や文化交流などが盛んになる時期でもあります。アラビア語がヨーロッパに伝わり、印刷技術がアラビア世界に導入されました。


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Yûsuf al-Musawwir, 聖母子像と聖人、シリア、アレップ、1650年、© Collection Abou Adal, Beyrouth


16世紀は、キリスト教がカトリックと正教に分かれた時期でもあります。17-18世紀には、イコン芸術が花開きました。


第四部:20世紀から21世紀

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パレスチナ、マルサバ修道院 © Pénicaud、2016


近現代においては、再び、中東のキリスト教徒は厳しい状況に置かれています。1860年にはシリアにおいて迫害され、1915年にはアルメニアで虐殺されました。その後、移民、亡命の背中合わせの生活が続いています。
それにより、キリスト教徒だけではなく、2000年に及ぶキリスト教の文化遺産の存続も危惧されています。


「中東のキリスト教徒―2000年の歴史(Chrétiens d'Orient, 2000 ans d'Histoire)」展は、中東のキリスト教徒が住む国6つの現代写真家の作品で締めくくられます。エジプト、ヨルダン、シリア、パレスチナ、イラク、レバノンに住む彼らの作品は、アラブ社会でキリスト教徒として生きる彼らの日常の現実を見せてくれます。


多くの事実に気づかせてくれる「中東のキリスト教徒―2000年の歴史(Chrétiens d'Orient, 2000 ans d'Histoire)」展、会期は2018年6月11日までです。


場所:トゥルコアン、ユージェヌ・ルロワ美術館(MUba)
住所:2, rue Paul Doumer, 59200 Tourcoing
電話:03 20 28 91 60
URL: www.muba-tourcoing.fr
開館時間:月・水・木・金・土・日の13時~18時
休館日:火曜日、祝日
入館料:大人7ユーロ

会期中、明日5月19日は、「博物館の夜」イベントのため、18時から0時まで開館。入場無料です。また、2018年6月7日(木)は、特別に20時まで開館します。

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド、イタリア、中国の生活を経た後、2013年フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40ヵ国。6ヵ国語を解する能力と多様な文化に身をおいてきた経験を活かし、柔軟かつ相対的視点から、フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介中。
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