[International Wine Challenge] ロンドンで世界一の日本酒発表!

公開日 : 2018年07月19日
最終更新 :

1984年にロンドンで創立された、世界最大級のワインのコンペティション、International Wine Challenge (IWC)。2007年からは、日本酒部門が設立され、その知名度は年々高まっています。12年目を迎える今年は、過去最高の1639銘柄が出品され、通常はロンドンで開催される審査会を、今年は5月に山形県が招聘する形で特別開催し、世界最難関のワインの資格、マスター・オブ・ワイン(MW)の資格者をはじめとする15カ国、59人の審査員によるブラインドテイスティングの結果、ゴールド、シルバー、ブロンズの各メダル受賞酒が選ばれました。ゴールドメダル受賞酒の中から更に、普通酒、本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、スパークリング、古酒の9部門のトロフィーと、トロフィーには及ばなかったものの、各地域の優れた酒に与えられる「リージョナル・トロフィー」を合わせて、以下の合計23のトロフィー受賞酒が選ばれました。

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© Rob Lawson Photography Ltd

【普通酒の部】

普通酒トロフィー

・天鷹 旨辛(天鷹酒造株式会社、栃木県)

岐阜・普通酒トロフィー

・小町桜 別囲い(有限会社 渡辺酒造店、岐阜県)

【本醸造酒の部】

本醸造トロフィー

・初孫 伝承生もと(東北銘醸株式会社、山形県)

京都・本醸造トロフィー

・月桂冠 特撰(月桂冠株式会社、京都府)

岡山・本醸造トロフィー

・嘉美心 秘宝 本醸造(嘉美心酒造株式会社、岡山県)

【吟醸酒の部】

吟醸トロフィー

・奥の松 あだたら吟醸(奥の松酒造株式会社、福島県)

福島トロフィー

・飛露喜 吟醸(合資会社 廣木酒造本店、福島県)

【大吟醸酒の部】

大吟醸トロフィー

・宮の雪 大吟醸(株式会社 宮﨑本店、三重県)

兵庫・大吟醸トロフィー

・櫻正宗 金稀 大吟醸 原酒 (櫻正宗株式会社、兵庫県)

【純米酒の部】

純米トロフィー

・純米酒 月弓(名倉山酒造株式会社、福島県)

福島トロフィー

・伝承山廃純米 末廣(末廣酒造株式会社、福島県)

山形トロフィー

・初孫 出羽の里 純米酒(東北銘醸株式会社、山形県)

【純米吟醸酒の部】

純米吟醸トロフィー

・フモトヰ純米吟醸山田錦(麓井酒造株式会社、山形県)

青森トロフィー

・桃川吟醸純米酒(桃川株式会社、青森県)

【純米大吟醸酒の部】

純米大吟醸トロフィー

・金雀 40%(有限会社堀江酒場、山口県)

秋田・純米大吟醸トロフィー

・天の戸 純米大吟醸35(浅舞酒造株式会社、秋田県)

三重・純米大吟醸トロフィー

・作 槐山一滴水(清水清三郎商店株式会社、三重県)

山形・純米大吟醸トロフィー

・熊野のしずく(東の麓酒造有限会社、山形県)

【スパークリングの部】

スパークリングトロフィー

・一ノ蔵 すず音 Wabi(株式会社一ノ蔵、宮城県)

和歌山・スパークリングトロフィー

・紀土 純米大吟醸 Sparkling(平和酒造株式会社、和歌山県)

山形・スパークリングトロフィー

・米鶴スパークリング・ロゼ(米鶴酒造株式会社、山形県)

【古酒の部】

古酒トロフィー

・貴醸大古酒 古時計(加茂川酒造株式会社、山形県)

栃木・古酒トロフィー

・大吟醸 熟露枯 秘蔵10年(株式会社島崎酒造、栃木県)

そして、7月10日には、ロンドン市内の高級ホテル、グロブナーハウス・JWマリオット・ホテル ロンドンで、ワインと同時に、日本酒のチャンピオンの発表が行われました。ガラ・ディナーには、250ポンド(約3万7000円)のチケットを購入した参加者や関係者など、合計703人が着飾って訪れ、華やかな雰囲気に包まれました。

トロフィー受賞蔵から唯一選ばれる「チャンピオン・サケ」には、今年は福島県、奥の松酒造株式会社の「奥の松 あだたら吟醸」が選ばれました。

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わずか1000円あまりで購入できる手頃な価格の酒ながら、「この価格帯でベストの酒を作ってきた自負はある」と、19代目で、代表取締役の遊佐丈治さんは胸を張ります。「あだたら吟醸」は、唯一ワインの酵母を元種に自家培養した酵母を使い、20年ほど作っている銘柄。カジュアルな価格帯の日本酒のため、米は飯米を中心に、状態の良い米を選んで使う。今回の出品酒は「あきたこまち」を使ったもので、すっきりとした味わいの酒に仕上がったという。また、ワイン酵母由来の香りの良さも特徴の一つ。日本酒の審査員の一人で、マスター・オブ・ワインのアントニー・モスさんは、「マンゴーを思わせるトロピカルフルーツのような香り、酸味は穏やかだが、アルコールのボリューム感がある。ハーブの香りのあるものと相性が良く、バジルなどを使ったイタリア料理とのペアリングを勧めたい」と語ります。

受賞の効果は絶大で、注文が殺到し、早くも出荷に遅れが出ているそう。

また、福島の酒蔵ということで、「被災地の酒蔵ということで、震災から7年経った今も出荷できない国があるが、これまで福島の日本酒から放射能が検出されたことはない」と、その安全性を改めて訴えました。

また、最も顕著な成績を収めた蔵、「サケ・ブルワー・オブ・ザ・イヤー」には、6銘柄でゴールドメダルを受賞した、山形県の東北銘醸株式会社が選ばれました。

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空気中に存在する天然の乳酸菌を使った手間のかかる伝統手法、生酛作り100%で日本酒を作っている蔵で、取締役製造部長の後藤英之さんは、「各地からの視察も多いが、技術を惜しみなく公開している。そんな姿勢も評価につながったのではないか」と語ります。本醸造酒部門のトロフィーを受賞した「初孫・伝承生もと」を私もいただきましたが、生酛独特の乳酸の香りに、天然酵母のパン種のような香ばしい香りがあって、どこかパネトーネを思わせるような、西洋料理との相性も良さそうな味わいの日本酒でした。

また、720ml瓶で10万本以上を生産し、日本での小売価格1000円以下という条件を満たした、コストパフォーマンスに優れた酒に贈られる、「グレートバリュー・アワード」には、月桂冠「特撰」が選ばれました。

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月桂冠の常務取締役・大倉博さんは、「我々は日本最大規模の酒造メーカーで、アメリカにも製造拠点がある。全てのカテゴリーの日本酒において、最高品質を目指しているが、こういった賞の受賞は初めてで非常に嬉しい」とコメントしています。

各メダル受賞酒についてはIWCオフィシャルパートナーの酒サムライのウェブサイト

http://www.sakesamurai.jp/iwc18_medal.html

また、ワインの結果についてはIWCのウェブサイト(英文)で見ることができます。

https://www.internationalwinechallenge.com/

また、今回世界各国から審査員を招き、山形で開催された審査会は、地方の魅力を発信するための新たな取り組みと言えそうです。ブラインドテイスティングのため、もちろん地元の酒が有利という訳ではありませんが、今回3蔵が「トロフィー」を受賞、その全ての酒蔵が初出品。「地元での審査会開催だから出してみよう、という気持ちになった」と3蔵共に口を揃えます。

また、山形県の新藤酒造店の新藤雅信さんは「これまで8年出品してきたが、輸出が10倍に増えた。自分は山形県の酒造組合の技術員として、鑑評会の審査などにも参加するが、作りの技術を見る審査会と違い、ワインと同じように味わい・香りなどの個性を評価するIWCは、より一般の消費者の目線と近く、日本酒に対する新しい評価基準として重要」と語ります。

結果的に無投票となったものの、山形でのIWC審査会開催を知事選の公約に掲げ3選を果たした、吉村美栄子山形県知事は、「酒どころ・山形でも、酒蔵が減ってきてしまっている。世界に知られたアワードの審査会が地元で開催され、さらに3蔵がトロフィーを受賞したことは、自分たちの作る酒が世界に認められる品質なのだ、と蔵元に自信を与え、世界のマーケットに目を向けることにもつながっている。酒造りや山形の魅力を発信し、郷土を活性化していきたい」と期待しています。

来年の審査会はロンドンに決まっていますが、2016年には兵庫でも審査会が開催されるなど、「日本酒」をキーワードに世界に地方の魅力を発信する取り組みは、これからも続いていきそうです。

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© Rob Lawson Photography Ltd

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■International Wine Challenge 2018

開催日時:2018年7月10日 (終了)

開催場所:Grosvenor House, A JW Marriott Hotel, 86-90 Park Lane

London, W1K 7TN United Kingdom

https://www.internationalwinechallenge.com/

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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