[Robert Parker Matter of Taste]シンガポールで2年目を迎えたワインの祭典

公開日 : 2017年11月03日
最終更新 :

Robert Parker 主催のワインイベント、Matter of Tasteにお邪魔して来ました!去年はニューヨーク、ロンドン、シンガポール、ナパバレー、香港、そして今年はチューリッヒ、ロンドン、マカオと、世界6都市で行われた、パーカーポイント90点以上のワインを集めたワインの祭典。2年目の今年は、集まったワインの種類は200種類、世界各地からワインの生産者や輸入業者などが集まり、それぞれの個性や良さをアピールしました。

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始まる前のメディアイベントでは、いくつかのワインについて、Robert Parker のディレクター、Patrick Sauze さんから説明が。17年前にシンガポールにやって来たPatrickさんは、元々ワインの輸入業者で、良質でミドルレンジの価格のワインをシンガポールに広める活動をしていたというだけあって、詳しく説明していただけました。去年と違い、今回は「ボルドー」に焦点を当てています。地域の限定ではなく、ボルドーで作られているぶどう品種、という緩やかな縛りのテーマ。

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ただワインを飲むのではなく、切り口を変えることで、同じ品種でも気候や土壌、作り方の違いでどんな変化が現れるかも楽しめます。

フランス・ローヌのM. Chapoutier Ermitage Le Pavillon 2013。シラーズらしい、スパイスや動物のなめし皮のようなニュアンス、引き込まれるような深みがあって、個人的にも好きなワインでした。

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Pàtrimo Feudi di San Gregorio 2014。イタリアのカンパーニャ地方のメルロー。70年以上の古い樹からのぶどうを使っているそう。樽の木の香りがしっかりするワインです。

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スーパータスカンのTua Rita Giusto di Notri 2013。メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フランのブレンド。ダークフルーツのやや甘めの印象、そして白檀のような香り。タンニンがはっきりしていて、収斂性もあります。

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ニューワールド、アルゼンチンのワインも。Bodega Aleanna 'Gran Enemigo' Gualtallary Single Vineyard Cabernet Franc, Tupungato, Argentina 2012。ぶどうはカベルネフランとマルベックで、個性あふれる、乳製品やフルーツキャンディのようなニュアンスがある濃厚なワイン。

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Two Hands Wines Coach House Block Cabernet Sauvignon, Barossa Valley, Australia 2006

フランス風に作ったオーストラリアのカベルネ・ソーヴィニョン。ブラックベリーのジャムのような濃厚な果実味がありました。10年以上経っているものの、若々しい印象。

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Clarendon Hills Brookman Merlot 2005

香りには黒イチジクやクリームなどの乳製品の印象がありますが、しっかりと辛口のワイン。特に独特のランシオのような香りがあったのが印象的でした。後味にはチョコレートのニュアンスも。もともと化学者から醸造家に転向した作り手のもので、65歳以上の古木のぶどうを使っているのだとか。

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Clos Mogador, Priorat DOCa, Spain 2012

スペイン・カタルーニャで作られたグルナッシュ。

コンテチーズのような濃厚な乳製品の香り、その奥から花やミントのような植物の香り。酸がしっかりあります。

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Patrickさんによると、この Matter of Tasteは、12月にニューヨーク、来年3月にサンフランシスコでの開催が決まっているとのこと。Robert Parker自体が、現在英語でのみ情報発信を行なっているため、基本的には英語を話す人口が多い都市が開催地になります。

そして、実はシンガポールは、ロバート・パーカー氏の会社、ワイン・アドボケードの本拠地。パーカー氏が自身が高齢になったことなどを理由に、2013年にシンガポールの資本家たちにRobert Parkerの株式の半分以上を売却したこと、また世界的にも紙の出版物よりもウェブサイトやメールマガジンなどでのデジタル出版が主流になっていることから、拠点をシンガポールに移すことが決まったのだとか。

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ロバートパーカーにこの7月に加わった、マネージングエディターのJoe Czerwinskiさんにお話をお聞きすると、レビュアーは世界各地に散らばっていて、それぞれの地域だけだなく、世界を旅して、取材をしているのだとか。ちなみに、アジア唯一のレビュアーは、上海在住のLiwen Haoさん。マーケットの大きさを考えると、日本人を含め、アジアのレビュアーがもう少し多くてもいいのでは、と質問すると、「アジアのマーケットは、ワインジャーナリズムという点でもこれからどんどん良くなっていくだろう」とのことでした。

日本のワインについてお聞きすると、「以前に日本の甲州とメルローのワインを飲んだことがあるけれども、まだ日本国外での露出が少なく、そもそも生産量が少ないために輸出に回せていないのではないか」ということで、シンガポールでは少しずつ見かけるようになってきた日本ワインも、まだJoeさんが拠点とするニューヨークでは馴染みがないよう。もう少し時間が経てば、状況が変わって来るのかもしれません。

Joeさんが強調していたのは、シンガポールをはじめとするアジアの文化に向けて、その文化にあうワインの楽しみ方を提案すること。「アジアでは、一皿づつ出てくるコース料理ではなく、大皿を一度に頼んで、みんなで分けて食べるのが主流。料理にあったワイン3〜4本をまとめて提供して、それぞれの料理に合わせて各自が飲む、というスタイルもいいかもしれない」とのこと。「チリクラブのような辛いものには、シャンパンが合うと思う。色々なものが出るコースでワインを一本だけ頼むなら、シャンパンがいいね」というアドバイスも。知識を啓蒙することは必要だけれども、ワインのスタイルはこうあるべき、と押し付けるのではなく、東西の文化が溶け合う良い機会、と捉えているそうです。「室温」1つとっても、シンガポールと欧米の室温の基準は違うもの。そういった違いから来る誤解のないようにしていく必要性も感じているのだとか。

最近は、中国料理でも一人分づつコース仕立てで提供されることも増えてきましたが、ペアリングもこういったサービス方法なら簡単そう。

そして、拠点がシンガポールに移ったことで、これから成長しつつあるアジアのマーケットがより近くなり、より身近に知ることができるようになった、ということです。日本や韓国はワイン市場としては成熟しているものの、ネックは英語。むしろ、若い人が英語を話すようになった中国、中でも上海は、ポテンシャルが高いと感じているようでした。

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そして、ワインを自由に試飲することができるウォークアバウトは昨年同様大人気。

スーパーセカンド、レオヴィル・ラス・カーズの1975年をテイスティングに出しているところも。

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向かいの会場では、マスタークラスが行われ、フランスのワインメーカーValandraudの2009年から2016年の垂直テイスティングや、

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Joeさんによるソーヴィニョンブランの産地や製法ごとに分かれた飲み比べなどが行われ、より深くワインを知ってほしいという、Wine Advocate側の思いを感じる内容となっていました。

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会員限定で、ワインに関しての様々な情報にアクセスできるウェブサイト、eRobertParker.com の年間会員は限定価格で参加できるイベント、Matter of Taste。この後は12月3日にニューヨーク、来年3月3日にサンフランシスコと、アメリカ都市部で行われる予定です。

<DATA>

会場:Grand Hyatt, Grand Salon, Level 2

開催日時:10月21日(土)11:30~16:30

住所:10 Scotts Road, Singapore 228211

アクセス:MRTオーチャード駅から徒歩2分ほど

URL:https://www.a-matter-of-taste.com/

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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