番外編:ミシュランが今年上陸、バンコク食ツアー2、Suhring
今年のAsia's 50 Best Restaurants で13位のSuhringへ。どこかの避暑地にありそうな、緑の中の素敵な一軒家で、ドイツ・ベルリン出身の双子のシェフによるモダンドイツ料理のお店です。入り口では、Mathiasシェフが迎えてくれました。
コースはお任せで2900THB(1万円ほど)また、特徴はドイツワインを中心にしたペアリングが楽しめること。4杯1900THB、6杯で2600THBです。
まずは、リースリングのスパークリングワインでスタート。
Pretzel & Obatzda
可愛らしい松ぼっくりの器に入っているのは、小さなプレッツェル。クリームチーズとカマンベールチーズのディップにパプリカの粉をかけたものが乗っています。
このディップにプレッツェルをつけながらいただきます。サイドにはプレッツェルには欠かせないビール。泡は消えないように、ゼラチンで作ってあります。
Fischbrotchen
その次は、オニオンタルト。フラットブレッドの中には、細かく刻んだピクルスの入ったオニオンクリーム、そして上にはサマートリュフが乗っています。
Zwiebelkuchen
柔らかいパンの間に甘酢漬けにしたサーディン、トマトにシーザーマヨネーズ。
Eisbeinsulze
豚肉の塩漬け、アイスバインをゼリー寄せに仕立て、カリカリのハーブクラッカーの上に乗せています。上にはレームラードソース、ほのかに辛いガーデンクレスを飾って。
そして、メニューにはなかったのですが、1950年代にドイツの料理番組で有名になったClemens Wilmenrodシェフが作ったというメニュー、トースト・ハワイの再構築。
いわゆる「伝統料理」らしくはありませんが、ドイツでは広く食べられているメニューとか。本来は家庭にある材料で手軽な一品として作れるようにと生み出されたもので、オープンサンドのような形でした。
カリカリのトーストの中には、ハム、ドイツ南部のAllgau地方の山のチーズAllgauer Bergkase、パイナップル、マラスキーノチェリーとパイナップルのソースが入っています。少しエキゾティックフルーツの香りを足したメルバトーストのような印象でした。
Curry 36 berlin street food
豚肉のソーセージに、アメリカンドックのような衣を薄くまとわせて揚げたものに、ケチャップを乗せて。
本来はフライドポテトが添えられるそうですが、こちらはその代わりにごく薄いポテトのチュイルを添えて。上からカレーパウダーをかけています。
そして、こちらもメニュー外ですが、モーゼルを代表する作り手のJoh Jos Prumによるリースリングの甘口ワイン。そのグラスの上に、ハンガリー産の鴨のフォワグラ。
トーションではなく、柔らかなムースに仕上げ、レモンジェルとレモンの皮を飾っています。
ここまでがスナック。
続いては、同じくドイツの有名な作り手、muller catoirのピノブラン(ドイツではヴァイスブルグンダーと呼ばれる)のワイン。
みずみずしいハーブ感がありながらも、乳酸のまろやかさも感じます。
Frankfurter grune sobe & smoked eel
フランクフルト風の緑のソースに、スモークした鰻。ディルやナスターチウムを使った緑のソースのムースの下には、スモーキーなハムの入ったポテトサラダ。クルトン、ナスターチウムのような刺激のある黄色の花、そして白い花はネギの花などをたっぷり盛り付けて。スモークしたうなぎには、ライムのジェルやディルの花をのせて。
ここで、イタリアの無濾過のオレンジワインが登場。
ペトロールの香り、マンゴーや黄桃のような味。後味にイーストのような発酵の香りが残ります。
そこに、ドイツの粉を使っているというこだわりのドイツパンをシェアリングで。
Rustic sourdough breads baked over open fire / spreads & cold cuts
自家製のパンは、2年半ものの全粒粉のスターターで。このスターターに生地を加え、室温に2週間ほど置いて作っているそうです。香りをかいでみて、とThomasシェフ。
サワードゥとホールグレインのもの。
濃厚なバターは、ドイツのクリームを使った自家製の発酵バター。当然加熱殺菌などをしていないためか、濃厚なのに、後味に脂のしつこさが残らず、すっと溶けます。
豚のラードは、りんごやキャラメリゼした玉ねぎを混ぜ込み、上にクリスピーに揚げたラードを添えて。
マスタードとディルのスプレッドは、ゆで卵を使ったスムースなタルタルソースのような印象。
シーバス(スズキの一種)は24時間かけて塩漬けに。しっとりとした滑らかな食感でした。レモンの皮を散らして。
それに対して、フレッシュなディルの入った自家製ピクルスとともに提供された牛肉は、ちょっと乾燥した食感といいい、旨味の凝縮したパルメザンチーズのような印象。
オレンジワインが旨味を増幅し、酸が食欲を増してくれます。このペアリングはとても好みでした。
ガガンの絵文字メニューと同じように、少量で手の込んだスナックが楽しめる
のがここの特徴。ここまでがスナックで、ここからがコースのスタートです。
続いては、ミネラル感のあるビオワインを合わせて。軽めでシトラス、イーストの香りがしっかり残ります。
Pink river trout (オシェトラキャビア乗せは+490THBのオプション)
バターポーチした川マスに、ブラウンバターソース、さらにブラウンバターが凝縮した感じの甘いクランブルをアクセントに。
ジャガイモはシャキシャキ感を残してとろけるように滑らかなマスとの対比に。
マスやキャビア、バターのとろける食感、甘いバランスを引き締めるのはパセリピュレ。緑の丸いものは、タピオカをパセリのジュースに漬けたもの。
続いて、ビオのリースリング。ぶどうキャンディのようなフルーティーさが感じられるワインです。
"Spatzle" soft egg noodle (トリュフは+120THB/g のオプション)
こちらに合わせるのは、ドイツの伝統的な麺料理。
アルデンテではなく、柔らかくてふわふわした食感が面白かったです。最初ニョッキのようにジャガイモを使っているのかと思ったのですが、そうではなく、使っているのは小麦粉と卵だけ、水分の多い生地なのでこの食感になっているのだとか。ゆるい生地なので、打って伸ばして切るのではなく、刀削麺のように鍋の上で削って作っているのだとか。オリーブオイルの入った軽めのクリームソース、セップ茸、そして今の時期はオーストラリア産の黒トリュフを削りかけて。好みで、フライドオニオンもかけていただきます。
ここからがメイン。
ベルギー産のピノ・ノワールと合わせて。まだ若めで、後味がやや甘く、赤ぶどうキャンディのような印象。
Hungarian duck
1週間ドライエイジングしたというハンガリー産の鴨は、60度の低温調理で40分加熱してから、熱した鉄板の上で焼いています。蒸し煮にした玉ねぎ、椎茸のピュレにしめじを乗せたもの、大地の香りを残した椎茸のチュイル。サツマイモのピュレとサツマイモのチュイル。
Buttermilk
トニックのアイスクリーム、きゅうりをレモンとジンに漬け込んだもの、バターミルクのエマルジョンに、生姜のカリッとした食感のメレンゲを食感のアクセントに加えています。
Dark chocolate
アジア風のブラックフォレスト、と言いたくなるような一品。
チェリーの代わりに、プラムを使っているのですが、ドットになったソースはなんとほのかな塩気の効いた梅干し。さらに、ダークスキンミラベルの生と、シロップに漬け込んだもの。ローストした蕎麦のアイスクリームに、ブラックベリーのソースをかけたもの。
ダークチョコレートのクランブルとピスタチオの上には、ピスタチオの形のピスタチオクリームが乗っている、手の込んだ品です。
最後は、おばあさんのレシピだという、エッグノッグを。しっかりアルコールのボリュームのある甘くてクリーミーな卵の味。実際のレシピを本に仕立てたものを一緒に提供する演出。
豚の耳、という名前のシナモン入りのパルミエのようなパイと、マシュマロ入りのチョコレート、カスタードの入った柔らかいシューと共に。
ドイツ料理を洗練されたプレゼンテーションに仕立て、本物の味を小さなポーションでたくさん楽しんでもらう。Gaggan のインド料理しかり、バンコクでモダントルコ料理を同じような手法で提供しているお店も発見したりと、この手法は色々な料理に応用できそう。郷土の味を、おしゃれに、また楽しく味わってほしい。そんな思いが詰まったコースでした。
<DATA>
営業時間:18:00~22:00、無休
住所:No.10, Yen Akat Soi 3, Chongnonsi, Yannawa 10120 Bangkok
電話:+66 (0) 2287 1799
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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