[Buona Terra & Locavore] バリ島の「アジアのベストレストラン」のコラボディナー

公開日 : 2017年06月10日
最終更新 :

2013年にスコッツ・ロードにオープンしたイタリアンレストラン、Buona TerraのDenis Lucchiシェフと、先日アジアのベストレストランで22位にランクインした、インドネシア・バリ島のLocavoreの、Eelke Plasmeijerシェフ によるコラボレーションイベントが行われました。

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料理は、Denisシェフ(左)とEelkeシェフ(右)が交互にお互いの料理を出していくスタイル(メニュー名の後のLはLocavore、BはBuona Terra)。

今回のテーマは、「旨味」。Buona Terraを始めとするレストラングループのワインディレクター、 イタリア・パルマ出身のGabriele Rizzardiさんがセレクトしたワインと共に楽しみます。

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まずは、イタリアのスパークリングワイン、Antica Fratta Extra Brut 2010。

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プロセッコは、一次発酵・二次発酵共に通常ステンレスタンクで発酵させますが、こちらはフランチャコルタ。ぶどうはシャルドネ85%、ピノ・ノワール15%でした。シャンパン製法で瓶内二次発酵させているので、イーストの香りやレーズンのような丸みと熟成感のあるフルーティーさが感じられます。

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Black Rice Blini, Smoked Egg and Purslane (L)

心地よいほのかな酸味のある黒米のブリーニに、スモークした卵のソースに、黒米のパプ、スベリヒユを飾ったもの。キャビアを添えることもあるブリーニ。小麦粉とそば粉の代わりに黒米粉を使い、スモークで旨味を足したクリームで、同じ構成の味わいに。

"Oyster Omelette" with Crispy Pancetta, Anchovies and Braised Onion (B)

牡蠣のフリッタータ(イタリア風オムレツ)をアレンジ、生牡蠣の上にカリカリのパンチェッタ、玉ねぎ、アンチョビ、トマト、唐辛子などを、オランデーズのような卵黄のソースに入れてアレンジしたもの。

Pickled and Grilled Shitake Mushroom (L)

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この牡蠣と同じようなプリプリとした食感が楽しめる肉厚の椎茸は、酢に漬けた後にグリルして、すっきり、さっぱりとした味わいに。

Rigatoni Cracker with Lardo and Sea Urchin (B)

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山の旨味のラードをカリッと揚げたリガトーニに詰め、海の旨味であるウニを乗せたもの。ラードとウニのクリーミーさと、リガトーニのクリスピーさとの対比も楽しめます。

ワインは、Numero Chiuso 2010。

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ヴェネト州の独自品種、Vermentino種100%。ソーヴィニョンブランに近いハーブ香のトーンをより上げたような印象があり、ミネラル感も豊か。数年に一度、ぶどうの出来のいい年しか作らないという希少なワインで、この2010年のものは2600本しか生産されていないそう。

Tomato (L)

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ブラッディーマリーの再構築という一皿。チェリートマトのマリネの上には、セロリと唐辛子入りのトマトのソルベ。上から温かいコンソメを注いでいただきます。

コンソメはチェリートマトのような蜂蜜の印象で甘くなっているかな?と思ったのですが、甘みのないきりりとした味。タイムやローズマリーのようなハーブ感のあるワインとの相性も抜群でした。

続いてサーブされたのは、NO NAMEと、手書きのような字体で書かれたラベル。

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「ブラインドテイスティングですか?」とGabrieleさんに冗談を言ってみると、その名前の由来を教えてくれました。「この品種は、今はFriulanoとなっているけれども、昔はTokajiと呼ばれていた。でも、イタリアがEU に加わった際に、ハンガリーの甘口ワイン、Tokajと同じ名前だということで、名前を、フリオロ・ベネツィア州から撮った今の名前に変えられてしまった。祖先の時代から使ってきた、本当の名前を名乗れない。それに対する思いを表現するために、NO NAMEという名前にしたんだ」。奇抜なネーミングを狙ったのではなく、Tokajと名乗れないながらも、こう書くことで、その名前を残したい。そんな作り手の思いが感じられるワインは、ゲヴェルツトラミネールのような、華やかな白い花や蜂蜜のような香りが豊か。

Tilefish in Acqua Pazza (B)

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日本産のアマダイの松笠焼きを、アクアパッツァ仕立てに。ムール貝などからの自然な塩分を使い、塩を一切加えていないそうですが、旨味が豊かでも、雑味のない出汁に、黒オリーブやケイパー、そして、濃厚な甘みのセミドライトマト。凝縮したトマトの旨味も、塩分が少なくても美味しく感じさせてくれる大切な要素になっています。セミドライトマトにすることで、凝縮した甘みと旨みをアクセント的に使える上、トマトの味がスープに流れ出さず、スープそのものが余計に透き通った味に感じられて、好みでした。

ワインは、時間が経つにつれて、ドライアプリコットやフレッシュなアーモンドのようなニュアンスが出てきて、この地中海的な印象を強めているように感じました。

続いては、ピエモンテ州、バローロの有名な作り手が、ごくわずかな本数だけ作っているというシャルドネ。

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この2015年のものは、5000本生産しただけ、という希少なもの。ほんのり焦がしバターのような香りがあります。

"Umami" (L)

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これに合わせたのは、その名も旨み。「自家製MSG(グルタミン酸ソーダ)のパウダーと一緒にどうぞ」というEelkeシェフの言葉に、一同から質問殺到。

実際のパウダーの中身は、不活性イーストと、干したマッシュルームを粉にしたもの。きな粉やイーストの香りのパウダーの下には、薄切りのマッシュルーム、そして角切りのマッシュルームと細切り昆布を入れたリゾット。

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イーストの植物性のタンパク質の旨味を引き出したところに、バターの香りのシャルドネで、アジアに寄りすぎない、ヨーロッパ料理のバランスにする。秀逸なペアリングでした。

続いては、ベニスの北で4000年前にメソポタミアで作られていたのと同じ製法で作られているという、オーガニック・無濾過のオレンジワイン、Radikon Jakot。

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「白ワインは通常、ぶどうの皮の成分を抽出するために漬け込む過程、マセラシオンを24時間から36時間行うけれど、こちらは数カ月館漬け込み、さらに樽でなく、テラコッタ製のアンフォラで熟成させているのです」と、Gabrieleさん。

Fusilli Carbonara (B)

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フジッリパスタに、スモークした卵黄のソース、ペコリーノチーズとサルディニア産のボッタルガを添えて。「豚トロ」と呼ばれるほど脂の乗った豚の頬肉の部分で作った生ハム、guanciale(グアンチャーレ)をかけてありますが、特にこのguancialeの豚の脂と、ワインの相性が絶妙でした。

凝縮した杏や干しリンゴのような印象で、香りはとても甘いのですが、口にするとキリッとした辛口。コンテなどのチーズなどにも合うと思うのですが、干しリンゴのような甘い香りと、豚の脂、りんごと豚という、味の組み合わせをワインのマリアージュで出していて、素晴らしかったです。

ここで出てきたのが、なんと日本のウィスキー、響17年。

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「通常はここで、味覚をリセットするためのソルベを出したりする所だけれど、今回のテーマは旨味。味覚のボリュームを上げたいと思った」と、今回のイベントのオーガナイザーの一人、Abbeyさん。

サプライズディッシュとして登場したのが、一度乾燥してから、圧縮し、再度乾燥させたという大根を麺仕立てにしたもの。

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切り干し大根のような干した大根の出汁に、バターとオリーブオイルを加え、上から大根おろし、二十日大根、自家製の鰹節を振りかけたもの。これまでよりもパワフルな旨味は、ともすればえぐみにも感じてしまいそうな所、ウィスキーを合わせたことで、アルコール度でそのえぐみを洗い流し、香りで昇華させるような、とても印象的な組み合わせでした。

そして、そんな流れの後、ピノ・ノワールだと弱すぎる、とGabrieleさんが選んだのが、アマローネ。

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90〜200日間、ぶどうを陰干しすることで糖度を上げ、凝縮感を出したワインです。通常は4種類の特定品種のぶどうで作るところを、16種類のぶどうを混ぜて使っているため、称号もDOCGではなくIGP。正式にはアマロネとは呼べないそうですが、製法としては同じ作り方をしているそう。

Eggplant (L)

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それに合わせて出てきたのは、見た目もシンプルな、ナスの一皿。このワインに合わせるには軽すぎるのでは?と一瞬心配になりましたが、日本の焼きなすのように、しっかりと皮目を焼いて剥き、そのあとにその焦げた皮、発酵させたマッシュルーム、昆布、ネギなどの粉を黒米のパフと混ぜた「旨味と香ばしさのパウダー」をかけて。サイドにはココナッツクリーム、カレーリーフ、カフィライムやガーリック、シャロットなどを使った、ターメリックの入ってないカレーのような、エスニックなソースを合わせてあります。

アマロネスタイルのレーズンのような凝縮したぶどうの香りと甘みに、このナス皮の糖分が焦げた印象が重なります。中東のピラフにレーズンが入っているのと同じような感じで、スパイス類とこのレーズンの印象も、うまくマッチしていました。

そして、ここで登場したのが、ロバートパーカー100点を取ったという、Casanova di Neriの brunello montalcino。

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良質のピノ・ノワールのような、バランスの良い上品なスミレの花や枯葉の香り。飲み頃はまだ始まったばかりとか。

Wagyu (B)

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それに合わせたのは、佐賀和牛の炭火焼、ボルドレーズソース。トリュフと、カリフラワーを添えて。

赤ワインたっぷりのボルドレーズソースには、牛の骨髄、ボーンマローを加えて、濃厚な旨味を足しています。

スモークの香りに枯葉の香りが、脂の弾ける最上級の和牛に、キメの細かいタンニンが寄り添います。繊細でありながらも、弱々しくない、そんな2つの個性が出会い昇華されていくペアリングでした。

Mousse Esotica al Cioccolato (L)

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デザートは、チョコレートムースに、味噌のソース、塩のソルベ。メレンゲの上からは、スーパーフードとしても知られている、モリンガの葉の粉をかけて、緑の香りのみならず、ヘルシーさをプラス。

この味噌もそうですが、Locavoreの料理で感じたのは、乳製品の代わりにココナッツミルク、穀物やトマトなど、植物性の旨味を使って、アジアらしいヨーロッパ料理を作り出していること。ベジタリアンやビーガンなどの方にも楽しんでもらえる料理や、スーパーフードを取り入れるなど、これからの料理の一つの流れを感じられてとても興味深かったです。

Buona Terraの Denis シェフのお料理も、伝統とモダンの程よいバランスが心地よい料理。引き算と足し算をまるで一人のシェフが作っているような、全体の流れがとてもスムーズな、完成度の高いコラボレーションでした。

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イベント日時:2017年6月9日(終了)

■Buona Terra

営業時間:ランチ 12:00~14:30(平日)、ディナー 18:30~22:30(22:00LO、月曜〜土曜)、日曜・祝日休

住所:29 Scotts Road Singapore 228224

電話: +65 6733 0209

アクセス:MRTオーチャード駅から徒歩11分ほど

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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