国宝・紙本著色信貴山縁起絵巻

公開日 : 2018年09月13日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅

前回からのつづき...

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本堂の階段を下りたすぐ横に霊宝館がありますが、有料ということもあってスルーされる方も多いです。しかし実はここに凄いお宝が伝わっているのです。

それこそが国宝・紙本著色信貴山縁起絵巻(しほんちゃくしょくしぎさんえんぎえまき)です。霊宝館の内部は撮影が禁止されておりますのでこちらを参考にしてください。

これは平安時代後期に描かれたもので、朝護孫子寺の中興の開山(つまり平安時代にこのお寺を本格的に造り、その正式な最初の住職ということ)であった命蓮(みょうれん)上人にまつわる説話が描かれている絵巻物です。

山崎長者の巻(飛倉の巻)縁起加持(えんぎかじ)の巻尼公(あまぎみ)の巻の三巻からなっており、人物の躍動感や表情が軽妙かつ的確で、風景描写にすぐれていることから四大国宝絵巻の一つに数えられているほど貴重な存在なのです。

ちなみに残りの三つは「源氏物語絵巻(げんじものがたりえまき)」「鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)」「伴大納言絵詞(とものだいなごんえことば)」というそうそうたるメンバーで、あまり歴史に興味がない方でも聞いたことのある名前だと思います。

しかし私が「凄いお宝」と言いますのは、日本四大とか作者が誰だといったような事ではありません。

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尼公の巻を見ていただきますと大きな仏さまが描かれているのが見てとれます。舞台は奈良ですので大仏といえば皆さまよくご存じ東大寺の毘盧舎那仏ということになります。

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この巻は命蓮上人の姉の尼君が主人公です。若い時に奈良で僧になると家を出たまま行方知れずの弟を探すために旅に出たのですが、なかなか会えずに疲れ果てておられましたが、やっとのことでたどり着いたところが東大寺でした。そして大仏様のお告げによって信貴山へ向かい、そして無事に弟の命蓮との再会を果たすという感動物語です。

東大寺は奈良時代の572年に創建されましたが、平安時代末期の1181年に平重衡(たいらのしげひら)の指揮によって焼き討ちにあって焼失してしまいました、その後鎌倉時代に再建されたものの、再び戦国時代に兵火に焼かれて現在のものは江戸時代に再再建されたものです。

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しかしこの絵巻が描かれたのは平安時代の焼き討ちより前ということですから、この絵の中に描かれた大仏さまの姿は天平時代に造られたオリジナル...つまりこの絵巻は、1260年前の様子を現代に伝える貴重な資料であり、現存する唯一の証拠となっています。

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他にも尼君が奈良に入られたことを暗示させるように鹿の群れが描かれていたり、旅の途中で出てくるの商家や農家、庶民の風俗などが細かく描かれているので、平安時代後期の庶民の生活が伺えることから民俗的資料としての価値も高いものなのです。霊宝館で展示されているものは精巧なレプリカで、本物は奈良国立博物館にて大切に保管されています。しかしレプリカと云えども一見の価値は十分にあります。

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霊宝館から山上へと続く階段をひたすら登っていきますと、最も高い場所に位置する空鉢護法堂(そらばちごほうどう)があります。

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これもまた信貴山縁起絵巻の中の「山崎長者の巻」に由来するもので、お堂の裏には石造りの鉢が祀られています。

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さすがにここまで上がってきますと、本堂からとはまた一味違うロケーションも楽しめます。

朝護孫子寺だけでも十分一日かかってしまうほどのスケールの大きなお寺ですので、参拝に来られるなら時間に余裕をみてお越しください。

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