ナポリの秘蔵、カラヴァッジョの「慈悲の七つのおこない」

公開日 : 2017年05月21日
最終更新 :

 昨年開催されたカラヴァッジョ展の大人気もあり、カラヴァッジョの作品に興味を持っている人も多いのではないでしょうか。ナポリにも彼の名画を見られる場所があります。写実性と劇的な光と影、心にささる感情表現で、後に多くの画家に多大な影響を与えたと言われるイタリアバロック絵画最大の巨匠は、イタリアでも大人気の芸術家の一人です。

 しかしその強烈すぎた人間性は品位に欠けるとして非難を浴びることも少なくありませんでした。カラヴァッジョは1606年、35歳の時に喧嘩で一人の男と決闘、相手を刺し殺しローマから逃亡します。ナポリの次の逃亡先のマルタ共和国で『洗礼者聖ヨハネの斬首』を描き、これが認められ教皇より免罪されます。ですが一年も経たずして再度決闘し投獄されます。一度は脱走を試みるも数日後に逮捕、同作品の目前で斬首刑を宣告されます。享年38歳。

 その死の前に、ナポリでも作品を残していました。

 旧市街のスパッカナポリに平行するトリブナーリ通りをまっすぐ駅方向へ。Duomo通りを横断したらすぐのところに、ピオ・モンテ・デッラ・ミゼリコルディア教会があります。

 1602年に設立された慈善団体、ピオ・モンテ・デッラ・ミゼリコルディアは、貧困者や病人の救済などの慈善事業を行っていました。1606年に聖堂が建設されると、当時ローマを追放されナポリに逃亡中だったカラヴァッジョに、団体は主祭壇に絵を描くよう依頼します。描かれた本作はマタイ福音書に由来する「慈悲の七つのおこない」。

 各場面をひとつの場面の中に配するという極めて斬新な構図が取られている。各場面は複雑に交錯しながらも、カラヴァッジョの自然主義的写実性で描写された誇張されない事象は明確に表現されており、わずか数ヶ月の滞在中に、圧倒的な知性と創造力によって描かれた本作は、ナポリ派の画家たちの間で大きな反響を呼び、カラヴァッジョ派の画家が、この町から多く誕生することとなります。

 『慈悲の七つのおこない』は、右部の≪死者の埋葬≫と≪囚人の慰問、食物の施与≫、中央の≪衣服の施与≫、左部の≪病気の治癒≫、≪巡礼者の歓待≫、≪飲物の施与≫とで構成されています。

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 ピオモンテ・デッラ・ミゼリコルディア教会のオフィシャルサイト→http://www.piomontedellamisericordia.it

 チケット:大人7ユーロ(学生割引・65歳以上割引・家族割引・アルテカード割引あり)

 開館時間:月曜日〜土曜日 9:00〜18:00  日曜日 9:00〜14:30(閉館時間の30分前に入場締め切り)

 先日、夫がこのカラヴァッジョの絵画の下でコンサートをしました。ナポリ出身のピアニストAlberto Pizzoによる「InLucem」(ラテン語で"光の中で"の意)と題するピアノソロコンサート。

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 「慈悲の七つのおこない」をイメージした即興が演奏され、開場は不思議な光と影の世界に魅せられていました。私も二曲ゲスト出演させていただきました。

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 実はナポリに来てから、この作品を観たのはこれが初めて。このコンサートがきっかけで出会えました。「慈悲の七つのおこない」はここでしか見ることのできない作品で、小さなチャペルの中で見る絵画はますます幻想的です。

 ナポリの大聖堂から徒歩五分程の距離にあります。知る人ぞ知る、ナポリの秘蔵。旧市街観光の合間に覗く価値は充分あります。

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