Uruguayos tenían que ser

公開日 : 2012年09月01日
最終更新 :
筆者 : Mariana

1972年10月13日にウルグアイ人を襲った悲劇から、40年が経ちました。

大学のラグビー部の学生と、その他の乗客合計45名を乗せて、チリの首都、サンチアゴを目指して飛んでいたウルグアイ空軍機がアンデス山脈への墜落しました。

(なぜ空軍機に学生や他の民間人が乗っていたかと言うと、ラグビーチームがサンチアゴに行く空路を安く上げる為に空軍機を借り、さらに安くする為に満員にしようと他の乗客を募ったそうです。)

全員即死は免れたものの、当初の生存者32名は10月(春)とは言え、夜は気温が-40度にもなるアンデス山脈の中腹、メンドーサからサンチアゴまでに短距離フライトであったため食料も機材には積み込まれていない、もちろん登山者のような重装備で居た訳でもない。そのような過酷な状況でひたすら救助を待つ状況に追い込まれました。

しかし、ウルグアイでは、現地の状況から全員死亡したであろうと推定され、墜落から10日後に捜索打ち切りを決定。乗客の一人が持っていたラジオを工夫してなんとか情報を得ていた生存者達は、それを聞いてを絶望しますが、その一方で、行動を起こす決意をします。

行動のひとつが、救助再開を待つ間の餓死を防ぐ為になんとか食料を確保する事。すなわち、身近にある唯一のタンパク源である、死者の肉を食べて生き永らえる事でした。

もちろん、この案は議論を呼びました。最後まで仲間の肉を食べる事を拒否して餓死した人たちも居ます。

そして、もうひとつの行動が、生存者の中から3人が、助けを求めにアンデス山脈を歩いて下山することでした。食料は確保出来たものの、アンデス山脈の厳しい気候に耐えられず死亡者が続いて出ていたのです。

彼らのうち2人は奇跡的にチリ側の村落にたどり着く事が出来(1人は食料が底をつく事を恐れて引き返しました)、まだ仲間が生存している、とても弱っている、緊急に助けが必要な事を伝え、最終的に合計16人が生還しました。実に墜落から72日後の出来事です。40年後の今年、彼らの使用した当時の品物や、ウルグアイに住む家族や恋人に当てた手紙等が、8月23日から9月23日まで、1ヶ月間展示されています。

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残念ながら中は撮影禁止でしたが、こちらから展示をざっと見る事が出来ます。タイトルの『Uruguayos tenían que ser』は、当時のこの出来事を報じたチリの新聞の見出しです。私の至らないスペイン語力で恐縮ですが、意味としては『ウルグアイ人は居なくてはならなかった。→ウルグアイ人は居たのだ!』という感じでしょうか。この展示を見て感じるのは、極限状態でも生きる事を全うしようとした彼らの圧倒的な精神力です

当時の乗客の全員が自殺が罪とされているカトリックだったという背景もあるのでしょう。神を信じ、自分たちを信じ、救助してくれるであろう自分たちの家族・同胞を信じ、あらゆる知恵を、手段を尽くして理屈では不可能と考えられる生還を遂げたのです。

展示品や当時の写真のひとつひとつから、彼らの底知れない絶望、しかし失われない希望、すさまじいまでの生存への執着、そのあがき、それらの迫力がひしひしと伝わって来、圧倒され、無言にならずにはいられませんでした。

この出来事は、当時日本でも報じられたそうです。

またその後90年代以降に映画にもなっており、日本でも見る事が出来ます。生存者およびその周辺の人間の証言を淡々と収めたドキュメンタリー映画、『アライブ-生還者-』と、

実話を元にハリウッドで作成された映画『Alive 生きてこそ』です。

個人的にこの展示には思い入れがあり、絶対見に行こうと思っていました。

ずっと昔、まだごく子供だった時にどんな映画か知らずに、軽い気持ちで『生きてこそ』のビデオレンタルを手に取りました。ハリウッドが商業的に作ったので観やすくなっているとは言え、子供心へのインパクトは相当なものでした。

これがウルグアイという国を知った初めてのきっかけなのですが、10年以上後に、まさか自分が実際にウルグアイに住んで、この出来事の展示を見る事が出来るとは想像していませんでした。普段見る事の出来ないウルグアイの横顔を、この時期にいらっしゃる方は展示で、残念ながらいらっしゃらない方は映画で、垣間みてはいかがでしょうか。"Uruguayos tenían que ser"Museum of Contemporary Art (BGMOCA) - Montevideo (旧 Tajamar de Carrasco)住所:Lieja 6416 y Divina ComediaTEL: 2604-6220

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