推理小説作家・江戸川乱歩①(ふたつの名前の由来)

公開日 : 2017年07月27日
最終更新 :
筆者 : な*る
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【江戸川乱歩】・・・三重県名張市出身の推理小説作家。

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江戸川乱歩と言えば、ひと昔前、小学校の学級文庫に必ずあった(怪人二十面相)や明智小五郎、少年探偵団の小林少年が思い浮かびます。

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若い世代にはなじみがあまりないかも知れませんが、かなり有名な推理小説作家でした。

彼の名前には、ふたつの名前にまつわるエピソードがあります。

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①そのひとつには若い世代なら誰しもが知っている有名な漫画の主人公があります。

そうです。

~~~見た目は子供、頭脳は大人・・・その名は名探偵コナン!~~~なのです。

名探偵コナンは、高校生探偵・工藤新一がある犯罪集団につかまり、薬で小学生の姿に変えられてしまいます。

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小学生姿で家にいたある時、友人でもあり、恋人でもある蘭(らん)に名前を聞かれた際に、とっさに後ろにあった本箱の背表紙から名前を思いつき答えます。(自分の正体がばれると再び悪の組織に狙われ、周りに迷惑が掛かる為)

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その本の背表紙・・・アーサー・コナン・ドイル(シャーロック・ホームズの作者)と、江戸川乱歩(推理小説家)から、江戸川コナンと答えるのです。

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こうして現代の人気主人公の名前が生まれました。

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江戸川乱歩は少年少女も楽しめる怪人二十面相や明智小五郎、小林少年などが有名ですが、実は知る人ぞ知る、本格的ミステリー・推理小説を日本に紹介した人でもありました。

当時の日本は推理小説の後進国でした。

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名探偵コナンの登場人物・アガサ博士の名にもあるアガサ・クリスティ。

このミステリーの女王についても、江戸川乱歩はアガサ・クリスティ作(アクロイド殺人事件)の有名なトリックについて言及しています。

探偵小説雑誌(宝石)の中でフェアか?アンフェアか?を著名な文芸評論家・小林秀雄氏との対談で取り上げていました。

(因みに小林氏はアンフェア派、江戸川乱歩氏はフェア派でした。)

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そういえば、ランのお父さんの(毛利)小五郎という名前も明智小五郎(江戸川乱歩の作った探偵)とモーリス・ルブラン(怪盗アルセーヌ・ルパンの作者)からネーミングされていますし、彼の探偵事務所の下にある喫茶ポアロはアガサ・クリスティから生まれた有名な探偵の名前です。

ランの名前もモーリス・ルブラン→モーリ(ス・ルブ)ランという訳ですね、きっと。

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②人気漫画の名探偵コナン=江戸川コナンのネーミングは江戸川乱歩などに由来していると書いたのですが、実はこの江戸川乱歩もある著名なる推理小説作家からのネーミングです。

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●エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)・・・アメリカ合衆国の小説家・詩人・評論家

(1809年1月19日~1849年10月7日)

初の推理小説と言われる「モルグ街の殺人」、暗号小説の草分け「黄金虫」、ゴシック風恐怖小説「アッシャー家の崩壊」、「黒猫」他・・・。

江戸川乱歩は、このエドガー・アラン・ポーを漢字仕立てに書き換え、ペンネームとしました。

彼の幻想的な作風にも影響を受けたようでした。

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●●●江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)●●●

・・・本名:平井太郎(1894年10月21日・三重県名賀郡名張町(現名張市)生まれ、1965年7月28日没)

大正から昭和初期にかけて活躍した推理小説作家、評論家。

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*代表作・一寸法師(朝日新聞連載)、蜘蛛男、黒蜥蜴、心理試験、人間椅子、パノラマ島奇談、芋虫(当時の検閲による発禁本)、幻影城など。

*少年物に出てくる探偵明智小五郎と小林少年と少年探偵団(怪人二十面相)、他の子供向き科学読み物など。

*「緑衣の鬼」イーデン・フィルポッツ作(赤毛のレドメイン家)など翻訳も多数。

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海外の作品に精通し、自身の創作作品や探偵小説誌(宝石)の編集・経営、日本探偵作家クラブの創立と財団法人化などにより、日本の推理・ミステリー界に大きな功績を残した。

内外から尊敬を込め、(大乱歩)と呼ばれた。

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彼は現名張市で生まれた後、父の転勤に伴い、亀山市、名古屋市と各地を転々とします。

(引っ越しは生涯にわたり、46回にも及んだとの事。)

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少年時代はひたすら自宅にこもっていたとも言われています。(本の虫・・・今でいうオタクだったようです。)

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早稲田大学政治経済学部卒業後、貿易会社社員や古本屋に志那そば屋、また本当に探偵として働いたこともあるようです。

幾多の仕事を経たのち、「二銭銅貨」でデビューしています。

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金融恐慌などの時代背景に伴い、彼の趣向でもある退廃的気風(エロ・グロ・ナンセンス)が大衆には受け入れられていました。

(後にその趣味が推理小説としてのプロットの破たんや低俗化を招いてしまったとの反省もあったようです。)

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しかしながら、日本が戦争体制を強化していくに従い、芸術への検閲が強まっていました。

1937年(昭和12年ごろ)より、検閲はより強くなり、探偵小説は内務省図書検閲室により検閲にかけられ、表現の自由は制限されました。

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一説によりますと、江戸川乱歩は内務省のブラックリストに載っていたそうです。

(戦争美化の当時としては不名誉なことでも、戦争不可の現在においては、むしろ創作や作家としては勲章なのかも知れません。)

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1939年(昭和14年)以降の検閲は激化し、ついに「芋虫」は発禁となってしまいます。

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彼の作風もですが、(戦争という全体主義)にそぐわない気質だったのだろうと想像かたくないです。

当時の検閲では、江戸川乱歩独特の異端さもさることながら・・・その根底にある戦争がもたらした残酷な人間の姿の描写(反戦の匂い)が駄目だったのだろうなぁと思います。

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江戸川乱歩が描いたのは、戦争=正義や美化ではなく、戦争=心身ともに残酷な人間の姿だったのが、発禁本となった「芋虫」の大きな理由なのだろうと私自身は推測しています。

今でもかなりの衝撃作だと思います。

江戸川乱歩夫人はこの作品を読んだ際、エログロの人間のエゴや醜さを描き出した奇譚に(いやらしい)と吐き捨てたと言われています。

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奇才かつ鬼才な作家でした。

直視しがたい救いようのない人間の心身共の残酷な姿・・・それを引き出した背景・・・無残な戦争が間接的に描かれています。

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太平洋戦争に突入すると、探偵小説は子供向けであっても執筆不可能となり、彼は小松竜之介とペンネームを代え、子供向け科学読み物「知恵の一太郎」などを書くようになったようです。

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戦後は探偵文壇も復興され、江戸川乱歩は創作以外にも活動を広げて、評論や講演、探偵作家クラブ(後の日本推理作家協会になる)の結成などに尽力をつくしました。

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(名張市駅前の江戸川乱歩の銅像)

駅前の改札を行く人々や学生たちをいつも見守っています。

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(江戸川乱歩生誕の跡地)

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(江戸川乱歩の本)(名張市立図書館の江戸川乱歩コーナー)

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次回は、江戸川乱歩②等で、乱歩を特集している地元名張図書館と、乱歩が残した言葉、また地元出身Y・Iさんが教えてくださった乱歩ゆかりの料理屋(清風亭)に行ってみたいと思います。

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また次号にて。

筆者

三重特派員

な*る

三重県在中27年から見た三重の良さをお伝え出来たら幸いです。

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