いつでも席を譲る準備ができている文化
香港政府は小さな政府、レッセフェール(自由放任主義)なので、あまり市民生活や経済活動に介入しません。自由です。その代わり、何か起こっても私たちをあまり守ってくれません。それは福祉においてもそうです。香港の年金制度が始まったのは10数年前、最低法定賃金が施工されたのも数年前のことです。そんな香港人ですから、生きていく姿はとてもたくましいです。しかし、家族など人情にも厚い面も持っています。例えば、次のエピソードは観光客の方でも目撃する可能性と思います。
それは公共交通機関での座席の譲り合いでです。座席に座っている人が、子供、お年寄り、妊婦の方をみると、積極的に席を譲るのです。日本でも席の譲り合いがありますが、譲る人には他人の視線も気になるのでどこか勇気がいります。ところが、香港は幼いころからそれを見ていますから自然に出来るといったほうがいいでしょう。この光景を見ると、やはり気持ちがいいものです。
おもしろいのは、車両内にお客が少なく乗客全員が座れる状況とします。日本人ですとあえて老人向けの座席には座りませんが、香港はお構いなし。空いている座席に座ってスマートフォンを操作したりしています。人がいないのだから迷惑かけてないし座ってもいいでしょ?って感じです。ところが次の駅でお年寄りが乗ってきたら席をサッと譲るのです。いつ譲ってもいいという心構えができている証拠だと思います。そして、今、譲ることがあまりにも普通なので、その光景をみてもそれが特別なことではないように思えるようになりました。この善意に関してのあったかエピソードは、温かみを感じなくなるレベルまで達するのがいいようです。
11月お題"あったかエピソード"
筆者
香港特派員
武田信晃
新聞社や香港現地邦人紙の記者/編集者を経て、フリーランス・ライターとして活動中。スポーツ、グルメ、エンタメまで幅広くカバーしている。
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