ラフスケッチ Hanoi #11. 月夜の花市場にて
「夜の花市場へ行ったことがある?」
と、突然聞かれました。
私が花好きだと知ると、花に関する様々な情報を一生懸命伝えてくれるベトナムの友人たちには、日々感謝の気持ちでいっぱいです。さっそく、滞在先のコンシェルジュにその話を確認したところ、
「夜の花市というより、花の入荷が夜から始まって、朝まで続くというものです。なので、季節を問わず毎日そのような状態ですよ。特にテト(正月)などの特別な行事前や、新月、満月の前の晩は、花の入荷が増えてよりにぎやかな風景が見られます。ぜひ、見に行くといいですよ。花好きなら、おすすめします」
そんな回答をいただきました。
半信半疑な気持ちで夜8時にクアン・アン花市場に出かけてみると、その話は本当でした。まだ静かな花市場に灯が点り、お店の人たちが花の手入れをして待っていました。
淡いオレンジ色の白熱灯がぼんやりと灯る花のストール、その佇まいはなんとも温かで優しい。ベトナムには、ハノイには、どうしてこんなに素朴で温かな風景が、手に届くところにあるのだろうと切なくなります。日本にもきっとあるのでしょう、なのに私は、その姿を探せなくなってしまったようです。自分の身近な場所で、美しいと思える風景が遠い所に行ってしまったのは、自分の心ひとつなのだろうと考えさせられました。
やがて徐々に花が集まり始めました。
束になって運ばれるユリを見て、秋にベトナム北部の山岳地サパを旅した際、棚田のトレッキング時にユリ農家に出会ったことを思い出しました。若い女性たちがユリの花を摘み取り、きれいに並べ、ハノイへ出荷するのだと言っていました。
この花もサパから来たのだろうかと考えながら、色とりどりに並べられる美しい花々を眺めました。
しかし、ここは仕事の場。時間が経つにつれオートバイやトラックの数が増えて行きます。忙しそうに花を降ろす様子は、邪魔にならない様に見せていただかなければいけません。
電灯の下で美しく咲く小菊、
バラ
そして、ユリ。
花を愛し、花と共に暮らすハノイの人々の元に届けられる花が、各地から一斉に集まります。
中でも、新月と満月の前の晩の市場は、より多くの花が集まりいつも以上に賑わうとのこと。月の満ち欠けを大切にし、お寺に参拝して過ごす、ベトナムの人々の暮らしが息づく市場です。
ベトナムの人に「花が好き」と伝えると気軽に花を届けてくれる、花の美しい場所へ連れて行ってくれる、花のある場所を教えてくれる。そして、花を語る姿はいつも幸せそうです。
いかなる時代でも花を欠かさなかった人々に、心からの敬意と感謝。
☆Information☆
夜の花市
Place:
クアン・アン花市場 Chợ hoa Quảng An ※地図に表示
Open:
一年を通して毎晩開かれている
夜9時~早朝4時ぐらいまで入荷の様子を見ることができる
花を購入できるのは夜9時前までなので注意を
Photos & writing by Midori Nakagawa
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