ラフスケッチ Hanoi # 10 冬のハノイはグレイの空と色鮮やかなオレンジ
冬のハノイが好きです。カーテンを開けても薄暗くグレイの空。乾季で粉塵が舞い、埃っぽさが極まっているというのに、妙に柔らかな空と、地上の境界線がない霞がかかった町の色。それは霞のせいではなく、公害のせいだろうと思いながらも、ふわりと温かい不思議な街の色で、その色の中に溶けてしまうのではないかと錯覚しながら埋没して歩くのが好きです。
そんなゆるい冬の街の中で色鮮やかなのはオレンジ。果物を売る行商の自転車を追いかけて行くと、そこには常に"旬"が輝いています。1月、今は大小様々な柑橘類を大きなざるに並べ、ゆっくりと自転車を押す姿が街のあちらこちらに見られます。
明るい色は眼にもココロにもビタミン。
しっかりチャージしなくては。
オレンジ、グリーン、イエロー、大きさも様々。好きなものを選んで秤にかけて購入します。
撮影をお願いするとポーズもバッチリ。「ちょっと見せて」と写真チェックも怠らず、この写真なら掲載okのお許しをいただきました。とても愉快な奥さんです。
しかし、ローカルの知人がいくらで購入したか心配して「1kgで40000ドン（約200円）だった」と答えると、うれしそうに「いいんじゃない？！」とほめてくれました。
値切り下手、交渉下手で、ついにそれが面倒になって無気力になり、あきらめるようになったら平均価格で買えるようになったという不思議。相手には「肩の力が抜けた外国人」に見えるのかもしれません。そうではなく、本当に力が抜けてしまっただけなのですが。
最近は最初から「40000ドンでどれくらい買える？」と、最初に買いたい金額を渡してしまいます。その額なら量が大かろうが少なかろうが、もうあなたにまかせます、と。そうして買ってきたものを部屋に盛ってるのを見た知人が上出来だとほめてくれるので、もうそれでいいことにしています。
家に帰り埃まみれだったミカンをさっそく洗いました。
洗いましたが、思ったよりきれいにはなりませんでした。
日本のみかんってどうしてあんなに皮まで柔らかくて、見た目もつややかできれいなんだろう。
見た目が似ていても、トカゲのレザーのように乾いて固い皮を持つ「ベトナムみかん」をしばらく眺めます。もしや、中はものすごく酸っぱいんじゃないかと想像して、なかなか手に取らずに置いていたら、「甘いよ！すごく甘いよ!」と、知人がしつこく何度も言うので信じて食べることにしました。
甘いです。本当に甘いです。酸味がまったくない甘さで、淡泊なあっさり味。
旅の気軽なビタミン補給におすすめします。
※ここ数日、日中は春のように暖かい日が続いています。ハノイは重ね着で寒暖差に対応できる服装でお出かけください。
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Photos & writing © Midori Nakagawa
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