大学入試のないイギリスの大学への入り方

公開日 : 2010年09月27日
最終更新 :

前回は、日本の高校に相当するシックススフォームについてお届けしました。今回は、そのシックススフォームからどのようにして、大学入試のないイギリスの大学に入学するのかについてのお話です。

IMG_0033x.JPG

イギリスには大学入試がない代わりに、教科別の資格試験があるのです。シックススフォームを始める前年にGCSE(General Certificate of Secondary Education)、シックススフォームの1年めにAS(Advanced Subsidiary level)、2年めにAレベル(Advanced Level General Certificate of Education)と呼ばれる試験が行われます。これらの教科別の資格試験の成績は、生涯履歴書に記載されると同時に、イギリスの各大学が入学者を選抜する試験としての役割も担っています。

GCSE、AS、Aレベルの資格試験のうち、大学合格に最も大きくかかわっているのは、シックススフォームの最後に受験するAレベルの試験。前回のシックススフォームの回でもお伝えしたように、2年間のシックススフォームに進級すると、ほとんどの生徒たちは4つの選択科目のみを履修します。そして、シックススフォームの1年めにその履修科目のAS試験を受けます。このAS試験の成績は、翌年受けるAレベル試験の50%の成績となります。

シックススフォームの2年めになると、履修科目は3つに絞られるのが一般的です。というのは、大学の多くは入学資格として3科目のAレベルの試験成績で入学の合否を決定するからです (ただし、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学などの超一流校を狙うならば、5科目のAレベルの好成績が必要であると言われています。また、Aレベルのほかに、面接など大学独自の試験も行われるとのこと) 。

P1130298x.jpg

Aレベルの成績は、受験科目ごとにABCDEといったアルファベットで表されます(例えば、数学はA、英語はB、物理はCといった具合)。Aが最高の評価で、Cまでが合格。ところが、年々、Aの評価を取る生徒が増え、去年(2009年)は、Aレベルを受けた生徒の26%を上回るまでになりました。そこで、その対処策として、今年からAの上にA( Aスター)という評価が設けられることになりました。初年度の今年は、Aレベルの受験者12人に1人がAを取ったとのことです。

大学のコースによって要求されるAレベルの成績は異なりますが、例えば、難関大学の人気の高いコースの場合だと、3科目ともAの「AAA」の成績が要求されます(今年以降は、A*もお目見えするはず)。難易度が下がるにしたがって、「ABC」、「BBB」以上などというように必要とされる評価も下がっていきます。ただ、理数系のコースだと数学、建築のコースだと美術を含んでいなければならないなど、コースに合った必須科目のAレベル取得を条件としている場合が多々あります。

また、大学への受け入れに、Aレベルの成績を点数に換算し、その合計の最低点数を設定している大学もあります。AレベルのA*が140点、Aが120点と20点ずつの差をつけて、評価Eの40点までポイントに換算されます。そして、例えば、合計点が280点あれば、受け入れるといった具合です。このポイント制を採用している大学も、コースに合った必須科目を設定し、その必須科目の成績は80点以上などと条件をつけている場合が多くなっています。

P1150660x.jpg

ところで、イギリスの大学の入学願書の受付は、入学のちょうど1年前の9月から始まります。ですから、大学の入学志願者はシックススフォームの1年めのASの試験結果が出たところで翌年のAレベルで取れそうな成績を予想し、合格できそうな大学のコースに願書を出します。医科、歯科、獣医科に出願する場合は4つのコースに、その他のコースに出願する場合は5つのコースに出願できます。ただし、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学は、それぞれの大学につき1つのコースにしか出願できないとのことです。

イギリスの大学への入学願書は個別の大学へは出さず、ユーカス(UCAS 「Universities & Colleges Admissions Service」の略)と呼ばれる機関に提出します。大学への合否の結果もユーカスを通じて送られてきます。合格には、翌年のAレベルの成績にかかわりなく無条件での合格と、Aレベルの成績が予想される評価に達している場合のみ合格という条件つき合格とがあります。条件つきの場合、実際の合否は、翌年のAレベルの試験結果にかかってくることになります。

Aレベルの最終試験はシックススフォームの2年めの終わり5月から6月にかけて行われ、試験結果は8月下旬に発表になります。出願している大学から条件つきの合格通知を受け取っている生徒たちにとっては、実質の合格発表に当たります。毎年、このAレベル試験の発表日には、Aレベルの結果を手にする生徒たちのもようがニュースで大きく取り上げられます。

テレビ画面に映し出されるのは好成績を収めた生徒たちですが、条件とされていたAレベルの成績が収められず、出願したコースすべてに不合格となってしまった生徒たちにも救済の道は残されています。大学の中には、二次募集枠を設けている大学があるのです。もし自分の志望するコースにそのような二次募集枠がなかった場合、あるいは、出願時にすでにそのコースに必要なAレベルの成績を収められないことがわかっていた場合などは、各大学ごとに開講されているファウンデーションコース(foundation course)と呼ばれる1年間の大学準備コースを受講します。終了時に、志望コースに要求される科目について一定の成績を収めれば大学への入学が許可されます。

ファウンデーションコースは、大学への社会人入学を目指す人々や海外の高校を卒業してイギリスの大学を目指す留学生向けにも開講されています。留学生の場合は、ファウンデーションコースのほかに、アイエルツ(IELTS 「International English Language Testing System」の略)などの英語資格試験で一定の成績を収めていることも大学入学の条件とされています。

最後に、イギリスの大学の学費について。入学金はなく、授業料のみです。スコットランドを除くイギリスの大学の年間授業料は、現在、3,290ポンド(1ポンドは約130円)。また、低所得家庭の学生には政府から家庭の所得に応じた援助が下ります。履修年数は日本の大学より1年短く3年間なので、大学を通しての授業料は1万ポンド(約130万円)ほどになります(ただし、留学生の授業料は別料金) 。

スコットランドの大学に関しては、地元スコットランドの学生の授業料は無料。ただし、イングランドやその他の地方の大学の履修年数が3年間なのに対し、スコットランドの大学は4年間。前回もご紹介したようにスコットランドでは独自の教育制度が施行されているためです。したがって、大学入学資格試験についても、イングランドやその他の地方のAレベルではなく、独自の試験が行われています。

イギリスの大学への入学や英語資格試験アイエルツの詳細については、以下にご紹介するユーカス(UCAS)、及びブリテイッシュ・カウンシルのサイトをご参照ください。

*イギリスの地域別の目次を作ってみました。イギリス国内の特定の地域の記事を見つけたいときに、【イギリス地域別ブログ目次】をご利用ください。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。