自動改札もICカードもないけれど
他県に住む友人が福井にJRでやってくると、必ず言われる言葉がある。
「福井って自動改札じゃないンだ・・・・」
そう、JRの福井駅には今なお自動改札機がない。改札口には駅員がいて、きっぷの確認を行っている。2017年6月現在、JR西日本管内の県庁所在地で自動改札機がないのは福井駅、山口駅、鳥取駅だけ、とのこと。
県という単位でみれば山口県にも鳥取県にも自動改札機は存在するので、県内どこにもない、というのは珍しいのかもしれない。
福井県内には福井鉄道とえちぜん鉄道という2つの私鉄が走っているが、ともに自動改札機もなければICカードも導入されていない。えちぜん鉄道においては自動券売機すらない。窓口で行き先を告げてきっぷを買うか、車内で清算する。
ICカード全盛のこのご時世、今や都市部や各地方においても近距離の移動に「きっぷを買う」なんてこともなくなりつつあるのかもしれないが、福井ではJRにしろ、私鉄にしろ、「きっぷを買う」、駅員や乗務員に「きっぷを見せる」そんなことも日常の光景だ。
今回は福井を走る、僕が愛してやまない2つの私鉄を使って、福井市中心部をくるりと一周してみようと思う。
えちぜん鉄道の福井駅はJR福井駅の東側にある、高架の立派な駅だ。しかしながらさらにその隣に新しく高架橋の工事を行っている。それが数年後に開通する北陸新幹線かといえばそうではなく、今、えちぜん鉄道の駅がある場所が北陸新幹線の駅となる。
隣に建設中の高架橋が完成すればえちぜん鉄道はそちらに移り、ようやく新幹線の工事が始まる、いわば「間借り」しているような形となっている。
えちぜん鉄道の窓口で田原町駅までのきっぷを購入してホームへ上がり、三国港行きの電車に乗車。えちぜん鉄道には日中を中心にアテンダントさんが乗務している場合があり、乗っていればアテンダントさんからきっぷを購入することもできる。
電車は高架橋を進み、新福井。この駅には全国的にも珍しいと思われる高架線上の構内踏み切りがある。
数年後にはまさにこの場所を、新幹線が走行することに。
この先で地上に下りて福井口。
ここで恐竜博物館がある勝山方面に向かう路線と分岐する。福井口を出発すると東の方角へ進路を変えて住宅街の中を進み、まつもと町屋、西別院を経て福井鉄道との乗換駅である田原町へと達する。
田原町周辺はいわゆる「文教地区」で朝夕を中心に多くの学生で賑わう。ここで福井鉄道に乗り換えて福井駅を目指す。こちらで福井鉄道のきっぷを購入。
福井鉄道の魅力は一言で表せば「多種多様」といったところか。
こちらは仁愛女子高校駅とドイツ製の車両「レトラム」。奥に見える重厚な建物は福井地方裁判所。
市役所前駅に停車中のこの車両は共に引退。
商店街の中をゆっくり進んで福井駅へと到着。運転席後ろの運賃箱にきっぷを入れて下車。
無人駅から乗車の際には整理券をとり、下車駅が有人駅なら駅で、下車駅も無人駅なら運賃表を確認し、お釣りが必要とあれば両替し、下車時に所定の運賃を支払う。子供を連れていれば、半額にして切り上げて、そんな計算も必要となる。
自動改札機もICカードもない、
不便、遅れている、その一言ですませばそうなのかもしれない。
でも、案外そうでもない、とも思う。
福井の場合、改札口に駅員がいるからこそ、駅員の口から「おはようございます」とか「ありがとうございます」とか、券面を確認した駅員さんが「◯◯行きの電車は1番線でお待ち下さい」そんな案内をしたりする声がJRにおいても私鉄においても日常的に耳に入ってくる。
福井鉄道には急行列車もあるもので、有人駅においては「次の電車は◯◯を通過するので、もうしばらく待合室でお待ち下さいね」そんな案内をしている光景もよく見かける。
こういったことは改札口で駅員がきっぷを確認しているからこそできる案内だ。ちゃんと人と人とのやりとりが存在している。自動改札機やICカードだとこうはいかない。
アナログといえばアナログなのかもしれないけれど、昭和世代の方なら、「一昔まえまではどこもこんな感じだったなア」と懐かしい気持ちになれるかもしれない。
JRに関しては2018年夏をめどに自動改札機が導入され、ICカードの利用も可になる、そんなニュースが最近報じられた。
しかしながら福井の2つの私鉄に関しては、そんな世間一般の流れとは無縁のまま、今後も福井の街を走っていそうな気がする。
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