南インドの人形劇団「Dhaatuダートゥ」
インド各州には、その地域ならではのパペットの歴史があるが、それは時代と共に薄れていき現存しているパペットはわずかだという。
その歴史を後世に伝えようとしているのが南インドの人形劇団「Dhaatuダートゥ」を主催するのはアヌパナさん。
彼女は、インド各地を訪れながら家の納屋などに眠っているパペットを探し始めその歴史を紐解いた。人形が見つかったとしてもそのほとんどは壊れていたり、パペットの一部分が残っているだけだったので、わずかな情報を元に彼女はパペットの復元に力を注いだ。
以下は、復元した様々なパペットたちである。
①String puppet 糸あやつり人形
②Rod puppet 人形を頭で支える棒遣い人形
③Grove puppet 片手遣い人形
④finger puppet 指人形
⑤Shadow 影絵人形
さらに、彼女の調査によってパペットの分布図も完成した。
カルナタカ州のどの地域にパペットや影絵人形があったのかが一目で分かる。
アヌパマさんは、3,000~4,000年前に書かれた叙事詩『バガヴァッド』の中で、芸人が木製のパペットを使うシーンが出てくることからその頃にはパペットというものが既にあったと推測している。
「実は、インドからインドネシアへ伝わったパペット」
「Dhaatu」のコレクションの中で、インドネシアの影絵芝居ワヤン・クリ(Wayang Kulit)に使われる影絵人形を発見した。
実は、ワヤン・クリは、インドからインドの東海岸に沿って陸路でインドネシアに伝わったという。
確かに「ワヤン・クリ」は、インドネシアのヒンズー寺院でのお祭りに行われ、インドの古代叙情詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』などが主な演目である。
インドネシアでは10世紀には、既に演じられていたというからその説明はとても納得がいく。因みに「ワヤン・クリ」の操り人形は牛の皮で作られているのに対し、インドではヤギの皮を使っている。この辺りも宗教が絡んでいて興味深いところ。因みに『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』はインドの二大叙事詩と称され、ヒンドゥー教における最も重要な聖典の一つとされている。『マハーバーラタ』は、紀元前4世紀ごろから紀元後4世紀にかけて現在の形が成立したとみられ、全18巻約10万詩節からなる大叙事詩からなる世界最大級の叙事詩。バラタ族の国の王族の確執とそれに伴う争いを描いている。一方『ラーマーヤナ』は、第2巻から第6巻が紀元前5世紀から紀元前4世紀にかけて成立し、その後紀元後2世紀ごろに第1巻および第7巻が書き足されたとみられている。全7巻約2万4千詩節からなる大叙事詩。コーサラ国の王子でヴィシュヌ神の化身であるラーマが、羅刹の王ラーヴァナを倒し王となるに至る過程を中心とする物語。「こういった難しい叙事詩も、パペットを使って伝えれば子供たちは興味を抱いてくれる。叙事詩には、人生の教訓も描かれているので後世に伝えなければならない。」とアヌパマさんは語る。「以前はお祈りをする時、母親が毎回この叙事詩を少しずつ読み聞かせていた。しかし、働く母親も増えそういった時間もない時代になってしまった。」そんな時代に応えるかのようにDhaatuは設立された。アヌパマさんは、幼い頃に父親を亡くし祖父母に養われ大学を卒業した。幸せな結婚もし子供も授かった。そんな感謝の気持ちをDhaatuに捧げているという。
彼女の活動は政府からも認められ、スタジオ近くのバス停には「Dhaatu Puppet Bus Stop」という名が付けられた。さらにガラスケースの中にはパペットが飾られている。
Dhaatuは、要望があればいつでもショーを見せてくれる。また、夏休みや週末だけでなく一年を通じてパペットを動かしたり、叙事詩を勉強したり、パペットを製作するワークショップも行っている。
夏休みなどは、地元の子供たちがここへ学びにくる姿も見られる。
「Dhaatuダートゥ」
3944/F, 17th 'D' Cross, 4th Main,2nd Stage, Banashankari,Bangalore-560070
E-mail: dhaatu@gmail.com
電話: +91 80 65683396
http://www.dhaatu.org/
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