新アクロポリス博物館に行ってきました

公開日 : 2009年06月25日
最終更新 :

 昨日24日、ついに新アクロポリス博物館に行ってきました。世界的建築家ベルナール・チュミ氏らが長い間、構想を練って設計した新アクロポリス博物館。総床面積2万5千平方メートル。アクロポリスの丘の旧館に比べ約10倍の展示スペースとなりました。総工費は1億3千万ユーロ(約175億円)。ヨーロッパでも有数のモダンなデザイン、設備を兼ね備えた博物館です。

 公式サイトからのeチケットは数日先まで売り切れになっていますが、24日からは直接、訪ねても入場できます。私はネットでeチケットを購入した際、時間も決められていたので、夕方に行きましたが、思ったほど混雑はしていなくて、ゆっくり鑑賞することができました。展示作品はどれも本当に素晴らしかったですし、それを最大限に活かした博物館の見事な設計にも感心しました。

 写真は「カリアティデス」と呼ばれる有名なエレクティオンの少女像(415BC)。全部で6体ですが、ここに5体、大英博物館に1体あります。

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 入り口付近やグランドフロアは、博物館の下の遺跡を活かした造りで、床は強化アクリルガラス。写真だとわかりにくいですが、この遺跡はけっこう深いです。歩く際にちょっと怖いような気もしますが、足元に遺跡が広がるユニークな造りになっています。

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 あまりに多くの展示物があるので、とても紹介しきれませんが、まずチケット自動改札を通るとすぐ「ニケ像(1st-3stcent.AD)」(写真左下)がお出迎え。真正面の奥には「雄牛を引き裂く2頭のライオン像」、「3体の変幻自在な悪魔の像(570BC)」(写真右下)があります。写真はフラッシュなしなら撮影OKです。(追記:6月24日に行った際はフラッシュなしなら全館撮影OKでしたが、7月初旬に行った人によると3FのパルテノンギャラリーのみフラッシュなしでOK。7月22日に行った人で3Fでも監視員に怒られたという人もいます。また今後変わるかもしれませんが、けっこう厳しくなっているようですので気をつけてください) 

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 そのすぐそばにある、巨大な「雌ライオンの像」(写真左下)も迫力満点。スロープ式に1Fへ登っていく造りで、1Fにはニケの神殿、エレクティオン、紀元前5世紀から5世紀ぐらいの作品、アルカイック・ギャラリーなどがあります。「巨人のぺディメントの彫像群(525-500BC)」の大きなアテナ像(写真右下)、たくさんの少女、少年像、犬や馬などの像があります。どれも表情や肢体の筋肉、衣装のひだなどがリアリティに溢れ、写真もない時代によくこんな精巧に作成できたなあとしみじみ感じ入ってしまいます。

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 どの少女像も美しいのですが、私が一番印象に残ったのは「スフィンクスの瞳を持つ少女像(500BC)」(写真左下)。他にも「子牛を担ぐ青年像(570BC)」、「思索にふけるアテナ(460BC)」のレリーフなど素晴らしいものがたくさんあります。  

 このフロアは現代的なガラスギャラリーと古代からの大理石の展示物の対比が見事。外からの自然光がたっぷりと射し込む構造で、訪れる時間帯によって照らし出されるマーブルの雰囲気が違って見えるので、何度でも訪れる価値があるそうです。彫像たちは古代から時を経てきたとは思えないほど、リアルで後ろ姿も美しいです。それらが絶妙な間をとって展示されている空間は、なんとも芸術的な雰囲気をたたえています(写真右下)。

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 そしてグランドフロアからも見上げることのできる位置に、エレクティオンの南側で柱として機能していた少女像群(ページトップの写真)があります。悠久の美をたたえた少女像たちはとても優雅で、長い間見ていても飽きません。頭にかごを持ち、重心をかけている足がそれぞれ違っているのですが、それも建築上のバランスを考慮に入れてつくられました。後姿のヘアスタイルの緻密さも見事(写真左下)ですが、これも設計上、首の細い女性像を安定させるために、豊かな髪を表現しつつ、補強の意味がありました。

 更に進むと「アレクサンドロス大王の彫像(336BC)」の頭部などがあります。かなり若かりし頃のアレクサンダー大王ですね。

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 2Fはレストラン、カフェ、お土産ショップ、マルチメディアセンターなど。大きくとったテラスは、アクロポリスやリカヴィトスの丘を眺めながらのカフェタイムに絶好のスポット(写真左下)。物価の高いアテネにしては、カプチーノ2.5ユーロとお値打ち。観光客の人々にも、ちょっとお腹が空いた時に休憩を兼ねて軽食をとるのにもいい場所です。サンドイッチも3ユーロと安く、小さめですが、日本人にはちょうどいいくらいの量だと思います。どのトイレもきれいで、日本のように自動洗浄だったので驚いてしまいました^^;

 この日はギリシャの雑誌やテレビの取材がたくさん来ていて、サマラス文化相(写真右下)自ら見所を語っていました。カフェやショップはグランドフロアにもあります。お土産ショップには、文具やTシャツ、マグカップなど定番ながら、シックなデザインのものもたくさんありました。

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 そしていよいよ3Fのパルテノンギャラリーへ。この博物館はアクロポリスの南東約300mに建設されていますが、パルテノンと同じ比の長方形(正確にはかなり微妙な台形)で、ほぼ平行に移動した場所に位置するように建てられました(写真左下)。よってこのフロアからはパルテノンを眺めながら、それぞれの辺の長さや比が同じように再現された原寸大展示で、現存しているマーブルを見学できます。まずエスカレーターを上ったところにパルテノンのファザードの小さなレプリカがあります(写真右下)。ゼウスやアテナ、ポセイドンやアポロンなどの神々の彫刻群で、見事なものが複数ありました。アテナとポセイドンがアテネの支配権を巡って争った様子など様々なストーリーが描かれていたもので、これらが残っていたらどんなに素晴らしかったでしょうか…。

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 しかしパルテノン神殿の歴史はまさに破壊の歴史。まずローマ帝国の支配でキリスト教の国教公認によってファザード部分が壊され、大聖堂に改装されてしまいます。お次はトルコの侵略、今度はモスクにリノベーション。そして占領下、トルコがパルテノンを火薬庫にしていたため、ヴェネチア軍の砲撃を受けて大爆発…。現存していることが奇跡のようです。そしてイギリスのエルギンさんが欲しいものをごっそりもぎとって…。

 その様子はこのフロアの大画面でとてもわかりやすく放映されていますので、ご覧ください。それを観てからフロアを回ると、元々のレリーフと今ここに残っているマーブルがよくわかり、更に興味深く鑑賞できます。

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 窓の外には同じ向きでそびえるパルテノンが見えますので、「あの側面はこうなっていたのね…」などと想像をはせることができる設計になっているというわけです。エルギン・マーブルの部分はレプリカで真っ白だったり、空きの空間にして返還されたら埋め込めるように展示されています。ここでそれらを眺めると、理論ではなくて、ただただ破壊された芸術作品が痛ましく、誰もが早くひとつになったものを観たいと感じることができると思います。

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 できるだけ世界中の人々に観て欲しいという目的のため、2009年中は入場料がたった1ユーロ。来年になっても5ユーロを予定。これから観光シーズンのピークを迎えるにあたり、ぜひ多くの日本人の方々にも訪れてほしいスポットです。

★新アクロポリス博物館

アクセス   メトロ ライン2(レッドライン)「アクロポリ」駅前

開館時間    8時〜20時 最終入場は19時30分

休館日     月曜日、祝祭日

入場料    2009年6月24日(水)〜12月31日(木)まで入場料は1ユーロ!

公式ホームページへはこちらから(英語あり eチケット購入可)

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